志望業界:インフラ、不動産、メーカー 説明会参加:30社 先輩訪問:1人(損保) エントリーシート提出:25社 面接:15社 内定:1社 費用:約4万9500円(交通費3万円、靴3000円、ワイシャツ2000円、外食費3000円、証明写真4500円、書籍代4000円、筆記具・郵送代など雑費3000円。スーツはもともと所有していたものを使用。出先での食事はコンビニでおにぎりを買ったり、安価なファストフード店で済ませたりして節約。飲み物は水筒を持ち歩いたので外では買わなかった)
“普通のレール”じゃなくてもいいと気づいて、将来への視野が広がった
いい大学に入って、大きい会社に入る――幼いころから、それが目指すべきレールなんだと決め込んでいました。そんな価値観は、大学に入って崩れました。きっかけは、大学2年のときに始めた通信教育に携わるベンチャー企業でのアルバイトです。ここで働くまでは、卒業後は“ちゃんとした企業”に入ること以外の選択肢はないと思っていました。しかし、創業してから間もないベンチャー企業での業務を通して、大きい会社じゃなくてもやりがいのある素晴らしい仕事ができることを実感し、“普通のレール”とされている進路以外にも道があることに気づいたんです。この経験を通して大企業に固執しなくなり、将来に対する視野が大きく広がりました。
3年になって就活を始める時期に差しかかり、まず考えたのは「どんな会社に入りたいか」ということです。自分の思考を整理して、会社選びの軸は「いろいろな人やものにかかわれること・環境を整えるような仕事であること・“何をやるか”よりも“誰とやるか”を優先すること」の3つに定めました。フリーペーパー製作やイベントを運営するサークルでの経験から、自分はたくさんの人とかかわるのが好きで、周りの人たちが動きやすいよう環境を整えることにやりがいを感じるんだと知ったんです。「環境を整える」という点で、 僕はぼんやりとインフラ系の企業を志望するようになりました。
12月に入ってリクナビに登録し、本格的に就活をスタート。この『就職ジャーナル』もよく閲覧していました。さまざまな会社の内定者や社員の方のインタビューが掲載されているので、定期的に読んでいると自分の興味にかかわらず多くの業界について知ることができます。ここで興味を持った業界や企業はすぐにリクナビで検索して、エントリーを増やしていきました。
自己分析では、自分の過去を振り返りこれまでにやったことを挙げて、それぞれ「なぜそれをやったのか」を突き詰めて書き出しました。そうすると、やった動機や内容に共通性が見えてくるんです。僕の場合は「不便を改善する、効率化を図る」ことにフォーカスしていたことがわかり、「環境を整えるような仕事」という会社選びの軸に自信を持てるようになりました。自己分析については、リクナビ診断も活用。自分なりに過去を振り返って「自分はこういう人間なんだろう」と推測したことが診断によって裏づけられ、よりはっきりと自分像を捉えることができましたね。
1月からは説明会も増えて、とても忙しくなった印象があります。学内の合同企業説明会には1度参加しましたが、1社あたりの説明時間が短くて「それぞれの会社について深く踏みこんだ話を聞きたい」と思っていた自分にとっては、あまり参考になりませんでした。基本的には個別の会社説明会に参加して、実際に話を聞いた上で「面白そうだな」と思った会社だけ、エントリーシートを出すようにしていました。興味があっても説明会に行かなかった会社は「そこまで気にならない所なんだろう」と見切りをつけ、受ける企業をしぼり込んでいきました。
エントリーシートで一番気をつけたのは「字を丁寧に書くこと」です。あまり字がキレイではないと自覚を持っていたので、相手が読みやすいようにという意識を常に忘れず、心をこめて書きました。内容については「結論から書く・具体的な数字を盛りこんでやったことの規模が伝わりやすいようにする」など基本とされていることは押さえて、シンプルにまとめました。父親に何度かチェックしてもらったのですが、社会人の目線からあいまいな表現などを指摘してもらえたので、とても参考になりましたね。自分で書いたものを客観的にチェックするのはやはり難しいので、エントリーシートを第三者に見てもらうことは必要だと思います。
