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教育サービス編

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学習塾・予備校市場では合併や提携の動きが活発。今後はIT活用の動きが焦点になりそう

学習塾・予備校分野では、東進ハイスクールなどを運営するナガセ、代々木ゼミナールなどを手がける学校法人高宮学園、学校法人河合塾グループ、駿台予備校で知られる学校法人駿河台学園という「4大予備校」グループに加え、市進ホールディングス、日本公文教育研究会などが大手。ベネッセホールディングスや学研ホールディングス、Z会グループなど、通信教育中心の企業も強い存在感を発揮している。一方、社会人向けサービスを中心に展開している企業としては、語学教室を展開するGABAやアルク、幅広い生涯教育講座を手がけるヒューマンホールディングスやユーキャン、資格取得分野を強化しているTACなどがある。

 

矢野経済研究所の「教育産業市場に関する調査結果2015」によると、2014年度における教育産業の市場規模は2兆5253億円で、前年度より0.6パーセント増だった。うち、「学習塾・予備校市場」「英会話・語学学校市場」「幼児英才教育市場」「企業向け研修サービス市場」「e ラーニング市場」「幼児向け英語教材市場」の6分野は拡大し、「資格取得学校市場」「資格検定試験市場」「カルチャーセンター市場」「幼児向け通信教育市場」「学生向け通信教育市場」「社会人向け通信教育市場」の6分野は縮小している。

 

全体の4割近く(9380億円)を占める学習塾・予備校市場は、前年度より0.2パーセント伸びた。ただし、好調な企業もある半面、生徒不足に悩むところも少なくない。今後は少子化が進むため、競争環境はさらに厳しくなりそうだ。こうした中、他社との合併や提携を目指す動きが活発化している。例えば12年3月には、「第一ゼミナール」を展開するウィザスが九州・沖縄で学習塾を展開する学習受験社を、ベネッセホールディングスが関西で学習塾などを手がけるアップを買収。13年8月には、学研ホールディングスが九州で学習塾を展開する全教研を買収した。営業エリアを広げて収益を拡大することと、幅広い年齢層向けのサービスを用意して「生徒の囲い込み」を目指すことが、合併・提携の主な狙いだ。また、14年8月、代々木ゼミナールが全拠点の約7割を15年以降に閉鎖することを発表したように、採算性の低い地域・事業から撤退するケースも目につく。

 

子ども向け教育市場では、ITを活用した指導方法が模索されているところ。公立の小中学校では、文部科学省が取りまとめた「教育の情報化ビジョン」に基づき、タブレット端末の導入が進行中。そこで学習塾などでも、タブレット端末を使った授業が広がりそうだ。今後は、デジタル教材やアプリの開発などでIT関連業界と協業する機会が増えるだろう。一方、インターネット経由で映像授業を流す低価格帯のサービスが登場し、既存の学習塾にとって脅威となっている。こうしたライバルに打ち勝つため、授業の魅力を高める工夫も必要だ。

 

社会人向け教育の世界でも、ITを活用した取り組みが盛んになっている。例えば、ベネッセホールディングスは15年4月、オンライン教育サービス「Udemy(ユーデミー)」を日本で提供開始した(下記ニュース参照)。「教育産業市場に関する調査結果2015」によれば、14年度における「eラーニング市場」の規模は前年度比15.7パーセントの大幅増。生涯学習に関心を持つ社会人は増えており、インターネット経由で手軽に学べるeラーニングへのニーズは、今後さらに高まると予測されている。

 

英会話・語学学校市場も堅調。社会人向け英会話サービスでは、インターネット電話などを使った安価なサービスが台頭し、既存の英会話スクールのライバルとなっている。しかし、企業のグローバル化を背景に、今後も成長が望めそうだ。また、小学校で英語教育が必修化されたことで、子ども向けの英語教育サービスも有望とみられる。

 

