じぬし・まさあき●国際支店 営業第一部 欧米グループ。成蹊大学法学部法律学科卒業。就職活動では、「海外で働けること」「目に見える形で社会貢献できること」「規模の大きな仕事に携われること」の3点を軸とした。幅広い業界を見た結果、歴史に残る建築で、モノづくりに携わることのできるゼネコン業界を志望。現社の建築を専門とする姿勢を貫いている点にひかれて入社を決意。面接担当者の柔和な雰囲気も決め手に。2006年4月入社。
各部署の仕事を学ぶ1年間の研修で仕事の意義を実感。配属後は経理を担当し、苦手分野を補完
「日本の伝統産業であるものづくりに携わり、かつ、建築という歴史に残る大きな仕事で社会に貢献していきたい」。そう考えて、現社に入社を決めた地主さん。
竹中工務店の新人研修は、新入社員全員が1年間大阪で研修を受ける制度となっている。1週間の全体研修を受けたのち、社内の部署を4カ月ごとにローテーションし、さまざまな部署を経験することで仕事を学んでいったという。
「最初に配属されたのは、大阪本店の営業部。民間の建築物を担当するチームで、先輩のお客さまとの打ち合わせに同行し、記録を取ることからスタートしました。当初は、打ち合わせで飛び交う建築や不動産取引の専門用語がまるでわからず、理解できない状態。建築専門書を買い、必死で学びましたよ」
また、自分の足を使って建て替えが必要な老朽化したビルを探し、1棟ずつテナントや入居率を調べながら、お客さまにどうアプローチしていくかを学んでいったという。
「地図を持ってひたすら古いビルを確認していきましたが、時期が真夏だったため、正直しんどかったです(笑)。入社前、営業は短い期間で次々と案件を手がけるものだと思っていましたが、ビルを売るまでの調査や交渉だけでも何年もかかることを知り、驚きました。根気強さとともに、お客さまの考え方の変化にも対応していける柔軟性も求められます。もともと営業志望でしたが、現地・現物で仕事をすることで、営業の奥深さを学び、ますます営業をやりたいと思うようになりました」
この後、地主さんは工務部、作業所(建築現場にある仮設事務所)にてそれぞれ4カ月間、仕事の基本を学んでいった。
「工務部では、大阪北地区におけるプロジェクトを担当。作業所の進捗や損益を管理する工事担当者たちとやりとりし、とりまとめる仕事です。稼働中の各作業所の損益をまとめたものが会社全体の損益であり、その積み重ねが私たち社員の給料につながり、経営の成り立ちを学ぶことができました。また、作業所では、50階建てのタワーマンション建築における総務・人事全般にかかわる事務を経験。安全かつ快適に働ける環境をつくるため、作業所の要望を吸い上げて危険箇所の改善提案も行いました。大阪で当時、最大規模と言われたこの作業所は、1日800人ほどの職人さんが工事に携わっており、日々、建物が出来上がっていく様子を間近に見ながら、『現場の安全管理が最優先』と肌で学びましたね」
入社2年目、地主さんは北海道支店に配属。若手社員育成のためのジョブローテーションの一環として、まずは経理部の仕事を経験することになる。
「新社員研修が終わったら、なじみある東京に戻れると思っていましたし、数学的でロジカルな仕事は向いていないと思っていたので配属された時はとても驚きましたね。しかし、もともと海外で働きたいという願望があったので、『自分とは文化の違う見知らぬ地域は、ある意味、海外のようなもの。新天地でチャレンジだ!』と考えを改めました」
地主さんは、上司の指導の下、北海道支店における経理をすべて担当することになる。
「北海道支店は、社員150名と全社的には比較的規模の小さい支店ですが、お客さまからの入金、協力会社への支払いなど、入出金のチェックと管理をすべて1人で手がけました。貸借対照表、損益計算書なども作成していかねばならず、本当に大変でした。さらに、北海道支店の現状と課題を分析し、支店長の前でプレゼンテーションまですることに。何もかも初めての経験で、数字を見るたびにじんましんが出そうになりましたよ(笑)。投げ出さずに頑張れたのは、上司が熱意を持って指導してくれたおかげです。自分が苦手だった部分を補完することができ、後々の仕事にすごく役立っていると感じますね」
また、行政機関による調査の立ち会いなども経験。担当者に向け自ら説明を行った。
「事前に関連部署の担当者にヒアリングし、自分がわからないことについては必ず理解し、疑問を解消することが重要です。当初は、入社2年目の私が社内各部門に依頼することを聞いてくれるのか不安でしたが、きちんと説明し、真摯に対応していけば、相手も納得してくれるもの。すべてにおいて、一つひとつの数字をおろそかにせず、積み上げていくことが大事なのだということを学んだ貴重な時期でしたね」
大阪の営業部で研修を受けていた当時は、地図を持って老朽化したビルや建て替えの可能性があるビルを確認して回っていた。不動産関係のグループに所属する場合は、こうした活動も必要になってくる。
入社4年目で営業部へ異動し、大規模プロジェクトを受注! 現在は念願の海外案件に携わる