「私」ではなく、「僕」が自然体でいられる話し方で
4年の4月になって、立て続けに面接が入るようになりました。僕は話をするときに体を揺らすクセがあり、サークルの仲間から「落ち着きなく見える」と指摘されたことがあったので、面接中は注意していたんです。クセというのは、自分ではなかなか気づけない部分なので、面接に行く前に身近な人に聞いてみるといいかもしれません。社会人と話す際の基本的な礼儀やマナーについては、3年の12月ごろにもらっていた『就職活動スタートブック』を読んでひと通り押さえられていたので、慌てずに面接に臨むことができました。
面接では、一人称を「私」ではなく「僕」と言っていました。この点は、ほかの就活生と少し違う部分だったかなと感じます。自分の中で「私」というのがどうもしっくりこなくて、「僕」と言った方が自然に話せるからです。形式にこだわりすぎず、自分が最も自然体で発言できるコンディションを作ることが大切だと思います。また、毎朝その日の新聞は読むようにしていました。面接で「最近関心があることは?」と聞かれることが何度かあったんです。朝刊を読んでいれば、この質問にも難なく対応できます。
エントリーシートを出した所はすべて「本気で行きたい」と思っていたので、受けている会社の中で志望度の差はそれほどありませんでした。ただ、現在の内定先は面接を受け始めてからグンと志望度が上がった会社でした。学生への対応がものすごく丁寧で一回一回の面接が長く、こちらの話をよく聞いてくれました。連絡もなしに落とされるようなこともある中で、誠実な社風に心ひかれ「この人たちと一緒に働きたい」と、純粋に思うようになったんです。そんな会社から5月初旬に内々定をいだたくことができて、本当にうれしかったですね。最終的には“誰とやるか”という原点に立ち戻った就活だったなと感じています。
入社後は早く仕事を覚えて、いろいろなことを任されるようになりたいです。上からの指示を待つだけではなく、自分からやるべきことを見つけて仕事を切り開いていく意識は常に持つように。現時点で長期的な目標があるわけではないので、日々の仕事を責任を持ってこなしながら、それを見つけられればと思っています。これまでも、そしてこれからもずっと“何をやるか”よりも“誰とやるか”を大切にしていきたいです。
低学年のときに注力していたことは?
さまざまな人と会うことを心がけていました。人からの誘いは断らず、どんな場にも顔を出しました。そして、面白そうなことがあったら、必ず人を誘うように。「アイツは呼んだら来る」「アイツは面白いことが好き」と周りから思われることで、自然と面白いことが舞いこんでくるようになったんです。また、フットワークを限りなく軽くしたことで、いろいろな物事に対する価値観が変わりました。自分とは考え方の違う人も理解して許容できるようになり、人としての器が大きくなったかな…と思っています。
就活スケジュール
就職情報サイトに登録し、本格的に就活をスタート
リクナビなどの就職情報サイトに登録。少しでも気になる企業はすぐにエントリーしていった。
個社説明会に積極的に参加
一つひとつの説明会で、事前に用意しておいた質問をすることと話を聞いて浮かんできた疑問を必ずぶつけることを心がける。同業の会社ではどのような違いがあるのかを注意深く観察。
エントリーシートの提出ラッシュ
「学生時代に頑張ったこと」などよく出てくる設問への回答は事前にひな型を作っておき、作成時間を短縮した。手書きのものでも内容をEvernote(スマートフォンのメモアプリ)に残しておいたり、コピーを取ったりして、必ず後で確認できるように。
面接ピーク
エントリーシートに書いた内容を確認してから面接に臨むように。空き時間を見つけては次の面接で話す内容の整理やシミュレーションをして、本番に備えた。
就活終了
志望企業から内々定をいただき、就活を終える。
就活ファッション
全体的にお金をかけないように意識していた。スーツは入学式に購入していたものを着用。ネクタイは説明会と面接で使い分けた。コートには私服としてもよく使っているトレンチコートを。カバンは父親からもらったものを使用。面接前はそり残しがないよう、入念にヒゲを処理した。
取材・文/西山武志 撮影/鈴木慶子