教育サービス業界志望者が押さえておきたいキーワード

大学入学希望者学力評価テスト(仮称)
大学入試センター試験に代わり、2020年から実施される予定。これまでのような「教科型」に加え、「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題される予定。記述式の回答方法も導入され、思考力・判断力・表現力などを中心に評価する。学習塾・予備校は、対応を迫られる見通しだ。
アクティブラーニング
ひと言で表せば「能動的な学習」。教える側が一方的に講義を行うのではなく、ディスカッションやプレゼンテーションなどを通じ、学ぶ側が能動的・主体的に参加するスタイルの授業形態。大学などで普及が進んでおり、アクティブラーニングにかかわる教材・学習システムへのニーズも高まるとみられている。
小学校における英語学習
11年4月、公立小学校における「外国語活動」が必修化された。現在は5、6年生が対象だが、20年度には3年生以上が対象となる。「読む・聞く・書く・話す」に加え、英語で議論・交渉する能力を身につけることも重視される傾向。子ども向け英語教育市場は拡大が予想される。

このニュースだけは要チェック <買収や提携の動きには注目が必要>

・Z会グループの通信教育部門である増進会出版社が、「栄光ゼミナール」などの学習塾を手がけている栄光ホールディングスを買収。通信教育大手で大学受験に強いZ会と、小中学生向け学習塾大手の栄光ゼミナールが統合されることで、幅広い年代・対象の生徒を受け入れる体制が整う。(2015年8月7日)

 

・ベネッセホールディングスが、アメリカなどで人気のオンライン教育サービス「Udemy」を手がけるユーデミー社(アメリカ)と業務提携し、日本でのサービスを開始。教えたい人が講師として映像講座を公開できるオンライン型教育プラットフォームで、日本でも社会人を中心に多くの受講者が利用するのではと期待されている。

この業界とも深いつながりが<IT企業と協力して新サービス・アプリを作る機会が増えそう>

IT(情報システム系)
タブレット端末向け教材や学習アプリの開発などでの協力が進む

ゲームソフト
携帯ゲーム機向けに学習・知育アプリを開発するケースは少なくない

出版
大手通信教育系企業にとって、自社の出版部門は収益の大きな柱

 

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー 粟田 輝氏

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慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は経営・事業戦略、各種戦略策定・実行支援や事業性評価。幅広い業界・規模の企業を対象としている。最近では、今後さらなる発展が期待されるブラジル市場に注目し活動中。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか


【エジプト編】30分くらいの遅刻は当たり前のエジプトのビジネス

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Reported by 牛くん
エジプトのカイロにある日系商社の現地事務所に勤務。現地では、赴任後に始めたゴルフや、駐在員仲間とのソフトボールがオフの楽しみ。ソフトボール仲間との飲み会も大事なリフレッシュの時間に。

訪問相手に会えない日もある

はじめまして。牛くんです。エジプトのカイロにある日系商社の現地事務所に勤務しています。

 

職場には、私を含めた数人の日本人駐在員と、20人弱のエジプト人社員がいます。うち約半分が私の部署に所属している私の部下です。まあ、部下といっても、同僚のようなものだと私は思っていますが…。顧客はエジプトの法人が主で、普段、接するカウンターパート(仕事相手)もエジプト人。ただし、日本のメーカーやコンサルタントとやりとりしたり、海外のメーカーやコンサルタントとやりとりをすることもあります。事業パートナーがヨーロッパの企業のときは、さまざまな国の取引先とかかわることになります。

 

仕事で使う言語は、基本的に英語。日本人と会話するときの日本語を除けば、仕事の場面では90パーセントは英語でしょうか。あいさつ程度のアラビア語は話せますが、それを駆使して仕事をすることはありません。ただ、エジプトのスラング(俗語)っぽいあいさつを覚えて仕事相手に使ってみたところ、最初のつかみがうまくいくようになりました。「こんな言い方を知ってるのか! 面白い奴(やつ)だな」と思ってもらえるようです。

 

エジプトの人々と仕事をしていて感じるのは、時間に関する感覚が私たち日本人とは異なることです。約束の集合時間や納期を守らないことは常で、それに対する罪悪感を持たない人も多いように思います。会議などは、だいたい30分くらい遅れて始まるのが普通。顧客のアポイントを取って訪ねて行ったときなど、10分待ってまだ来ない、もう10分待ってもまだ来ない、を繰り返し、結局、訪問相手には会えずに「明日また来てください」と言われてしまうこともあるほどです。そのときも、相手にあまり悪びれた様子はありません。思うに、カイロは道路の渋滞がひどく、30分で行かれる距離に1時間以上かかることなどザラなので、渋滞を言い訳にしやすいという背景もあるのではないかと思います。

