志望業界:商社、外資系IT、人材 説明会参加:34社(うち合同企業説明会4回) 先輩訪問:31人(商社12人、人材7人、外資系6人、メーカー6人) エントリーシート提出:12社(うちOpenES3社) 面接:12社 内定:6社(商社2社、外資系IT1社、メーカー1社、人材1社、広告1社) 活動費用:約21万9000円(交通費12万円、スーツ・靴・カバンなど3万円、外食費5万円、証明写真1万円、書籍代7000円、郵送費など雑費2000円。説明会や面接など外に出る用事は、できるだけ1日で複数回るように予定を調整して、交通費を節約した)
就活の軸が形成された、海外での先輩訪問とインターンシップ
僕の父は大学院で分子生物学の教授をしていて、現在は糖尿病の原因となるタンパク質の研究に力を注いでいます。そんな父は僕にとって昔から憧れであり、目標でした。僕は理系ではなく文系に進んだため研究者になる道はあきらめましたが、「父のようにほかの人にはない知識や技術を突き詰めて、かけがえのない存在になりたい」という思いから、漠然とですが経営者を目指すようになっていました。
大学3年の夏、僕はリュックサックひとつを背負って、生まれ故郷であるアメリカに渡りました。生まれてからすぐ日本に越してきたので向こうにいたころの記憶はないのですが、将来的に海外で仕事をしてみたいと考えていて、一度現地で働く人たちと会って話をしてみたいと思っていたんです。アメリカでさまざまな街を回りながら、現地の企業を訪問したり、滞在したユースホステルで各国のたくさんの社会人と交流したりしました。
アメリカでの企業訪問は正式なアポイントを取らずに、出社時間帯に目当ての会社の近くを歩いている人に英語で声をかけ、「日本から来た学生なんですが、お仕事の話を聞かせてもらえませんか?」と単刀直入にお願いをしていました。断られることもありましたが、快諾してくれて一緒にランチをしてくれる方もたくさんいらっしゃったんです。聞いた質問は「なんでこの企業に入ったんですか?」「どんな目標を持っていますか?」など、一般的な先輩訪問での質問と同様です。アメリカの企業にはさまざまな国籍の方が集まっていて、それぞれ「ここで成しとげたいビジョン」について熱く語ってくれる方が多かったのが印象的でしたね。“自分のやりたいことありき”で働いている人が多く、その風土に居心地の良さを感じました。
アメリカ滞在を通して、自分の就活の方向性が明確になりました。ひとつは以前からの目標でもあった「将来的に経営者になること」、もうひとつは「海外で仕事ができる企業に入ること」です。ただ、自分が日本で育った日本人だというバックボーンやその後の起業プランなども踏まえて「最初は海外で就職するよりも、日本に拠点を構える会社で働きたい」と考えました。
その後、「海外で働くならばもっと経験を積まなきゃいけない」と思って留年を決意。大学3年の10月から海外インターンシップに参加するための準備を始め、年明け1月からインドに滞在。現地の日系商社の子会社でのインターンシップに参加しました。インドは世界的に見ても急成長をとげている国だったので、そんな勢いのある環境で“海外で働く”ということを体験しておきたいと思ったんです。
インドで実務を体験できたことは、後々の大きな糧となりました。職場では自分で手を挙げてはっきりと意見を言い、それに行動を伴わせていかないと評価をしてもらえません。自己主張とその前の準備の大切さを肌で覚えましたし、あらためてビジネスをするための英語力不足も痛感。「もっと覚悟を決めて勉強と将来設計をしていかないと…」と、就活に向けての意識が一層高まりました。
インドから帰国後はとにかくたくさん社会経験を積もうと、国内でもインターンシップに参加しました。大学4年の6月から12月まで10社ほど、さまざまな業種のものを経験。インターンシップでは初対面の学生とチームを組んでグループワークなどに取り組みました。そこではお互いのことを短時間で理解し合うために、普段よりも丁寧かつスピーディーなコミュニケーションが必要です。ここで培われた“少ないやり取りで自分のことを知ってもらう、信頼してもらう”ための会話力は、その後の面接で非常に役に立ちました。また、インターンシップの選考は、そのまま本選考のシミュレーションにもなります。この段階で数をこなしておくことで、本番の選考は物怖じせずに向き合うことができましたね。
常に目の前にある“やりたいこと・やるべきこと”に尽力する
大学4年の11月あたりからは、先輩訪問を積極的に行いました。留年したメリットを生かし、先に就職をした同級生の内定者に先輩を紹介してもらったり、説明会で社員の方に直接お願いをしたりして、アポイントを取りつけていました。必ず聞いていたのは「今入社して何年目で、どういう仕事をしているか」「会社の課題はどんなところにあるか」「自分のやっている仕事に意味を見いだしているか」…などです。最初のうちは「こんなことを聞いたら相手に失礼かも…」と思うこともありましたが、こちらの真剣さが相手にちゃんと伝わっていれば、突っこんだ質問をするほど相手も親身になって答えてくれましたよ。
インターンシップや先輩訪問に多くの時間を割いていたのと、選考の早い外資系の会社も受けていたため、年明けの1月から就活のスケジュールはかなり詰まっていましたが、プライベートの時間もしっかりと確保していました。もとより、“就活”と“プライベート”というように時間を分ける意識があまりなく、「常に目の前にあるやるべきこと、やりたいことに全力を注ぐ」というスタンスで就活にも臨んでいたんです。やりたいことは我慢しないでやりきった方が、やるべきことにも自然に目を向けられるのでいいと思います。
面接では「自分のマインドと会社のマインドがどれだけ一致するか」という点を確認しながら話をしていました。面接は一方的に選ばれる場ではなく、双方向的に適性を判断し合う場です。互いに相手のことを理解しようとすることでバランスが取れ、よりよい面接になると感じます。また「もしこの会社に入らなかったとしても、いつか一緒に仕事をするかもしれない」という意識を持つことをお勧めします。そうすることで、どんな些細(ささい)な話でも印象に残るようになりますし、会話に対する集中力も増しました。
就活をひと通り終えた段階で、内々定先の検討を開始。経営者になるための素質を養えるのであれば職種にこだわりはなかったので、「海外で働けるかどうか」「成長のスピードが速いかどうか」という観点から、最も自分の描く将来に早く近づける会社はどこか…と考えて、現在の内々定先に決めました。人との相性なども考慮しましたが、最終的には「その会社でどんな仕事ができるか」が一番のポイントに。総合商社は入社してから間もなく、スケールの大きい仕事を任せてもらえる可能性のある点がとても魅力的でした。
入社後はまず業務に必要な知識を吸収し、3年後までには海外駐在するような仕事を任されるようになりたいです。そして、30歳までには自分でひとつのプロジェクトを回せるようになって、会社に貢献しつつ起業家精神を養っていきたいです。人一倍「感謝」の気持ちを大事にして、精一杯頑張ります!
