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慶應義塾大学 高松奈々さん

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たかまつ・なな●1993年生まれ。曾祖父は元東大名誉教授で応用科学者の故・高松豊吉氏。私立有名女子中高を卒業後、2012年に慶應義塾大学へ進学。小学4年生のときに、アルピニスト・野口健氏主催の環境学校への参加をきっかけに社会問題に興味を持ち、世の中のあらゆる問題をもっとわかりやすく伝えることができないかと考えるように。読売新聞子ども記者、第14代高校生平和大使などを経て、お笑い芸人を志す。芸人「たかまつなな」として、13年よりサンミュージックに所属。同年R-1ぐらんぷり準決勝進出、「ワラチャン!U-20 お笑い日本一決定戦」優勝。新ジャンル「お笑いジャーナリスト」を目指すべく、ライブやテレビ番組などで活躍中。14年の飛躍が期待される、若手芸人のホープとして注目されている。

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多いときは一日に3つのステージをこなすことも。「人見知りな私ですが、ステージにあがってしまえばやりたいことをやるだけなので、ちっとも苦にならないんですわよ」。

社会問題を目の当たりに。そして出合った一冊の本

小さいころは、いつも2歳上の姉と比較されていました。「お姉ちゃんはピアノが上手で勉強もできる。一方の奈々は手がかかって仕方がない」と言われ続けているうちに、人見知りなうえに劣等感の固まりに。唯一、自信があったのがスポーツです。脚力には自信があったので、小学校4年生のときにサッカーチームに入りました。そして将来は本格的にサッカーの道に進もうと、寮生活をしてサッカーをする学校への進学を希望したんです。

 

ところが、両親が猛反対。さらに、週6で塾に通わされることに(涙)。もともと勉強はあまり得意ではなかったのですが、塾に通ううちに「この問題が解けると、お嬢様学校として有名なあの私立中学校に入れる」と言われ続け、気がついたら洗脳されてしまいました(笑)。ダメな私でも、勉強を頑張って問題が解ければ憧れの中学校に行けるかもしれないと思うようになったんです。それからは、「磯子(神奈川県)の二宮金次郎」と言われるくらい猛勉強の毎日。勉強しながら道を歩いていて、電柱にぶつかるなんてことはしょっちゅうでした。

 

晴れて志望中学に合格したものの、進学当初はつらかったですね。「小さいころからその塾で一番」みたいな子どもが集まる学校ですから、みんなものすごく頭がいい。私はラッキーで受かったという自覚があったので、ついていくには必死で勉強するしかなかった。毎日が期末テスト前の気持ちで、何かに追われるように勉強ばかりしていました。

 

そんな私ですが、小学校4年生のときに大きな人生の転機がありました。アルピニストとして活躍している野口健さんが主催する「環境学校」への参加です。富士山にこんなにきれいなところがあるんだと教えてもらった後に、青木ヶ原の樹海に連れて行ってもらいました。でもそこにはバスやトラック、大量の注射器などの医療器具が不法投棄されていたんです。信じられませんでした。そして野口さんが「大人はいろいろなしがらみがあってこの現実を知らないふりしている。だけど子どもであるみんなは純粋な気持ちでこの現実を伝えることができる」とおっしゃったんです。

 

それがきっかけで、社会の問題を人に伝えたいという強い思いを持つようになりました。何かやらなくちゃと壁新聞を作って学校に張ったりしたんですが、反応はイマイチ。だから、読売新聞の子ども記者の募集を見つけたときは、これで何かできるかもしれないと応募したんです。

 

子ども記者として多くの一流の方にインタビューする機会を得つつ、自分で企画書を書いて社会問題を伝える記事を書くこともできました。だけど、読んで感想をくれたのは友達の親ばかり。本当に伝えたい、社会問題に興味のない同世代の子どもたちには届かなかったんです。自分の言いたいことを知らない誰かにまで伝えるためには、何か別の方法があるんじゃないかと思い始めました。

 

