Quantcast
Channel: 就職ジャーナル
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1839

株式会社西山ケミックス

$
0
0
かじくり・さき●2011年4月入社。企画部 営業企画課。大阪市立大学商学部経営学科卒業。就職活動スタート時は総合商社や大手メーカーでの企画職を希望していたが、中小企業の方が企画職に挑戦しやすいと考え方向転換を決意。現社の説明会で「会社をリノベーションできるパートナーを求めたい」という社長のメッセージを聞き、年齢に関係なく新しいことに挑戦し任せてもらえる会社だと思い、入社を決意。

1000以上あるゴムの種類や機能を学び、新規クライアントへ商品を提案

梶栗さんの勤務する西山ケミックスは、ゴム製品やゴムを使った商品の企画製造を行う京都の中小企業。代表的な製品として、精密機械や製造機器の緩衝材(※1)としてのゴムパッキン、シリコンゴムの美容マスク、タブレット端末やスマートフォンの液晶保護フィルム、パソコンのキーボードカバーなどがある。従業員30名未満の規模ながら、画期的な製品力、高機能を付加する技術力への信頼から名だたる大手企業と取引がある。

(※1)衝撃を吸収するクッションのようなもの

 

入社4年目を迎えた梶栗さんは、化粧品、雑貨、事務用品、重工メーカーといったさまざまな業種のお客さまに、ゴム製品の活用や導入、製品提案などを行っている。

「入社して1カ月間は、座学研修で1000以上あるゴムの種類や特徴、用途、ゴム材料の選定方法など仕事に必要な知識を学びました。ゴム材料の種類の多さに驚くとともに、原料の組み合わせで伸縮性だけでなく耐薬品性や耐摩耗性といった複数の機能を持たせることができることに感動。また座学の後は、製造ラインで、液晶保護フィルムの製造、成形加工(※2)、仕上げ、フィルムのパッケージングといった4つの工程を1工程2カ月ずつ体験しました。実際に製造現場でゴムを見て、触って、体感することで、ゴムへの理解が深まり、不具合の出やすい材料について、専門的な知識も身につけることができましたね」

(※2)所定製品の形にする工程のこと

 

入社半年後の10月から、現在の営業企画課に本配属になる。先輩に同行し、お客さまへの提案営業、ゴム材料の仕入れ先や金型メーカーなどを訪問。3カ月後には、独り立ちして営業活動を始めた。

「私の担当は新規のお客さまでした。といっても、企業に突然訪問する新規開拓の営業ではなく、展示会やホームページ経由などでコンタクトされてきたお客さまに対して、アプローチする形。最初は、商品知識や経験が足りず、お客さまの質問に答えられないことも多くて…結果の出せない日々が続きましたね」

 

初受注は、入社2年目の6月。東日本大震災で被災した宮城県山元町の障がい者施設のために、奈良県の「たんぽぽの家(※3)」がオリジナル商品を提供。その商品を障がい者施設が運営する「工房地球村」で販売することで、再建費用につなげているという取り組みを社長から聞く。早速、モノづくり企業として支援できないかとコンタクトを取ったところ、バスボム(入浴剤)の型を作ってほしいと注文を受けた。

「イチゴやリンゴなど山元町の特産品をモチーフにして、ゴムに転写してバスボムに模様を付けるんです。シリコンゴムは細かな模様も再現でき、型を抜くのが簡単…といったメリットを説明させていただきました。この経験を通じ、あらためてゴムの可能性を実感できましたね」

(※3)奈良県を拠点とする「障がいのある人たちの生きる場づくり」を目指すアートプロジェクトを実施する市民団体。全国で障がいのある人のアートを社会に広める活動を続けている

 

新規顧客はゴムを使用することに興味はあるが、ゴムで何ができるのかわからない場合が多い。それがわかったことで、営業スタイルを「こんなゴム製品ができます」と単に商品の紹介をするだけでなく、「ゴムを使うことでこんなことも可能になります」という用途説明重視に変えたところ、美容雑貨メーカーから、竹炭入りのシリコンゴムマスクを作りたいという相談を受けることに。