 

顧客に何かをお願いしている場合、頼んだ期日までに頂けないことも多々ありますが、そんなときも催促の仕方には気を使います。そもそも相手方は、当社に助言やサポートをして助けてくれる立場ですから、日々、良好な友好関係を築き、嫌われないようにしなければなりません。したがって、お願いした書類がなかなかもらえない際も、「再度、電話してごめんなさい」と謝った上で、なぜ急ぎでその書類が欲しいのか、その理由を説明してお願いします。エジプトの人々は、日本の技術や日本人の謙虚な性格を評価してくれているので、自分がその評価を損ねることのないように、十分、注意を払わねばならないのです。

 

話し好き、議論好きな点も、エジプトの人々の特徴だと思います。さらに言えば、自分の主張はする一方で、人の話を聞くのが苦手な人たちだとも思います。私が話をしているのに、平気で割り込んで自分の主張だけを繰り返すようなことは日常茶飯事。一応は上司である私が話している時だって、彼らは自分が言いたいことを遠慮なくかぶせてきます。「日本人の顧客とは、キャッチボールをするつもりで会話するように」と常々言っているのですが、たとえ顧客相手でも、その癖は一向にあらたまりません。

 

割り込むのは会話だけではありません。列に割り込むのも平気です。仕事の場面に限らず、空港のチェックインカウンターやセキュリティチェックの列に割り込まれることも珍しくありません。会議中に誰かと電話で大きな声で話し始めることもよくあります。ある程度のレベルの、国際的なビジネスマナーが身についている人を別にすると、多くのエジプト人にこの傾向が見られるように思います。

 

「良かったことリスト」をもとに人事評価

こうした文化のあるエジプトで仕事をする上で、気をつけていることがいくつかあります。まずは、なるべく相手と直接話をすること。直接話をするということは、一見、二度手間のようですが、意思疎通という観点で言えば、結局、一番の近道だと考えます。日本人同士でさえ、メールの字面だけではニュアンスが伝わっていないことがあるわけですから、ましてや文化の違うエジプト人を相手に、英語でメールを送るとなると、いつ思わぬ誤解を招くとも限りません。それだけに、時間の許す限り、なるべくなら直(じか)に話して、それが無理なら電話、それも無理ならやむなくメールというのが、私のつけている優先順位です。

 

部下である彼らには、顧客へのヒアリングをしてきてもらうことが多いのですが、「こういうことを聞いてきて」というだけでは、意図が明確に伝わらないことが往々にしてあります。本人が納得していないことがこちらにもわかるので、そういうときは「なぜこの質問をする必要があるかわかってる?」と問いかけたり、必要があれば背景や理由を説明したりします。こうしたやりとりは、対面でないと、なかなか難しいことなのです。

 

また、エジプト人は、褒められるのは得意ですが、叱られるのは苦手です。そこで、できるだけ具体的に「良かった点」を褒めて、仕事への意欲を高めるようにしています。彼らは、褒められると気持ち良くなり、仕事の質が上がる傾向があるからです。そのために、私は普段からスタッフが何か良いことをするたびに、携帯やパソコンのデータベースに「誰が」「何月何日何時に」「どんな良いことをしたか」を記録しておいて、人事評価の時にフィードバックするようにしています。「あの時は、こうしてくれて助かったよ」と伝えると、彼らも「自分のことを、そこまで見てくれていたのか」と再認識して、今後も引き続き評価されるようなことをしようと奮起してくれるようです。

 

一方で、叱るときは叱ります。しかし、公の場所では怒りません。彼らは、とてもプライドが高いからです。そのため、注意をするときは、会議室に呼び出して諭すようにして言い聞かせます。自己中心的な考え方をする部下には、「あなたが私の立場だったら、どう思う?」と問いかけることで、相手の身になって考えることの大切さに気づいてもらうわけです。頭ごなしに叱るとケンカのスイッチが入ってしまい、絶対に謝らなくなってしまう彼らですが、このように一対一で愛情を持って接すれば、同じように愛情を返してくれるのです。

