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シュルンベルジェ株式会社

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今回の訪問先 【シュルンベルジェ テクノロジーセンター】
産業はもちろん、私たちの生活や社会の発展に欠かせない資源、石油・天然ガス。日本でも2011年以降、石油・天然ガスの消費量は増えつつあり、またIEA(国際エネルギー機関)の14年版の世界エネルギー見通しによると、40年の石油・天然ガスの世界需要は12年の1.3倍になると予想されています。中でも中国は2.0倍、インドは2.7倍となる見通しで、需要は拡大する一方です。そんな石油・天然ガスの採掘調査から生産にいたるまでのテクノロジーを提供しているのがシュルンベルジェです。シュルンベルジェは1926年フランスで設立されました。同社は電磁気、音波、放射線などを利用した革新的な技術を確立し、世界中の石油・天然ガス会社にその高度な技術とサービスを組み合わせたトータルソリューションを提供し発展してきました。現在、シュルンベルジェでは、世界各地に100以上のR&E(研究開発)センターを設けて、業務に用いる製品の開発を行っています。日本には1980年代にテクノロジーセンターが設立され、検層機器やデータ解析手法の開発に着手しました。今回は85年に神奈川県相模原市淵野辺に開設された日本のテクノロジーセンターのシゴトバを訪問しました。

 

高温・高圧の過酷環境下で高精度な計測をする油田開発のためのツールを開発

SKK(シュルンベルジェ株式会社)の本社およびテクノロジーセンターがあるのは、神奈川県相模原市。最寄り駅のJR横浜線淵野辺(ふちのべ)駅から15分ほど歩けば、SKKテクノロジーセンターの正門に着きます。
横浜線淵野辺駅付近には青山学院大学や麻布大学などの教育機関、JAXAなどの研究機関などがあり、またさまざまな技術系企業も立ち並んでいます。周辺には閑静な住宅地が広がり、車で通勤する人も多いそうです。
SKKテクノロジーセンターは、国際企業シュルンベルジェにおけるアジア初のテクノロジーセンターです。そのシゴトバを、開発本部音響計測機器開発部のプロジェクトマネージャーである今井亮さんが紹介してくれました。
「シュルンベルジェでは全世界に100以上の研究所や開発センターを設け、研究・開発を行っています。ここ日本のSKKテクノロジーセンターでは、油田サービスの中枢とも言えるワイヤーライン検層(ワイヤーラインと呼ばれる家0ブルで地層の物理特性を測定すること)やLWD(掘削同時検層)に必要な製品を中心に開発を行ってきました。油田の『検層』というとわかりにくいかもしれませんが、これは私たちが受診する、健康診断や精密検査に似ています。まずは石油会社にとっての生命線である『埋蔵量』を見積もるための精密な計測を行います。次に油田にもライフサイクルがあり、その過程でさまざまな『診断』を行います。油田開発の過程では、検層データを分析することで最適な油井(ゆせい:油田において原油を採掘するために使う井戸)の設計、またさらなる油田開発の計画を決定します。検層技術の発達とともに、油田の生産性は著しく向上してきました。ですから、高度な検層技術が、近年急激に伸びている石油・天然ガスの需要・供給を支えていると言えます」(今井さん)

サシカエphoto

 

石油などの化石燃料は有限資源です。石油採掘は19世紀より始まっており、数十年で枯渇する、と言われた時期もありましたが、近年の相次ぐ海底油田の発見や、シェールガス・シェールオイルなどの非在来型資源の開発技術の発展により、飛躍的に生産性が向上、生産量も今後ますます増えていくことが予想されています。今井さんのプロジェクトで開発した最新の検層機器はこういった新しい油・ガス田の開発に利用されることになります。
「3年の開発期間を経て、2014年に商品化に至ったのが写真の『QVSI』です。これはワイヤーライン地震検層サービスに用いられます。検層に使用される機器、計測方法は多種多様ですが、地震検層は医療検査でいうと超音波検査(エコー検査)に似ています。超音波検査では、体内に送った超音波の反射波を計測・処理することで、体にメスを入れることなく臓器などの様子を画像データとして見ることができます。一方地震検層では、人工的に起こした地震波とその反射波を計測・処理することで、地下何キロメートルにもわたる地層の様子を画像化することができます。地層の形状は化石燃料の埋蔵量、生産性にかかわる大きな要素で、油田開発においては非常に重要な情報のひとつです。
掘削技術の発達とともに、油井は以前よりもずっと深く掘削され、それに伴って油井内部は高温・高圧化する傾向にあります。よって、油田開発に必要不可欠な検層機器にも高温・高圧対応が求められてます。QVSIプロジェクトでは高温・高圧環境に対応する、地震検層機器の開発に成功しました。従来製品でも摂氏175度・1400気圧までの環境で動作しなければなりませんでしたが、この製品は従来製品と同等の計測精度を持ちながら、摂氏260度・2000気圧にも上る、より高温・高圧の過酷な環境での動作・計測が可能になりました」(今井さん)

