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多摩美術大学 ハヤカワ五味(稲勝栞)さん

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はやかわ・ごみ●1995年、東京都生まれ。本名・稲勝栞(いなかつ・しおり)。小さいころからアニメやゲーム(特にRPG)が好きで、葉っぱを集めて「薬草だ」と言い張るような子どもだった。小学生のころからアートに興味を持ち、コンクールなどにも応募。中学時代にオリジナルで作った『キリトリ線ストッキング』や『木目調ストッキング』がネットで話題に。高校時代よりアクセサリー類の製作を始め、デザインフェスタにも出展。原宿や秋葉原などのほか、海外への通販や、「JAPAN EXPO」でも商品の販売を行う。2014年6月にブランド「GOMI HAYAKAWA」を立ち上げ、「少女漫画」シリーズの展示予約会を原宿にて実施。8月にはランジェリーブランド「feast by GOMI HAYAKAWA」を立ち上げ。「貧乳向けランジェリー」として話題となり、告知ツイートは1万4000リツイートを超えた。14年4月に多摩美術大学に入学。

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「GOMI HAYAKAWA」ブランド立ち上げの際に行った行なった展示会では、装飾のほかに、一緒に飾ったアクセサリーもすべて自分で企画。「好きな『少女マンガ』をイメージして、『かわいくなりたい』をテーマにワンピースをデザインしました」。

「人を喜ばせたい」「驚かせたい」が、活動の原動力に

私のモノづくりの原体験は、中学生のころにハマったロリータ服。ロリータ服ってとても高いので、お小遣いではなかなか買えなかったんです。だから、自分で布を集めて作ってしまおうと。それがきっかけで、モノづくりの楽しさに気づきました。

 

注目してもらうきっかけになった、ハサミと切り取り線をプリントした『キリトリ線ストッキング』も、最初は「こんなのがあったらいいな」と思ったものを自分で作ったのが始まりです。友達に「私にも作って」と言われたので、プレゼントしたらすごく喜んでくれました。また、当時はブログもやっていたので、そこにアップしたら「かわいい!」という反応があったりして。だったら、喜んでくれる人のために届けたいなと思いました。

 

もともと、私はエンタテイナー気質があって、例えば何かを突然プレゼントして喜ばせたり、人にサプライズをすることが好きなんです。誰かに喜ばれるのはうれしいですし、そうやって生まれる「人と人のつながり」に興味がありました。

 

以前はモバゲー中毒だった時期もあって(笑)、オンライン上で見知らぬ人とつながっていく感覚にまったく抵抗がなかったんです。だから、自分の周りにいる友達はもちろんですが、私の作ったものを欲しいと言ってくれる見知らぬ人に対しても、「喜んでもらえるならすぐにでも届けたい!」という気持ちをいつも持っていましたね。しかも、作品の写真をTwitterやブログに載せると、広がり方が無差別というか、どのくらいの人が見ているかは想像できませんよね。「こんな人からも反応があるんだ!?」という感覚が、楽しくてしょうがなかったんです。

 

そうしたことが「仕事」になっていったのは、比較的最近の話です。私は自分の作ったものを多くの人に知ってもらいたいし、それを通じて喜んでもらいたいので、大前提としてたくさんの人に広めていくことが大事だと思っています。自分が欲しいものを作れば絶対にいいものができるという自信もありますから、大事なのは「どのように宣伝していくか」だと考えるようになりました。感覚的にものを作って、ロジカルに売り込んでいく。自分の商品を前にしつつ、どうやってプレゼンすれば、「かわいいな」「欲しいな」って思ってもらえるかを、いつも冷静に考えています。

 

あとは、ストッキングを自分一人で販売している時に、あまりコストのことなどを考えずに進めていたので、貯金がマイナスになりかけて。「この状態を続けていくと、次の注文が受けられない!」と危機感を覚えたことも大きかったですね。製作資金がないと、新しいアイデアが浮かんでも形にできません。形にできなければ、人に届けられない。それは自分のやりたいこととは違うよなと思って。だから、今後新しいものを作り続けるためにも、利益をきちんと生む仕組みを作っていかないとダメだという意識になりました。

 