 

次回は、エジプトの文化や社会についてお話しします。

 

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カイロにあるハンハリーリ市場。エジプトで一番大きなスーク(アラビア語で“市場”のこと)と言われている。

 

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同じくハンハリーリ市場。このように、スークの道は入り組んでいて、初心者だとたいてい迷子になる

 

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カイロ市内のゴルフ場。エジプトには世界トップクラスのゴルフコースが複数ある。

 

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同じくゴルフ場。ゆったりとくつろげる休憩スペースも整備されている。

 

構成/日笠由紀

食品メーカー内定 北海道大学大学院 栗山拓也さん

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就活データ
志望業界:食品 説明会参加:80社(食品関係をメインに幅広く) 先輩訪問:3人(食品) エントリーシート提出:47社 面接:20社 内定:4社(食品関係3社、日用品メーカーの販売会社1社) 活動費用:約18万4500円(交通費・宿泊費0円、スーツ・靴・カバンなど2万円、外食費5万円、証明写真7500円、クリーニング代7000円、ノートパソコン7万円、Wi-Fi3万円。1日に複数の面接を入れることにより、札幌・東京間の往復回数を減らした。往復運賃は44万円かかったが、企業からの支援があり最終的に持ち出し金は0円に。宿泊先が実家だったことも節約ポイント)

「自分らしさ」のキーワードを見つけ、企業カラーとマッチング!

就活を意識し始めたのは大学院1年の6月。技術系・事務系のどちらで就活を進めるか、真剣に考え始めました。まずはインターンシップに応募。大手企業2社に応募し、食品メーカーの5日間のインターンシップに合格。インターンシップへの応募の時点で、すでに熾烈(しれつ)な選抜があることを思い知らされました。

 

インターンシップでは、さまざまな部署で働く社員の声を聞くことができて、将来を考える上で素晴らしい判断材料になりました。また、そこで知り合った就活仲間との出会いが、自分を成長させてくれたと強く感じています。将来のことを真剣に語り合える仲間ができ、刺激を受け、就活中にも連絡を取り合い、今でもいい付き合いが続いています。

 

企業の採用広報が開始となる3月までは、ひたすら自己分析に費やしました。「自分とは何か」を問い続けるために小学校からたどり、印象に残っていること、その時感じたことをワードファイルに打ち込みました。また、自分を中心軸にしてこれまで何をやってきたかをどんどん図に書いて掘り下げていくツリー型の方法はやりやすかったです。これらの自己分析から見えてきたのが、「チームワーク」「誰かのために」というワード。要するに「人とのかかわり」が自分らしさだったのです。

 

本格的に就活を始めた3月からは、銀行・商社・メーカー(食品・電機・化学・素材など)・人材サービス・コンサルティング会社など幅広く学内企業セミナーに参加して志望業界・企業を研究。その結果、たくさんの人とかかわり、毎日の生活に密着している食品業界に興味を持ちました。研究室で毎日のように研究を続け、「これって誰のため?」と、人の役に立っていることが実感できなかったジレンマのようなものが就活で明確になりました。だからこそ、成果を身近に感じられる食品関係の仕事に就きたいと思ったんです。

 

3月からの企業説明会では、自分のイメージしている企業カラーと働くうえで「実際はどうなのか?」を知りたいと思い、企業の担当者に率直に質問を投げかけるように心がけました。「ワイワイ・ガヤガヤ」「アットホーム」「体育会系」「イベント好き」など、いろいろな企業カラーがあることを知り、志望先を絞ることができて有意義でしたね。

 

3月中旬に、学内のキャリアセンター主催の公開模擬面接に参加しました。企業の担当者による面接を大集会室で公開するというもの。たくさんの人に見られる中でのやりとりはとても緊張しましたが、それ以上に面接担当者の質問内容の奥深さに驚き、これを機会にエントリーシートの内容や面接対応などの見直しを図りました。

 

面接がうまくいかなくても落ち込まず、ありのままの自分をアピール!