「皮膚にくっつきやすい材料の選定、竹炭とシリコンとの配合割合、女性の顔にフィットする形状など、さまざまな条件を微調整しながら試作品を作って改良。約1年かかって完成しました」

 

ph_business_vol283_02

企画提案には、製造スタッフとの連携が欠かせない。簡単な試作品や時間がない場合は、自分で加工して作ることもある。

 

ひと通りの業務を経験し、担当業務以外に社内プロジェクトなども積極的に参加

入社3年目から、新規開拓とともに既存顧客も担当。家電量販店に液晶保護フィルムを納入する事務用品メーカーは、大きな売り上げを占める得意先。ただ、先方は複数の企業と取引し、梶栗さんが担当した時は売り上げ順位から考えると西山ケミックスは4番目か5番目だった。

「この順位を上げたいと思いながら、依頼された企業の東京本社に頻繁に訪問して問題点や課題を抱えていないかヒアリング。すると、スマートフォンなどのデジタル機器のブルーライトをカットするフィルムが作れないかという課題を聞くことができたんです」

 

他社も同様の依頼を受けていたので、完成までのスピードが勝敗の分かれ目となる。そのため、技術や製造スタッフも巻き込み、商品開発にとりかかった。

「ブルーライトカットフィルムは、茶色や黄みがかったものなら簡単なのですが、消費者はクリアタイプを求めます。どうせなら高品質のものを作ろうと、透明でブルーライトのカット率が高く、指すべりが滑らかなものを目指しました」

 

4カ月後に試作品を持参。先方から高い評価を受け採用されることに。これ以降、新商品の提案依頼など最初に声がかかるようになり、取引額も2.5倍にアップ。梶栗さん自身の営業数字も社内で1位になった。

「透明で薄く、指すべりもいいブルーライトカットフィルムという世の中になかったものを作り出せたことで、とても自信がつきました。お客さまが困っている時こそ営業のチャンス。課題を見つけたら他社を上回る早さで勝負することが、私の強みです」

 

ゴム製品、工業ゴム部品、液晶保護フィルムと経験を重ね、会社に対しての影響力も上がり売り上げ貢献もできた。現在は通常の企画営業に加え、会社全体での新規顧客開拓のフローやクライアント管理ができるシステムの作成、社内プロジェクトの遂行も主導する。

「現在、2つのプロジェクトにかかわっています。1つ目は、新しく導入した3D プリンターの活用。試作品の製作だけでなく、売り上げにつながる活用を考えています。2つ目は直販サイトプロジェクト。OEM(※4)だけでなく自社商品を持ち販売するためのマーケティングやリサーチを進めています」

(※4)Original Equipment Manufacturing。他社ブランドの製品を製造すること

 

2013年入社の新入社員と共に「顧客のファン化」を目的に企画から考えたゆるキャラ「かばきち」のPR、ブランディングにも力を入れる。

「ただ、キャラクターを作るだけでなく、会社の売り上げにつながる活動をすることが大切。お客さまに、『あ、かばきちくんの会社ね』と思ってもらえるような情報発信を心がけています。量産はどの会社でもできますが、試作品を作ったり高機能が求められる難しい製品こそ、当社の強みが発揮できる仕事。当社は中小企業だからこそ、必要なスタッフでチームを組み、協力しながら斬新な提案をスピーディーに提供できるのです。まだまだゴムの可能性はあるはず。自分の提案力や企画力を高め、会社の成長をけん引する存在でありたいと思います」

 

_ph_business_vol283_01

新入社員の教育係として、ゆるキャラのプランニングにも深くかかわった。2014年のゆるキャラグランプリ 企業キャラクター部門で500社中139位。15年は100位を目指し、PR活動に重点。

 

梶栗さんのキャリアステップ

STEP1     2011年4月 座学や製造研修を経て新規開拓の企画提案営業(入社1年目)