 

photo2

 

 

摂氏260度・2000気圧の環境に耐えられるQVSIは、主に写真のような海洋掘削リグによる海底油田の開発で用いられます。
「海底油田開発は巨大な海洋掘削リグを維持するだけでも1日数千万円、時には1億円以上かかる場合があります。そのため、検層機器が不具合を起こせば、甚大な損失につながります。ですから、私たちが開発する製品には高い信頼性が求められます。厳しい高温・高圧の環境下でも確実に動作・計測できるように、高度なテクノロジーが用いられています」(今井さん)
QVSIの直径は約8センチメートル、長さ3メートルという細長い本体の内部には、地層を評価し、データを地上に伝送するための電子機器が入っています。実際の使用場面では最高4個までQVSIを連結、さらに通信機器などをつなげるため、全体の長さは90~130メートルにもなるそうです。
「電子機器が正常に動くのは、一般的に摂氏100度前後まで、超高温対応にしても200度くらいが限界だと言われています。しかしこの製品は260度の環境下でも正常に稼働します。それを可能にしているのは、最先端の技術開発力と、エンジニアたちの地道な努力です。この分野の製品開発では、非常に困難な技術課題を乗り越えなくてはなりませんが、その分やりがいのある技術分野なんです」(今井さん)

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日本の拠点で実施されているプロジェクトとはいえ、グローバル企業だけにプロジェクトメンバーはさまざまな国籍の人たちで構成されます。写真は機械設計を担当しているエンジニアと図面の確認をしているところ(写真中央が今井さん)。また、国内・海外の他部門との連携も不可欠だそうです。
「製品開発はまず、マーケットのニーズを分析することから始まります。そのためには、海外に拠点を置くビジネス・マーケティングの部門と頻繁に打ち合わせをし、ビジネスニーズに対応する具体的な製品への要求事項や仕様を決定します。それらの厳しい要求をいかに実現していくか、各専門のエンジニアが詳細に設計していくのです。各過程では、計測を実現するための技術的な解決策を提示するだけではなく、製品が量産され、油田開発現場で使用されるまでの過程で生じるさまざまな要求事項を満足させなくてはなりません。そのため製品開発段階から、製造部門、調達部門、品質管理部門、そして海外の現場ユーザーとのコミュニケーションが必要となります。その結果、ニーズを満たす最先端の計測を可能にするだけではなく、同時に生産性・信頼性が高く、ユーザーにとって使いやすい製品を設計することができるのです」(今井さん)

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製品開発が終わると、量産化するため製造部門に技術を移転します。SKKテクノロジーセンター内にも製造本部があり、ここから世界中の油田開発現場の拠点に出荷されていきます。写真は技術者たちとオペレーションの専門家がQVSIの試作品の動作確認を行っているところです。
「このテクノロジーセンター内には、実際の使用場面を想定した試験ができるよう、試験井(しけんせい:写真後方の白い構造物)が設置されています。ここで製品開発に携わるエンジニアたちが試作品をテストしたり、実際に出荷する製品の品質の最終チェックを行ったりします」(今井さん)
製品が実際に導入される海外の現場に出かけることもあるそうです。
「私たちプロジェクトメンバーは、実証実験に立ち会ったり、現場で実際にオペレーションする作業員のトレーニングを行ったりもします。マニュアルも開発メンバーが作成するんですよ」(今井さん)

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シュルンベルジェでは、ワールドワイドでさまざまな製品開発を含めたプロジェクトが進行しています。プロジェクトの成果は、国際学会や社内のシンポジウムなどで発表する機会も多いそうです。写真は14年に米ボストンで開かれた社内のシンポジウムで、今井さんがQVSI開発プロジェクトについてプレゼンテーションしているところです。
「プロジェクトを成功させることはひとつの大きな使命ですが、プロジェクトから得られた知識・技術を蓄積し、共有することも大切な仕事です。それは、ほかの無数に存在するプロジェクト、将来新たに立ち上げるプロジェクトに大きな恩恵をもたらすことがあるからです」(今井さん)