3月下旬から6月中旬にかけては、ひたすらエントリーシートを記入。その内容は、学生時代に力を入れたこと、自己PR、志望動機などで、研究室の先輩や友人に添削を依頼し、第三者の意見も大いに参考にしました。

 

4月から始まった面接はうまくいかず、ほとんど2次選考で落選。選考が進むにつれ、反省点が見えてきました。面接での受け答えなどを振り返り、反省と改善をワードファイルに打ち込み、対策を練りましたね。面接で緊張することはなかったのですが、それが逆に「落ち着き過ぎて、熱意が感じられない」という印象になってしまったのではと思います。それでも最後まで自分らしいスタンスで面接に向き合いました。「うそのないありのままの自分」が一番のアピールポイントだと思ったからです。

 

7月に入ってもなかなか志望会社からの朗報はなく、内々定のないまま8月を迎えることに。でもここで一喜一憂して、立ち止まってはいられない状況でした。「悔いはない。縁がなかった」と前向きに思うしかありません。そんな中、8月上旬に食品メーカーの志望会社から内々定の連絡がありました。気持ちはほとんど固まっていましたが、選考中の企業が残っていたので、「最後まで就活をやり遂げたい」と思い、就活を続行し、満足のいくかたちで就活を終えることができました。最終的には、第1志望の食品メーカーへの入社を決めました。理由は、内々定をもらった食品関係の2社と比較して、営業、商品開発、生産管理、人事、広報、海外仕入れなど、事業領域が広く、働き方の幅が広がることへの魅力を感じたからです。

将来の目標は、現時点では明確なものがありません。まずは営業という立場で量販店を担当し、「おいしさとはどういうものなのか?」を実際に見て感じ、「おいしさ」をわかりやすく伝えたいと思います。商品の魅力を多くの人に伝え、生活者目線で幅広く役立ちたいと思います。

 

就活を通して面接で感じたことは、イメージしていたよりラフだったこと。クールビズあり、私服OK!ありでした。「見た目よりも、内面をきちんと見てくれる」という印象。だからこそ、自分らしく面接に臨み、自分らしさをアピールすることが大切だと感じました。唯一、今思う反省点は、「印象に残る就活生になれなかった」ということ。もっと企業や業界のことを深く調べていたら、鋭い質問ができ、企業にインパクトを与えられたと思います。

 

低学年のときに注力していたことは?

小学校から高校までサッカー一筋だったので、大学ではいろいろなことにチャレンジしようと考えていました。大学ではギターを始め、路上ライブも経験。北海道内をドライブで回り、海外旅行にも行きました。大学院に入学した後は、プレゼンを通して、わかりやすく物事を伝える表現方法や説明能力を身につけたいと思い、研究テーマを発表するイベントに数多く参加。中でも高校生に向けてのイベントでは、動画が全国に生配信され、リアルタイムでたくさんの感想を受け取ることができて、勉強になりました。この経験は就活にも役立ちましたね。

 

就活スケジュール

大学院1年8月
5日間のインターンシップに参加
食品メーカーのインターンシップに合格し、参加。総合職と研究職の仕事内容とやりがいを知ることができ、営業に興味を持った。参加していた学生から刺激を受け、就活への意識が高まり、将来のことを話せるいい仲間ともなった。
大学1年10~2月
学内の就活セミナーに参加
幅広い業界のセミナーに積極参加。「就活とは?」を理解し、どういう働き方をしたいのか、大まかにイメージできるようになった。
大学1年1~3月
自己分析・企業研究を進める
キャリアセンター主催のセミナーに参加し、自己分析と業界研究の進め方を学んだ。自己分析により、一人で黙々と一つのことを追求するのではなく、「たくさんの人とかかわり、幅広い仕事に携わりたい」という方向性を導いた。
大学1年3月
学内企業説明会に参加
幅広い業界・多くの企業の説明会に参加し、業界・企業の雰囲気をつかむように努めた。人事の方を通して企業カラーを知ることができ、志望先を絞ることができた。公開模擬面接にも参加し、面接の難しさを知り、コツをつかむ。
大学2年4~6月
エントリーシート提出ラッシュ
エントリーシートの提出と選考時期にばらつきがあったため、エントリーシートを作成しながら面接対策をする時期が長く続いた。移動が増えたため、飛行機や電車の中で就活用に購入したノートパソコンを使ってエントリーシートを作成していた。
大学2年8月
就活終了
内々定がないまま8月を迎えたので不安があったが、初旬に志望企業の一つから内々定をもらい安堵(あんど)。選考中の企業が残っていたので、悔いの残らないよう最後まで就活をやり遂げ、すべての活動を終えた。仕事領域の幅の広さを考慮し、内定先を決定。