そんなときに出合ったのが、哲学者の中沢新一さんと爆笑問題の太田光さんが書いた『憲法九条を世界遺産に』(集英社新書/税抜き680円)という一冊の本でした。読み終わったときに、「この太田光さんという人はなんて素晴らしい提案をする方なんだ」と感動したんです。実は私、テレビはNHKしか見たことがなくて、太田さんはもちろん、お笑いのこともほとんど知りませんでした。しかも、お笑いとは品のないものだと思っていたんです(笑)。だから太田さんがきっかけで、芸人さんだからできる発想、表現方法があることに気づかされ、素敵な職業だと思ったのです。

 

だからまずはやってみようと。友達を誘って、吉本興業と新宿区が主催する「ちびっ子漫才コンクール」に出たんです。そうしたら、なんと決勝まで進んでしまった。このときに「いけるんじゃないか」と勘違いしたのが、そもそものスタートになるわけですね。

 

それからは、いろいろなコンクールに応募したり、学校の行事などでもネタをやりました。スピーチコンテストに出たときは、審査結果が出るまでの“つなぎ”でネタをやるように言われたりもしました。いざ、ネタを始めると、それまで退屈で寝ていた人とかも目を覚まして、楽しそうに笑ってくれたんです。あのときは本当に快感でしたね。お笑いというものは人を引きつける力があるんだと実感することができました。太田さんの本で感じた「お笑いの可能性」をこの目で見ることができた。そしてそのときに、本格的に追求してもいい道だと思えたのです。

 

今、私がやっているフリップを使った「清く正しく品格のあるお漫談」は、実は慶應義塾大学のAO入試の面接のときに初めてやりました。そんなことを実際にやっていいものかどうかを迷っているときに、高校の先生から「慶應の教授にネタを見てもらえる機会なんてそうないんだぞ」と後押ししていただき(笑)、覚悟が決まりましたね。志望理由書にも「社会問題をわかりやすく伝えられるお笑い芸人になりたい」と書いていたし、「やりたいことをしっかりやって伝えてみよう、それでダメならしょうがない。そして、ネタが滑って地獄のような30分を過ごしたとしても、後で話せるいいネタができたと思うようにしよう」と腹をくくりました。

 

結果、面接の後には、「面白かった。君はもっと自分に自信を持っていい」と褒めていただきました。さらに、「得意なコミュニケーションツールを使うことを物おじする必要はない。もっと伸ばしていってください」と言われたんです。うれしかったですね。自分のやりたいことをやりたいと言っていいんだ。やりたいことをやっていいんだと。このときに迷いはなくなりました。

 

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「学生」と「芸人」。両方とも200パーセントの力でやりきりたい!

現在は、学生とお笑い芸人の二足のわらじですが、正直、大変です。私は何かをするときに手を抜いたり、効率よくうまくやったりすることが苦手なので、勉強するなら厳しい授業をとろうと。そしてお笑いも200パーセントの力で頑張ろうと。そういう気持ちで毎日を過ごしています。

 

厳しい授業をとっていることもあるので、意識の高い友達が多くいます。話していても、彼らの“例え話”すらわからないんです(笑)。「あー、それ、プラトンのあれだよね」「ソクラテス的なやつね」「ロバート・パットナムのようだね」…。何を言っているのかさっぱりついていけず、自分の力不足を痛感しています。

 

一番意識しているのが、中高時代の恩師に言われた「やりたいことは全部、全力でやりなさい」という教えです。「二足のわらじはよくない、どちらかをやめて専念すべきだ」なんて言われることも多いんです。たしかに、R-1ぐらんぷりの1回戦で負けたら「大学に行っているからだ」と言われますし、レポートの出来が悪ければ「お笑いをやっているからだ」と言われるでしょう。だからこそ、両方を全力で、貪欲にやってやろうと。

 

だから、私はまったく遊びません。買い物にも行きませんし、恋愛もしません。食事の時間ですら無駄だと思っています。でも、それでいいと思っています。それくらい頑張りたいことには必死でやりたいんですよ。

 

将来の野望は「ポスト・池上彰さん」です。「ネタをやる池上彰さん」になりたいですね。いつになるかはわかりませんが、追求したいと思います。私のブログのタイトル「お笑いジャーナリストへの道」というのも、この思いからつけたものなんです。

 