こうした「次を考える」という意識は何に対しても持っていて、何か考えが浮かんだら、そのためには何が必要で、どんな手を打っていけばいいかを常に考えています。年末には、翌年の行動計画や企画の進め方についてもイメージを出しておき、「時間ができたらやりたいこと」もあらかじめリストアップしておくんです。一回やりたいことや目標が決まってしまうと、そこまでのプランも立てやすいですから。

 

どうせならゴールまでは最短距離で行きたいじゃないですか。だから、今の位置とゴールを確認して、距離をはかっておくことは意識していますね。そうすれば、身につけなくてはいけないスキルや知識も必然的にわかります。

 

私は何でも一人で作ってしまう印象が強いみたいで、デザインすることが得意だと思われがちなんですが、自分では「人をまとめること」が一番得意だと思っています。小学生のころや、高校時代にも委員長とかをやっていたのですが、自分自身が楽しみつつ、巻き込んだ人をいかに楽しませるかを考えながら進めると、物事がすごくうまく回っていって、みんなが100パーセントの力を発揮してくれて。これは今も同じ。私が考えた企画を実現するために、得意な人にお願いをして手伝ってもらったり、できる人に頼ったりして分担しながら形にしていく。その全体をデザインするのが私。だから、周りからはよく「プロデューサーっぽい」と言われるんですよ。

 

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RPGみたいに経験値を上げていけば、どんな難敵でも対処できる!

今は2つのブランドをメインでやっています。1つが「GOMI HAYAKAWA」という洋服のブランド。もう1つが、胸が小さい女性向けのランジェリー商品を企画・販売する、姉妹ブランド的な位置づけの「feast by GOMI HAYAKAWA」です。

 

今後、具体的に何をしたいかと考えると、より多くのお客さんに喜んでもらうため、もっと安定的に商品を届けられるように、まずは会社を作ることかなと思っています。だから、卒業までには起業するつもりです。

 

そのために今学びたいと思っているのは、税務関係などのお金のことです。会社を起こすなら自分が代表になるわけですから、きちんとお金を回していくための知識を身につけておきたいと思っています。

 

また、学校では広告についてもきちんと学んでおきたいと思っています。自分がいいと思う服を作るのは、学校で勉強してもどうしようもないけれど、広告は人に見られるものだから、先生に評価されるものを作っていいと思うんです。評価を受けるものを作れる技術を身につけることは、商品を発信する側としていかに宣伝していくかにつながると思うので、ロジカルにきちんと学びたいと思います。

 

私がデザインに興味を持った背景には、「モノを通して人をデザインしたい」という思いがあります。昔の私は、外出するのが嫌いで、教室の中でも隅っこにいるネクラで外見も気にしてないような子だったんです。でも、ロリータ服を着ることで胸を張って外を歩けるようになったし、ほかのロリータさんと交流することでコミュニケーション能力が上がって性格が明るくなって。お化粧することにも興味を持つようになったので、見た目の印象も変わっていったんだと思います。

 

これって、私自身が「すごくデザインされているな」って感じていて。同じようなことを、逆に私もしていきたい。私がロリータブランドにハマったみたいに、私の作品にちょっとでも興味を持ってもらうことで、その人に何かしらの影響を与えられたらいいなと思います。これは服じゃなくてもいいと思っていて、例えばボランティアとか、教育とか、やり方はいろいろあると思うのですが、いろんなことを自分でデザインしていけたらいいなと考えています。これは、野望というか、将来的に実現したいことですね。

 

私が常日ごろ考えていることは2つあって、1つが「とりあえずやる」、もう1つが「評価を決めるのは自分じゃない」です。自分が世の中に出すものを、自分であれこれ批評してみてもしょうがない。判断するのは自分ではなく他人ですよね。だから、とりあえず出してみて、どういう評価を得るかを確認し、そこから訂正していったり距離をはかったりすればいいと思うんです。評価を気にするのはそこからでいいんじゃないかなって。

 

私は周りからトントン拍子で成功した人だと見られがちですが、私自身が挫折だと認めていないだけで、いろいろな失敗や挫折を経験してきました。そもそも、失敗をダメなことだと決めたのは誰だ!というか(笑)、失敗というからよくなくて、「うまくいかなかったなー」程度に考えていればいいんじゃないかなと思います。だってまだ学生ですし、今からいろんなことができるじゃないですか。「失敗しちゃった、テヘ」くらいの気持ちでいいと思います。