同期入社4人で社長自ら講師を務めたゴムについての座学研修ののち、ゴム製品の製造工程を知る現場研修を受ける。入社半年後に営業企画課に配属。展示会でブースに来訪したお客さまやホームページを見て問い合わせをいただいたお客さまなど、取引がなかった新規顧客に対し、アポイントをとって訪問し、営業活動。年2、3回参加する展示会では積極的にアテンドを行う。

STEP2     2013    年3月 竹炭を練り込んだシリコンゴムの美容マスクを製品化(入社2年目)

新規顧客への営業を行うが、思うように結果が出ない日が続く。12年6月にようやく初受注。それを機にゴムの使い方を説明する用途提案営業へと切り替え、美容雑貨メーカーから竹炭入りシリコンゴムマスクの開発依頼を受け、約1年かけて商品化。このマスクの企画から試作製作、開発について13年10月にテレビ取材を受ける。

STEP3     2013    年4月 大手重工メーカーの制御盤ゴム部品を2カ月で完成させ受注(入社3年目)

製造機械の制御盤の振動による消耗やトラブルを防ぐため、緩衝材の役割を果たすゴムパッキンを企画製造。2カ月という短期間にもかかわらず、試作品による振動テストや耐久試験も実施。試作を3回やり直し、複数のゴム材料をブレンドし化合物を加え、ゴムの特性を最大限に生かしたパッキンを完成。自社の技術力や対応力に、あらためて気づく。

STEP4     2013    年12月 新規に加え既存顧客も担当。事務用品メーカーでの売り上げを2.5倍に拡大(入社3年目)

会社の売り上げを左右するビッグクライアントの担当を引き継ぐ。ブルーライトカットの液晶保護フィルムを新開発し、顧客からの絶大な信頼を集める。また、金属加工や樹脂製造などモノづくり企業で作る「京都試作ネット(※5)」の会合に会社を代表して参加。社内プロジェクト、新入社員採用や教育など、営業や企画以外の仕事にも積極的にかかわる。

(※5)京都南部にある機械関連の中小企業10社が共同で立ち上げた試作に特化したWebサイト

 

ある日のスケジュール

8:00 出社してすぐ、メールチェック。その日のスケジジューリングも、朝のうちにイメージしておく。
9:30 社内でのミーティング。新商品のリリース、製造部との納期調整や商品仕様について打ち合わせ。
10:30 タブレットの新機種発売に伴う液晶保護フィルムの設計やサンプル製作。
12:00 会社の休憩ルームで、同僚たちと楽しくランチタイム。近くに飲食店がなく食べに行けないので、ほぼ毎日、仕出し弁当を注文している。
13:30 新規クライアントとのアポイントのため訪問。クライアントが何を求めているのか丁寧にヒアリングし、後日、製品の企画提案を行うことが多い。
15:00 帰社。製造部門で商品サンプルを自ら製作。作業方法や材料選定、製造条件など製造スタッフからアドバイスを受け、解決策を見つける。
16:30 新しく導入した3Dプリンターの活用についてのプロジェクトチームでミーティング。3Dプリンターの営業活用やプロモーションについて話し合う。
18:00 退社。試作品を作ったり提案資料の作成などで残業することもあるが、定時で帰る日も多い。

プライベート

ph_business_vol283_03

京都の機械金属関連や加工にかかわる中小企業の団体「京都試作ネット」。会社を代表して会合に参加。「若手メンバーで月1回集まって、BBQやボウリングなどのイベントを通じて交流を深めています」。

 

ph_business_vol283_04

長期休暇の時は、大学時代からの親友と旅行に出かけている。「あるアニメのミステリーツアーにハマっていて、毎年、2人で行きます」。写真は、金沢に出かけた時のもの。

 

ph_business_vol283_05

社内は20代の若手が多く、仕事を離れても一緒に遊んだりすることが多い。「冬は鍋パーティーをしたり、居酒屋での飲み会も楽しいです」。写真は、急流下りで水浸しになった時のもの。

 

取材・文/森下裕美子 撮影/村田一豊

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1839

Latest Images

Trending Articles