低学年のときに注力していたことは?
学習塾でのチューターのアルバイトです。生徒の進路相談にのるだけでなく、アルバイトスタッフ向けの研修を主催したりと、職場に貢献するため積極的に自分が考えたことを実践していきました。「人の話をじっくりと聞くこと」を大切にし、常に生徒や周りのスタッフに気を配るように心がけていました。
また、大学でのゼミの活動にも注力。研究の発表のためにベトナムに行く機会があったのですが、その発表でリーダーを務めたのはとても勉強になりました。自分とほかのメンバーの立ち位置を把握して、それぞれが最大限の能力を発揮できるように分担をしていくことを通して、組織運営のコツを学べた気がします。
就活スケジュール
アメリカで会社訪問
海外で働きたいという思いから、経済の中心であるアメリカに渡る。バックパックでアメリカを横断しながら、現地の会社をアポイントなしで訪問。さまざまな働き方を知ることで、物事を多角的な視点で見られるようになった。
海外インターンシップに参加
自分の能力を試したいという思いから、インドにある日本の商社の子会社でのインターンシップに参加。現地では外国人の上司の下で資料作成や営業の同行をした。起業家の方にも数多くお会いし話を聞くことで、就活へのモチベーションが上がった。
インターンシップの合同企業説明会に参加
インターンシップの合同企業説明会に参加し、外資系やベンチャー企業を中心に回った。ブースでは積極的に社員の方に話しかけ、その場で先輩訪問をお願いした。
インターンシップのエントリーシートや面接を受ける
インターンシップ参加のためのエントリーシート作成、テストセンター受検、面接に多くの時間を費やした。エントリーシートは先輩が過去に書いたものを参考にしながら、早い段階で基本となるフォーマットを作り上げた。そうすることで数多くの会社に応募ができ、面接も場数を踏むことができた。
インターンシップ参加
この時期に6社のインターンシップに参加。短期のものから長期のものまであったが、ほぼ毎日何かしらのインターンシップの期間中で、睡眠時間が取れず体力的にきつかった。参加したインターンシップを通じて、自分の就活に対する軸が定まった。
外資系企業の面接スタート、会社説明会に参加
外資系の選考と並行して会社説明会に参加。多くの社員の方のお話を聞きながら、自分の軸でその会社との相性を判断するよう心がけた。
エントリーシート提出、テストセンター受検、ベンチャーの面接スタート
この時期に3社の内々定を獲得。2月に1つ目の内々定が出てからは、自信を持ってほかの会社の選考に臨むことができた。
面接ラッシュ
4月の始めは毎日3社ずつ面接が続いた。どの面接でも「自分がどういう人間なのか、自分が成しとげたい夢は何なのか」ということを一貫して伝えた。
内定先の検討
内々定を頂いた会社の中で「どの企業に行けば、自分が成しとげたい夢に早く近づけるか」と考え、現在の内々定先に受諾の連絡を入れて就活を終える。
就活ファッション
黒無地のリクルートスーツは説明会や先輩訪問など、普段の就活用途として着用。最終面接などの勝負どころでは、黒無地のブランドもののスーツを着て気合いを入れた。スーツはできるだけ細身で体にフィットするものをチョイス。カバンは就活後も使用できるように、丈夫で雨に強いものを購入。ネクタイは柄違いで3本用意し、その日の気分によって選んでいた。スーツやワイシャツは着る前にシワや汚れがないかチェックし、靴もほぼ毎日磨いていた。また、月に1度は美容院に通い、普段よりも気持ち短めに切ってもらって清潔感を保つように心がけた。
取材・文/西山武志 撮影/鈴木慶子
僕の父は大学院で分子生物学の教授をしていて、現在は糖尿病の原因となるタンパク質の研究に力を注いでいます