 

私、ドラゴンクエストとかRPGをずっと好きでやっているので、「あ、経験値が上がっているな」という感覚をいつも持っているんです。受験勉強をしていた時も、「つまらないけど、これができたからすごく経験値が上がったー!」っていつも思っていました。実際、ドラクエは経験値が増えてレベルが上がると呪文を覚えたりして、そうやって自分の身になったものが次の戦闘でちゃんと生かせるじゃないですか。これと同じで、今学んでいること、経験していることは、必ず次にどこかで生かせると思っています。それくらいのポジティブシンキングが大切です。

 

ボスを倒すのも積み重ね。経験を積んでおけば、何が出てきても対処できます。まだ現れていないものにびびっていてもしょうがないですよね。何かが目の前に来たときに対処できるくらいの経験値を、自分が持っておけばいいと思うんです。

 

ハヤカワさんに10の質問

Q1.好きな異性のタイプは?

T.M.Revolutionの西川貴教さんみたいな、小柄でちょっとぽっちゃりしている人。内面的には、器が大きくて、チビチビと文句を言わない人。

Q2.初対面の人のどこを気にする?

最低限のマナーがあって気遣いができるか、かな。土足で上がってくるようななれなれしさはとても苦手です。

Q3.好きな食べ物は?

1カ月ごとくらいでころころ変わるんですが(笑)、最近ハマっているのは「カップヌードル」。好きだ好きだと言っていたら、友達がケースで差し入れてくれました(笑)。

Q4.好きな映画は?

園子温さんの作品、特に『ヒミズ』『愛のむきだし』が好きです。作品を見ていて、彼と人間性が近いのかな…って感じることがあるくらい、ハマりました。

Q5.行ってみたい国は?

パリで開催されている、日本のマンガやアニメ・ゲームが中心のイベント、「JAPAN EXPO」に一度行きたいので、フランス!

Q6.尊敬している人は?

ブランディングやクリエイションが面白いアーティストのスプツニ子さん。あとは学部・学科の先輩でもある佐藤可士和さん。一度お話ししてみたいです。

Q7.会ってみたい人は?

会いたい人は会えるので、特になし。

Q8.気分転換の方法は?

ライブハウスで騒ぐこと! 家で爆音でCDを聴くのもいいのですが、ライブで生で聴く方が好き。

Q9.宝物は?

手紙など、友人との大切なやりとりはすべてとってあります。手書きのものが好きで、自分からお礼をするときも手書きにはこだわっています。

Q10.座右の銘は?

「砕けて当たれ」。あと、「今日だけがんばるんだっ…!」など、マンガ『賭博黙示録カイジ』に出てくるセリフが好きで、プリントして家の壁にも貼っています。

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一日のスケジュール

on
6:00 起床。家が学校から遠いので、毎朝この時間に起きる。
7:00 自宅を出る。朝食は時間がなくて食べられないことが多い。
9:00 授業開始。まだ1年生なので必修授業や課題も多い。
12:00 お昼は、パンかお弁当を買って教室で食べる。お金がないときは、家にあったおかずを詰めて持ってくることも。
18:00 5限で授業が終了。課題が出たら、電車での移動中に少しずつ進める。
19:30 雑誌の取材を受ける。ランジェリーの新作について話す。
20:30 夕食がてら、新宿で打ち合わせ。
24:00 終電で帰宅。メールチェックを済ませ、翌日の予定を確認したら、残っていた授業の課題に取り組む。
2:00 就寝。

off

8:00 やることがたまっているので、眠くても無理して起きる。
9:00 残ったタスクの処理を1時間で済ませる。
10:00 課題を進める。時間があれば、次の商品の企画書を書いたり、アイデアをまとめておく。
13:00 商品の製造をお願いしている工場に足を運び、担当者と打ち合わせ。
15:00 新宿に移動し、お気に入りの喫茶店でクリエイター仲間とパフェを食べながら打ち合わせ。
20:00 友人の家に遊びにいき、打ち合わせがてらみんなで晩ご飯を食べる。
23:00 帰宅。残ったタスクを進めるほか、その週にできなかったことをすべて片づける。終わるまで寝られない。
3:00 就寝。

 

取材・文/志村江 撮影/刑部友康


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