入社4年目を迎えた地主さんは、同支店内の営業部情報グループに異動する。支店の営業成績全般を統括するこの部署では、毎月の受注件数とともに、経営目標までに必要な受注額を把握し、達成に向かう戦略を立てることが主務だ。
「戦略を立てて受注につなげるため、世の中でどのような建物の建て替えが多いのかを把握するよう努めました。当時、老朽化した病院を建て替えているケースが多かったので、北海道支店と本社の医療部門担当部署とで力を合わせ、築30年以上の規模の大きい病院をターゲットとした医療セミナーを実施することになりました。支店内の営業に向けた方針の説明から、病院の担当者に向けたPR内容まで、チームでプランを考える面白さを経験できましたね」
また、自社の持ちビルにおけるテナント管理も担当し、それぞれの要望や苦情への対応とともに、テナント全体を盛り上げるための企画も手がけた。
「この企画を通じて、建物を利用するテナント側の意見や考え方を知ることができました。不満や苦情は千差万別ですが、気持ちよく入居していただくためには、日ごろのコミュニケーションが非常に大切です。どんな不満であっても、呼ばれたらすぐに訪問するなど、テナント様の立場に立ち、信頼関係を築いていくことが重要だと学びましたね」
2年間の経験を積んだのち、地主さんは民間営業を担当するチームに配属され、新規顧客開拓の担当になりました。
「営業を担当することになって、本当にうれしかったです! 建物づくりにおいては、相手がどんな業界であろうとお客さまになり得るので、情報グループで戦略立案に携わった経験を生かそうと考えました。人脈を広げて情報収集することを心がけていたところ、自社を訪問していた営業担当者と親しくなり、幸運にもその担当者との情報交換の中で、営業に有益な情報をもらえるようになった経験もありましたね」
また、メディアなどでも情報を収集し、可能性のある業界を探りながら飛び込み営業を続けた。最初に手がけた案件も、新聞記事から得た情報が基になったという。
「愛知県を本拠地とする自動車部品製造関連企業が北海道に工場をつくるという記事を発見しました。 アプローチの可能性を探るため、名古屋支店から情報を得たり、その企業の関連会社から周辺情報を教えてもらうなどしていきました。自分なりに情報を収集したのち、実際にその企業を訪問して熱意を伝えたところ、『竹中さんも入札に参加してみる?』と言ってもらえたんです。そこからは、何度も愛知県に飛び、先方の担当者や設計を手がける事務所を訪ね、今回の入札で重視しているポイントをヒアリングしていきました」
地主さんは、予算を含めた要望を満たすだけでなく、設計力やアフターケアで評価されてきた竹中工務店ならではの、“柔軟かつ一歩先の提案”を心がけるようになる。
「お客さまが気づいていないところにこそ、重要なポイントがあるはず。それは一体何なのかを考え、ニーズの一歩先に踏み込む提案をしようと調査しました。そこで思いついたのが、北海道という寒冷地ならではの環境。社内部門と何度も議論を重ねながら豪雪・寒さ対策を考え抜き、安全性、快適性を実現する仕様へと変更していくことにしました。」
入札前のプレゼンテーションでは、プロジェクトマネジャーと共に、このプロジェクトへの意気込みや、万全の体制で臨むこと、自分たちには寒冷地の建物づくりにおける多様な経験があることなどを伝えたという。
「経理部時代に学んだプレゼンテーション能力が生きましたね。入札に参加した競合は5社。受注できるかの不安はありましたが、後日、企業から『御社に決めたいので、すぐにこちらに来てほしい』との電話が! 自分が携わったプロジェクトで、当社の新規顧客開拓、さらに大型案件を受注することができ、本当に嬉しかった。仕事の大きな手応えを実感しましたね」
とある土地を有効活用する商業施設のコンペプロジェクトを手がけるなど、活躍を続けていく。そして、2014年4月、念願の国際支店に配属され、海外プロジェクトに携わることとなる。
「現在、私が担当しているのは6~7社で、海外に工場や拠点などを建てる案件のサポートをしています。」
日本の拠点だけでなく、現地法人とのやりとりも多く、海外に飛ぶことも。受注業務はもちろん、お客さまの海外進出におけるコンサルティング業務など、幅広い海外進出支援を手がけているという。
「どんな状況であるかを主体的に説明できるよう、しっかり情報収集して理解するよう心がけています。建築の仕事の大きなやりがいは、『自分が携わったものが形として残り、この先何十年もそこにあり続ける』というところ。そして、今は『日本の製造業を支え、国力を支える一端となる』というさらなるやりがいを感じています! いずれは、現地に溶け込みながらその国の文化を語れるくらいの経験を積みたいですね。世界レベルで物ごとを考えられるほどの知識を身につけ、当社のグローバル展開に寄与していけるような存在になりたいと思います」
東京本店の営業担当と打ち合わせ。日系企業のお客さまの海外工場建設プロジェクトについて、お互いに情報共有をする。
