志望業界:化学メーカー、医薬品メーカー、化粧品メーカー、消費財メーカー、食品メーカー 説明会参加:20社(うち合同企業説明会3回) 先輩訪問:0人 エントリーシート提出:30社 面接:15社 内定:4社(化学メーカー2社、化粧品メーカー1社、消費財メーカー1社) 活動費用:約10万円(服装・カバン・靴:4万円、交通費4万円、飲食費:2万円。複数の面接がある日は、合間にカフェに入っていたため飲食費が予想以上にかかった)
「民間企業の研究職」という道を模索。複数の企業から内々定を頂くことに
子どものころから何かの仕組みを理解することが好きで、いわゆる理系男子でした。例えば、小さい時に家にあるラジカセを見ていて、これがなぜ動くのか知りたくなり分解し、親に叱られたことがあります。そして、機械以上に興味があったのが生き物でした。どうやって動いているのか? なぜ生きていられるのか?…そんなことを考えているうちに、医療の分野で研究者を目指すようになっていました。
そして大学では修士課程に進学。博士課程まで進むことも考えていましたが、民間企業も見てみようという気持ちで就活を開始。修士1年生の9月には世界的に有名な消費財メーカーのインターンシップに応募するものの、面接で落ちてしまい、結局3月までは研究に集中して取り組んでいました。
その後、就活を再開したのは修士1年の3月です。これまでに生きてきた人生はたったの二十数年間。それに理系という狭い世界で生きてきた。そう考えた僕は、できるだけ視野を狭めないように心がけ、3月の合同企業説明会では職種・業界ともに絞らず、幅広く見るようにしました。実際、金融業界などの話を聞いて「世の中にはこんな仕事もあるんだ!」と勉強になったこともあります。しかし、結局興味を持ったのは、自分の研究とほぼ同じ分野の医薬品業界、そしてそれに近い分野、つまり化学や生物学に関係しそうな、食品・化粧品・消費財・化学の各種メーカーです。そして、やはり民間企業に就職したとしても、研究をしたいと考えるようになりました。
食品メーカーは3月中にエントリーシートを出したものの、結局すべて不合格。医薬品業界の中でも比較的規模が小さい企業と、化粧品・消費財・化学の各種メーカーは、3月から4月にかけてエントリーシートを出し、5月から面接が始まりました。そして5月の中旬には、ある化学メーカーから内々定が。この企業はインフラ関係の化学資材を作っていると思っていたのですが、近年バイオテクノロジーに力を入れ始めていることを聞き、医療関係の研究をしてきた僕には、とても魅力的に感じました。さらに早めに内々定を頂いたことで精神的な安心感につながったのですが、その時点ではまだ医薬品業界が第1志望。大手の医薬品メーカーの選考はまだ始まっていなかったため、内々定承諾は待っていただくことにしました。
その後は、ライフサイエンスに力を入れている消費財メーカーにひかれることになります。研究職を目指していたので、自分は消費財メーカーにあまり適さないというイメージを持っていたのですが、実はその会社は基礎研究にすごく力を入れていることがわかり、面接でも技術者の社員と技術について話をすることができたからです。その会社も僕のことを評価してくださり、6月に内々定を頂くことに。しかし親から「今まで医療の世界を目指してきたのに、本当に消費財メーカーでいいのか?」と言われ、こちらも一旦待っていただくことになりました。ただし、「チャレンジ」「幅広い分野」といったキーワードを説明会や面接でよく耳にしていた化学メーカーや消費財メーカーに対する志望度は、かなり高まっていました。
ちょうどそのころ、やっと本命の医薬品業界の選考が始まりました。大学でもずっと医療系の研究をしてきましたし、正直、医薬品業界ならどこかには受かるだろうと思っていたものの、実際に受けてみるとすべて不合格。現実は甘くありませんでした。第1志望の医薬品業界を受けてからでないと決められないという理由で内々定承諾を2社も待っていただいていたのに…。
7月には化粧品メーカーの内々定も。化粧品に興味があったわけではありませんが、その会社は再生医療の研究をしているため志望していました。現在、大学では癌の研究をしているのですが、いつか再生医療の研究もしてみたいと思っていたのです。今の大学には再生医療の研究をしている研究室がありませんので。
数値で比較することで明らかになった志望度。しかし最後の決め手は「人」だった
修士2年の7月時点で、それまでに化学メーカー1社、消費財メーカー1社、化粧品メーカー1社の内々定を頂いたことになります。どの会社にも魅力を感じていましたので、この時点で博士課程に進学するという選択肢はなく、どこかの民間企業へ就職しようと決断。しかし、どの企業に一番入りたいのか決められませんでした。そこで僕は、内々定が出ているこれら3社、そしてまだ選考が残っていたもう1つの化学メーカー1社の合計4社を比較するための表を作りました。ただ点数をつけるだけではなく、項目ごとに比重をわけて、大事にしたい項目の点数配分が大きくなるようにして。この分析をしている時は、われながら理系っぽいな…と思いましたが(笑)。