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ハタラクヒト 誰も成し遂げていない技術へのチャレンジ、それが面白さ

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引き続き今井さんに「シュルンベルジェ テクノロジーセンター」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気について話を聞きました。

 

今井さんは東北大学大学院工学研究科を03年に修了後、シュルンベルジェに入社。
「学生時代の専門は地球工学。そのため、大学の授業を通じて油田開発、シュルンベルジェという会社のことは知っていました。調べてみると、世界中でビジネスを展開しています。そのグローバルさ、オイルフィールドにトータルソリューションを提供するという事業の幅広さにひかれ、入社を決めました」

 

当時、今井さんを面接したのは海外のシュルンベルジェの社員だったそうです。面接はもちろん英語で行われました。
「当時の私のTOIEC(R)Testの点数は550点ぐらいしかありませんでした。片言の英語でなんとかコミュニケーションをとったという感じでしたね」

 

入社後、配属されたのはシュルンベルジェの米国オイルフィールドサービスオペレーション。
「私の役割は油・ガス田の開発現場で、ワイヤーライン検層などの現場作業を指揮することでした。最初に派遣されたのは米ウェストバージニア州の拠点です。その後、米テキサス州、さらにはサウジアラビアの現場を経験しました。テキサスとサウジアラビアでは、今回プロジェクトでも紹介させていただいた、地震検層のスペシャリストとして赴任しました。その後製品開発に携わりたいという希望がかない、10年にSKKテクノロジーセンターに異動となりました」
実は今井さんのように油田の現場で働いていて、製品開発の部署に異動するのはレアなケースだそうです。

 

現在はプロジェクトマネージャーとして、さまざまな製品開発プロジェクトをマネジメントしている今井さん。「当社で製品開発に携わる面白さは、誰も成し遂げていない技術にチャレンジできることですね。最初は製品の『概念』しかないのですが、それが『設計図』となり、やがて試作品という触れることのできる『形』になります。それが大きなやりがいを感じる瞬間ですね。そしてもうひとつ、大きなやりがいを感じるときがあります。それはユーザーから『性能が高い』『しっかりした計測ができている』という声を聞いたときです。自分たちの作った製品が価値を生み出していることを実感できるからです」

 

ワイヤーライン検層のための装置を開発するには、さまざまな分野のエンジニアが必要になります。どのような人が向いているのでしょうか。
「機械や電気電子、物理、通信、ソフトウェアなど、さまざまな技術を統合してひとつの製品ができ上がります。そのため、自分の専門外の技術者たちとうまく連携することが、製品開発においては重要となります。ですから、ひとつの専門を深めることはもちろん大事なのですが、視野を狭めないでほしいのです。自分の専門外の技術についても興味を持てるような意欲のある人が向いていると思います。また、チャレンジを楽しんで、能動的に行動できることも求められる資質ではないでしょうか」

 

最後にSKKテクノロジーセンターの文化や風土について聞いてみました。
「海外の拠点と比べると日本的ですが、日本国内の企業と比べると、外資っぽい風土の企業です。とにかく自分の意見をバシバシ言う人が多いんです。コミュニケーションが活発で、プレゼンテーションも多い。伝えようという意志がなければ伝わりません。ですから、なんとなく上司が察してくれるだろうというような風土は、一切ありません(笑)。こだわりを持っている人、やりたいことのある人にとっては、働きやすいシゴトバです」

 

リフレッシュできるさまざまな施設

食堂です。メニューが豊富なので、社員にも好評だそう。昼食だけではなく、夕食も食べられます。
「天気の良い日はテラス席でランチを食べると気持ちいいんですよ」(人事部 宗隆之さん)

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ある日のランチメニューです。メインは白身魚とエビの炒め(320円)。それに副菜の春巻き(50円)、ごはん(50円)、おみそ汁(40円)をつけた定食です。

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敷地内には本格的にサッカーができるようなグラウンドもあります。
「お昼休みはここでサッカーをして、リフレッシュする社員も多いですね」(宗さん)

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テニスコートも2面あります。こちらでもお昼休みにテニスをして楽しんでいるそうです。

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ロハスルームです。40~50分500円で本格的なマッサージが受けられます。朝9時半から開いているとのこと。人気で、ほとんど毎日予約で埋まっているそうです。

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シュルンベルジェにまつわる3つの数字

世界中のオイルフィールドに石油掘削・産出のためのトータルソリューションを提供しているシュルンベルジェ。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 29

2. 11.7億

3. 7000

 

前回(Vol.120 日本曹達株式会社)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美 撮影/臼田尚史


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