志望業界:医薬品メーカー 説明会参加:7社 先輩訪問:なし エントリーシート提出:12社 面接:3社 内定:1社 活動費用:7万1000円(交通費2万円、スーツ・靴・カバンなど3万円、外食費1万円、証明写真6000円、クリーニング代5000円。特に節約したポイントはないが、徒歩圏内で動ける範囲はなるべく電車を使わずに歩くようにしていた)
たまたま参加したインターンシップが、将来を大きく変えた
「父のように、人の役に立てる仕事がしたい」――それが、幼いころから抱いていた将来の目標でした。父親は医療従事者で、たくさんの人に頼りにされている憧れの存在です。私も同じフィールドで働きたいと思い、大学では薬学部に進学して、薬剤師を目指すようになりました。
5年になって薬局に2カ月半の研修に行った際に、初めてMR(医薬情報担当者)と呼ばれる人たちがどんな仕事をしているのか知ったんです。研修先の薬局に出入りしていたMRの方が勉強会を開いてくれたことがきっかけでした。この時点ではまだ薬剤師への志望が強く、その後自分がMRを志望することになるなんて思ってもみませんでした。周りには何人か医薬品メーカーのインターンシップに行っている友人がいたので、「なんでMRになりたいの?」と聞いて回ったりも。率直に「なんで薬剤師の資格を取って、ほかの仕事に就くんだろう?」と疑問に思ったんです。
そんな興味もあってか、9月に友人に誘われて医薬品メーカーのインターンシップの選考を受けました。選考に通って、実際に参加したのは年明けの1月です。インターンシップではお互いの第一印象のチェックに始まり、「相手に伝わりやすい話し方ができているか」「相手が伝えようとしていることをどれだけ理解できているか」という発信力・受信力を高めるワークなど、終わった後に自分自身の成長を感じられるような内容でした。何よりも、社員の方々が驚くほど優しくて、ワークに対してのフィードバックも丁寧にしてくださったんです。4日間のインターンシップが本当に楽しく、私は「MRという仕事をしてみたい」というよりも、「こんな会社で働いてみたい」と思うようになりました。これが、現在の内々定先との出合いです。
このほかにも2社のインターンシップに参加して、MRの仕事内容を深く理解することができました。同業で複数の会社のインターンシップに参加して比較することで、より正確に自分と会社の相性・適性を測ることができると思います。また、インターンシップではその内容からだけでなく、参加しているほかの学生からもたくさんの学びを得ることができるんです。もっと早く興味を持って、夏ごろからいろいろな会社のインターンシップに参加しておけばよかったな…と、少し反省しています。
MRの仕事に興味を持ち始めたものの、やはりそれまで目指していた薬剤師の道をすぐにあきらめられたわけではありません。自分の当初の目標通り、医療従事者として患者さんに直接的に貢献できて、これまで学校で学んできたことを生かせるのは、やはり薬剤師という職業です。ただ、直接的ではないですが、MRが医薬品の情報を医者と授受することで多くの患者さんを助けることにつながりますし、薬剤師よりも人と向き合う機会の多い仕事なので楽しそうだな…と感じていました。どちらかにしぼろうと思って先輩や社会人の方にいろいろと話をうかがったのですが、それでもなかなか決めきれず…。幸い、MRと病院勤務の薬剤師の就活時期にズレがあったので「決められないなら両方受けてみよう」と気持ちを切り替え、医薬品メーカーの選考を受ける決心を固めました。
落とされても落ちこまない、それは能力ではなく相性の問題
それまでまったく一般的な就活をすることを想定していなかったので、ここからの過程はかなり苦労しましたね。エントリーシートで自己PRを書いてもただの自慢話のようになってしまったり、自分が伝えたいことをうまく言葉で表現できなかったり…。インターンシップの経験から「相手に伝わらなければ意味がない」というのはひしと感じていたので、エントリーシートはとにかく先生や友達などたくさんの人に見てもらって、感想を聞くことに。そこで自分の伝えたいこととズレがあれば修正をして、また人に見せて…というのを繰り返し、文章の精度を上げていきました。
面接も始めは本当に緊張して、普段より自分をよく見せようとして空回りしてしまい、まったく思うように話せなかったんです。けれども、研究室の先輩が「落ちるのは能力を否定されているわけじゃなくて、ただ合わなかっただけだ」というアドバイスをくれたおかげで、その後は気負うことなく面接に臨めるように。常に笑顔を絶やさず、ありのままの自分で面接担当者と向き合おうと意識していました。
第1志望の企業は、初めてインターンシップに参加した企業でした。ありきたりな理由かもしれませんが、社員の皆さんが本当に温かく、選考中も会社として人材を大切にしていることが対応の随所から感じられました。インターンシップの段階から、役員の方でも、学生に対して丁寧に接してくれていて…「まだこの会社を受けるかどうかもわからない学生のことを、ここまで大事にしてくれるなんてすごい!」と感動を覚えたことが、最大の志望理由です。面接ではとにかく「この会社が本当に好きなんです!」という“会社愛”を、言葉を尽くして精一杯伝えました。会社に対する思いの強さが、私の一番の強みだと考えたからです。早い段階から就活の準備をしてきた学生に比べて、きっと私の話していた内容はつたないものだったと思います。それにもかかわらず、最終的に内々定を頂けたことで、私ははっきりと「MRとしてこの会社で一生懸命働こう」と進路を決めることができました。
就活は“楽しんだもの勝ち”だと思います。思うようにいかない時期が続くとつらく感じてしまうこともありますが、自分を評価してもらえる企業や社会人に出合えれば、きっとどこかに楽しさを感じられるはずです。自分と相性のいい会社に出合えるまで、根気強く企業探しをすることが大切なのかな…と感じています。
低学年の時に注力していたことは?
大学2年の冬から続けている、カフェでのアルバイトです。薬学部は外部との接触が少ない環境なので、私にとってアルバイトは、社会とのつながりを感じられる貴重な時間。尊敬できる仲間と先輩がいて、ちょっとした会話を楽しんでくれる常連さんがいて、本当に楽しく有意義な時間を過ごすことができました。スタッフ間であいさつ運動を始めるなど、自分たちで「もっといい店にするには?」と考えながら働けたことで、積極的に問題解決に臨む自主性を培えたような気がしています。
就活スケジュール
インターンシップの選考
友達に誘われたのをきっかけに、医薬品メーカーのインターンシップの選考を受ける。それまでMRになるつもりはなかったので、これを機に研究室の先輩などにMRとはどんな仕事なのか話を聞くようになった。
企業へのプレエントリー開始
就職情報サイトに登録。この時点では受けるかどうかは未定だったが、念のため数社の医薬品メーカーにプレエントリーをした。
インターンシップに参加
計3社の医薬品メーカーのインターンシップに参加。ここでの経験を通して、MRになるための就活をする意志を固め、自己分析などを始める。
説明会参加、エントリーシート提出
個別の会社説明会に参加しつつ、エントリーシートの作成に取りかかる。たくさんの人に読んでもらって、自分の伝えたいことが正確に伝わるかどうか確かめながら書いた。
面接スタート
面接まで進んだ会社の数は少なかったものの、3月下旬に第1志望の企業から内々定を頂き、就活を終了。
就活ファッション
説明会ではパンツスーツ、面接はスカートを着用。パンプスは出かける前に必ずキレイに磨くよう心がけた。髪型については、ポニーテールが高くなりすぎて幼く見えないように注意してセットした。
取材・文/西山武志 撮影/鈴木慶子