 

就活ファッション

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大学の入学式前に購入したストライプの黒スーツとビジネスバッグを使用。シャツは3着用意し、ネクタイは後輩と友人からプレゼントされた思い入れのある大切なネクタイ2本を使用した。深いこだわりはなく髪形もいつもと変わらずで、心がけていたのは清潔感を出すことくらい。

 

取材・文/西海磨寿美 撮影/亀谷光

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)

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今回の訪問先 【農研機構 花き研究所】
私たちが日々生きていくのに食料は欠かせません。しかし日本の食料自給率(2014年)は主食の米はカロリーベース(1人1日あたりの国産供給熱量を1人1日あたりの供給熱量で割ったもの)で98パーセントですが、小麦は13パーセント、果実は37パーセントとその大半が輸入に頼っているのが現状で、先進国の中でも最低の水準です。日本では飽食の時代と言われていますが、一転、世界に目を向けると人口急増による食糧難問題に陥っています。そこで政府も食料自給率向上に向け、さまざまな取り組みをしています。国内最大級の「食料・農業・農村」に関する研究機関、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)も、そんな国の政策の実現に貢献できるよう、食料の安定供給や安全確保、農業・農村の復興、農村環境や国土資源の保全などを支える技術開発を行っています。農研機構は2001年農林水産省の12の試験研究機関を統合し独立行政法人化。03年には生物系特定産業技術研究推進機構、06年には農業工学研究所、食品総合研究所、農業者大学校と統合します。15年4月に独立行政法人通則法が改正され、農研機構は国立研究開発法人となりました。現在、14の研究所・研究センターを設置している農研機構。今回は花き研究所を訪れました。

 

花に関するさまざまな研究を行っている花き研究所

農研機構 花き研究所は茨城県つくば市にあります。最寄り駅はつくばエクスプレスのみどりの駅、もしくはつくば駅。そこから15分ほど車に乗ると、農研機構 花き研究所の正門が見えてきます。花き研究所とは国によって設立された、日本唯一の花の研究機関です。同じ敷地内にはかんきつ類やリンゴ、ニホンナシ、モモ、クリ、カキ、ブドウなどの樹種の育種、栽培、病虫害などに関する研究を実施している果樹研究所があります。実は2001年に花き研究所が設置されるまで同敷地はすべて果樹研究所として機能していました。
最寄り駅から遠いことから、研究員は車か自転車で通勤しているそうです。

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主任研究員の湯本弘子さんに花き研究所のシゴトバを紹介してもらいました。
「花き研究所が推進している研究プロジェクトは大きく3つ。第1に生育開花機構の解明によるキクなどの主要花き(草花)の効率的計画生産技術の開発。第2は分子生物学的手法による新形質花きの創出。第3が農畜産物の品質評価・保持・向上技術の開発です。つまり栽培、育種、品質という3本柱のテーマを抱えて、研究を行っています。その中でも私が入所以来携わっているのが品質保持。現在は課題『花きの品質制御機構の解明と品質評価・保持・向上技術の開発』担当として、切り花の品質保持に関する研究を行っています。切り花が枯れたりしおれたりという老化生理を明らかにして、消費者が花を長く楽しめるようにするにはどういう処理を行えばよいのか、その処理方法を検討しているのです」(湯本さん)
また品質の中にもいろいろなテーマがあり、色や香りや機能性を対象とした研究も行われているそう。
「例えば機能性とはその花の香りによって、どんな心理的な作用をもたらすか、というような研究です。そのような研究に携わっている人の中には、心理学などの文系出身者もいます」(湯本さん)
写真は花き研究所の圃場(ほじょう:はたけ)。現在の品質保持の試験対象であるダリアの収穫をしているところ。
「老化生理に関する細かい試験をする際の試料はこの圃場で育てます。育てるといっても、毎日の世話は契約職員の方に行ってもらっています。このダリアは『黒蝶』という品種名がついているんです。今、私が触っているのは中大輪ですが、人の顔以上に巨大輪になるものも。今、すごくブライダルで人気がある花なんです。これまでは日持ちがよくないので、なかなか街の花店に出回ることはありませんでしたが、私たちの研究成果により、これから徐々に出回る機会も増えていくと思います」(湯本さん)