地主さんのキャリアステップ
STEP1 2006年 研修時代(入社1年目)
入社後、神戸にある寮に入り、全寮制による1年間の研修期間へ。最初の1週間は、140名の同期と一緒にビジネスマナーや英語を学んだ。「全寮制と聞いて、どんな生活が待っているんだろうと思いましたが、仲間と過ごす毎日はすごく楽しかったです。価値観の違う人間が集まり、互いを認め合う環境でしたね。寮が主催する花見や地域住民の方と交流する寮祭など、季節ごとのイベントもありましたし、業務においても関連する部署に同期が多かったので、どんどん仲良くなっていきました。研修期間が終わる時には、離れ難い気持ちになっていましたね。今でも同期とはとても仲が良いです」。
また、工務部に配属された時には、作業所に行って工事の進捗を確認することもよくあり、地鎮祭(じちんさい・工事を始める前に行う儀式)のための設営、当日のお客さまの誘導、式祭の立ち会いなども経験。担当業務の幅広さにびっくりしたそう。研修期間の最後の4カ月は作業所に配属されたが、50階建てマンションを建築する作業所で、まさに目の前で建物が出来上がっていくダイナミックさに驚いた。
STEP2 2007年 北海道支店 経理部時代(入社2年目)
北海道支店の経理全般を1人で担当することに。上司のサポートを受けながら、一つひとつ地道に経理の知識を積み重ねていった。決算に向けて各部署と連携して決算書の取りまとめも手がけたが、業務の面で上司から叱られるという失敗も経験。
STEP3 2011年 北海道支店 民間営業時代(入社6年目)
民間企業に向けた営業を担当。新規開拓をメインとし、約4年間で3つの大規模プロジェクトを手がけた。その中でも、外資系企業による大規模プロジェクトは、北海道支店で指折り数えるほどの大規模案件。すべて英語でやりとりをする案件だったため、営業部長が海外志向のある地主さんに任せてくれたそう。「日本の企業のように先に細かい要件が決まっているわけではなく、建物完成のイメージ図が描かれた一枚の絵を見せられて『これをどのくらいの予算で作れるか?』というざっくりとした質問をされ、どう進めていこうかと悩みましたね。国際支店や本店と一緒に提案をつくり、着工まではコーディネーターとして動くことに。総務、経理、工務といった文系部門のみならず、設計や調達、見積などの技術系部門と連携しながら全体を取りまとめ、契約書の作成やリスクチェックなどもしていきました。日本式のコミュニケーションとはまた違い、クライアントと活発に意見を交わしながらひとつのチームとしてやっていくスタイルが求められましたし、『いつ何をしたか』を必ず書面に落とし込んで共有していかねばならない。外資系ならではの仕事の進め方があるのだと知ることができましたね」。
また、土地を有効活用することをテーマに、企画から考えていくプロジェクトも担当。営業部の方々と一緒に商業施設をつくる企画をゼロから考えてディベロッパーに提案し、コンペを勝ち抜き受注に結び付けた。「街づくりの一環となるプロジェクトで、社会に貢献するやりがいを実感しました。この部署で経験を積む中、さまざまな業種・業界のお客さまと接することができ、自分の知らない価値観を学ぶことができました。立場の違う人々の熱意や考え方、その業界流の常識やマナーなどに刺激を受けながら、それをいかに自分の提案に生かすかを考えるようになりましたね」。
STEP4 2014年 国際支店時代(入社9年目)
海外に拠点や工場をつくる日本企業を6~7社担当している。お客さまから「どのエリアに、どのくらいの規模のものを建てたいのか」という情報を得たのち、現地法人と打ち合わせを行い、提案に結び付ける。また、東京本店や大阪本店、また現地法人の支店に同じお客さまの別プロジェクトを手がけている営業担当がいるので、彼らと情報共有して連携している。「学生時代にスペインに留学した経験があり、その時から海外というフィールドを強く意識するようになりました。今後は、現地法人に赴任する経験なども積んでみたいですね。ただの出張や旅行とは違い、その国の文化や風習まで語れるよう、いろんな国で勉強したいと思っています」。
ある日のスケジュール
プライベート
北海道支店時代に先輩から誘われたことがきっかけでゴルフを始めた。当時は月に2回ほどラウンドに出かけていたが、東京に異動した現在は月1回程度。会社の先輩や後輩、同期、協力会社の職人さんなど、いろんな人とラウンドし、コミュニケーションしながらリフレッシュ。
海外旅行が好きで、独身時代にはよく旅をしていたそう。写真は、同期と一緒にバリ旅行に出かけた時のもの。「新入社員時代の寮生活で仲良くなった同期と旅した思い出深い写真ですね。彼とは今でも大親友です」。
家族で過ごすプライベートの時間も大切にしている。写真は北海道でキャンプをした時のもの。「夏休みには、海や山などに出かけ、自然に親しみながら、キャンプやアウトドアを楽しんでいます」。
取材・文/上野真理子 撮影/刑部友康