すると、すでに内々定を持っている3社よりも、まだ選考が残っている化学メーカーの方が点数が高くなりました。なんとなくイメージでは化粧品メーカーが一番自分に合っているのかな、と思っていましたが、ちゃんと点数をつけることで意外な結果が明らかになったのです。この会社は就職情報サイトで見つけて何となくプレエントリーボタンを押しただけで、特に行きたいと思っているわけではなかったのに…。しかし、選考を受けていくと、もともとは化学材料を作っていたのですが、近年はバイオテクノロジーに積極的に投資していることがわかりました。それどころか、現在は収益の3分の1がバイオ関係という状況です。たしかにここなら自分のやりたいことができると思いました。
まだこの会社の選考を受ける前の段階で、自分の中での点数が一番高いことが明らかになっており、実際に受けたら無事に内々定を取ることができた。どう考えても迷うことはないはずだったのですが、実際は最終面接の夜に電話で内々定の連絡があった時に「一晩だけでいいので考える時間をください」と言いました。その日は眠れず、朝までどの企業に入りたいのかを考え続けました。よく考えてみると、どこに入ってもやりたい仕事はできる。最後の最後で決め手になったのは「人」でした。そこで働いている人に対して僕が感じていた印象はもちろん、社員の意思を大切にしている企業がいいと思ったのです。それが一番当てはまるのは、やはり最後に受けた化学メーカー。僕は翌日、内々定承諾の返事をしました。
就活を振り返ると、もっとほかの企業も見てみれば良かったかなという気持ちが多少あり、そういう意味ではうまく就活を進められたわけではありませんが、内定先には95パーセント納得しています。残りの5パーセントはまだ入っていないから。これを100パーセントにできるよう入社後も頑張って活躍していきたいと考えています。
低学年のときに注力していたことは?
大学3年生の時に、マサチューセッツ工科大学が主催しているiGEM(アイジェム)という大会に参加しました。これは合成生物学という分野の大会で、世界各国から190チームが参加します。遺伝子組み換え技術を使った面白い研究のプレゼンをして、その内容を競い合うのです。僕たちの研究テーマは「世界最小の恋愛劇」でした。ヒトやイヌやマウスは恋愛をしますが、これはどれくらい小さい世界まで成り立つのか。10マイクロメートルの世界で生きる細菌も恋愛をするのかを、遺伝子組み換え技術を使って確かめたわけです。
半年間のプロジェクトを経て、僕たちのチームは、8つある部門のうち「Information Processing(情報処理)部門」で最優秀賞を取ることができました。この大会に参加したこと自体がとても良い経験だったのはもちろんですが、企業でも研究職を目指していたため、この経験を話すことで良い自己PRができたと思っています。
就活スケジュール
合同企業説明会に参加
大学院に進学することをほぼ決めていたものの、念のため合同企業説明会に参加。
インターンシップに応募
世界的に有名な消費財メーカーのインターンシップに応募。しかし、1次面接で不合格に。
合同企業説明会や個別の会社説明会に参加、エントリーシートの提出
まずは広く業界や職種を知るため、合同企業説明会に参加する。そして、志望業界の医薬品メーカー(大手除く)、消費財メーカー、化学メーカー、化粧品メーカーの個別の会社説明会にも参加し、エントリーシートを提出。
面接開始、最初の内々定
3~4月にエントリーシートを提出した企業の面接が始まる。5月中旬に化学メーカー1社から内々定をもらい、それよりも志望度の低かった医薬品メーカー(大手除く)は辞退。
大手医薬品メーカーの選考開始
大手医薬品メーカーの選考が始まり、エントリーシートを提出。さらに筆記試験や面接を受ける。消費財メーカーから内々定。
内々定承諾、就活終了
化粧品メーカーから内々定。内々定をもらった3社(化学メーカー、消費財メーカー、化粧品メーカー)と、まだ選考が残っている1社(化学メーカー)を比較。まだ選考が残っている企業が一番志望度が高いことを確認。しかし、その企業から内々定が出て一晩悩むことに。最終的には最後に内々定をもらった化学メーカーの内々定を承諾して、就活を終了。
就活ファッション
スーツは持っていましたが、就活用に新調。外資系企業を受ける時は「黒スーツは印象が悪いかな?」と思っていたのですが、幸いなことに指摘を受けたことはありませんでした。ワイシャツは3枚購入。ネクタイも3本用意して、その日の気分によって替えていました。また、カバンは自立するものを選びました。
取材・文/芳野真弥 撮影/鈴木慶子