そのためには、もっともっと勉強しなくてはいけません。社会問題を面白く、わかりやすく伝えるためには、政治や経済はもちろん、科学などあらゆることを知っていなければできません。幸い、大学の教授や友人たちから、例えば「TPPのことをわかりやすくネタにして」と頼まれたりすることも増えました。また、私のネタの一つに、「桃太郎の話を法解釈する」というものがあるのですが、それを法学部の先生に監修していただくなんてこともできるようになってきています。

 

社会問題に興味のない人に、面白く、わかりやすく届けるためには、私自身が有名になって、影響力のあるところから発信することが、一つのやり方かなと思っています。だから、有名になるというのは一つの大きな目標です。そのために、「お嬢様言葉」といったネタもやって、たくさんの人に知ってもらえたらいいなと思っています。ただ、芸人の先輩からは「実現したいなら人の3倍頑張らないと無理だ」と言われています。実際、その通りでしょう。だから、遊ぶ時間があるなら、何かしていないと落ち着かないんですよ。

 

高松さんに10の質問

Q1.好きな異性のタイプは?

恋愛に興味がないので、さっぱりわかりません。とりあえず今、恋愛心理学を勉強中です。

Q2.趣味は?

サッカー、登山、落語、読書、社説の読み比べ、異業種交流会…やりたいことは何でも挑戦するので、趣味は多いですね。

Q3.影響を受けた本は?

司馬遼太郎さんの『21世紀に生きる君たちへ 対訳』(朝日新聞社/税抜き850円)。勇気づけられる本なので、迷ったときは読むようにしています。あとは太宰治さんの『トカトントン』(筑摩書房「太宰治全集(8)[ちくま文庫]」に収録/税抜き1100円)も好き。

Q4.好きな食べ物は?

フランス料理。

Q5.生まれ変わったら何になりたい?

何でしょうか…庶民?

Q6.100万円を自由に使えるとしたら?

物欲がまったくないので、特に浮かばないです…。最近の大きな買い物は、ネタ用のフリップ200枚を一括購入したことです。

Q7.住んでみたい国は?

スイスです。一度行って、なんて素敵なところだと思いました。

Q8.会ってみたい人は?

池上彰さん。一度、講演を聞きに行ったことはあるのですが、直接お会いしたことはないんです。あと、爆笑問題の太田光さん。一度お会いしてお話したいです。

Q9.宝物は?

ファンの方々など、人から頂いたお手紙はすべて大切にとってあります。読み返すこともあるんですよ。

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Q10.座右の銘は?

「自信は努力から」。その通りだと思います。

 

一日のスケジュール

on
5:00 起床。起きてすぐ、今日提出のレポートの作成に取りかかる。
8:00 レポートを終わらせ、自宅を出て大学(湘南藤沢キャンパス)へ向かう。
9:25 1限開始。この日は5限までびっしり授業。昼食はお腹がすいていたらおにぎりなどを買って授業の合い間に食べるが、食べないことの方が多い。
18:30 学校を出て、中野のライブハウスへ向かう。
20:00 ライブハウスに到着後、10分で準備をして本日最初のステージ。最近、テレビに出させてもらうことが増え、お客さんに顔を覚えてもらえるようになってきた。
20:30 近くにある別のライブハウスへ移動。本日2ステージ目をこなす。
21:30 急いで日暮里のライブハウスへ移動。本日の3ステージ目。
22:00 ステージ終了後、先輩に夕食に連れて行ってもらう。食事をごちそうになりながら、ネタのダメ出しやアドバイスを頂く。
1:00 帰宅。まだ起きている先輩を探し、電話でネタの相談をする。
2:00 翌日のライブで使うネタ用のフリップを作成。
3:00 翌日の学校の準備をし、就寝。

 

off

8:00 起床。起きてすぐ、翌日提出の1万字のレポートを書き始める。
18:30 レポートが無事に完成。すぐに身支度して、知り合いが出ている演劇を見に新宿へ向かう。
21:00 舞台が終了。楽屋に顔を出してひと言あいさつし、先輩とご飯。新しいネタの相談をする。
1:00 帰宅。机に向かって新しいネタを考える。
3:00 ぼちぼち就寝。万年寝不足だが、「寝る時間も惜しい」と思っているので、何も問題はない。

 

取材・文/志村江 撮影/刑部友康


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