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恒温恒湿室です。
「どのような処理をして流通させると、より日持ちが向上するか。それを調べるためにはどんな処理剤を用いるかだけではなく、温度や湿度という環境条件もかかわってきます。またこの中には酸素濃度が変えられる装置が入っています。そこでこのような装置を使って、呼吸パターンを測定するなどして、まずは花きの生理を明らかにするんです。もちろん、品質保持に効果があると仮定される処理を施したものをこの装置に入れ、温度と湿度、酸素濃度を変えてどういう環境で出荷すれば、最も日持ちが長くなるかなどの検討をするのにも使います」(湯本さん)

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施した処理が有効に働いているかどうか、チェックしているところです。湯本さんが手に持って調べているのは小菊(手前の赤い花はバラ)。この実験室は常に室温23度湿度70パーセントに保たれているそうです。
「この部屋で処理した方法がうまく機能しているか、花や葉の状態をチェックします。品目によって流通過程が長くても耐えられるものがあります。例えばキクはその一つ。花がしおれるよりも先に葉が黄色くなるんですよ」(湯本さん)
例えばダリアの場合であれば、花部分にサイトカイニンという植物ホルモンを散布すると日持ちが3日ほど長くなるそうです。3日間日持ちが向上することで、流通過程での取り扱いがしやすくなります。
「例えばトルコギキョウの切り花はエチレン作用阻害剤で処理をすると、日持ちが向上するんです。というのもエチレンは果物の成熟を促進させるなど、植物における老化ホルモンとしての働きがあることが知られているからです。そこでダリアもエチレン作用阻害剤を試したのですが、ダリアには効果があまりありませんでした。ダリアは球根植物です。そこで同じく球根植物であるカラー(サトイモ科。花を保護する小型の葉である苞葉(ほうよう)を観賞する。ブライダルでよく用いられる)の日持ちの向上に有効であるサイトカイニンを試したところ、効果があることがわかりました。こうやっていろいろ試して、各品目にあった処理方法を探っていきます」(湯本さん)

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老化機構を解明するための手法として、ガスクロマトグラフィー(気化しやすい化合物の同定・定量に用いられる機器分析の手法)で植物体に含まれるエチレン量やCO2量などの測定を行います。写真は注射器のようなインジェクターを使って、測定したいサンプルを注入しているところ。

「エチレンは植物の老化を促進させます。このようなガスクロマトグラフィーでその量を測定することによって、花がしおれるときにエチレンがかかわっているのか明らかにします」(湯本さん)

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研究室の執務スペースです。各研究員が集中できるよう、ブースで区切られています。ブースのスペースは2畳ほどでした。
「ここで試験データをまとめたり、資料を作成したりしています。現在、担当しているプロジェクトは、地方自治体や大学の研究室の人たちで構成されているので、メンバーで打ち合わせをするときは、電話したり、外に出かけたりしています。もちろん研究所内で情報交換も積極的に行われています」(湯本さん)

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15年11月18日、「アグリビジネス創出フェア2015」が開催されました。同イベントは全国の産学の機関が有する農林水産・食品分野などの最新の研究成果を紹介したり、研究機関同士、事業者との連携を促すというもの。展示やセミナー、シンポジウムだけではなく、農林水産業およびそのほか関連産業に関する研究開発に関して優れた功績を挙げた研究者を表彰するという機会も。湯本さんは「主要花きの老化機構の解明と品質保持技術の開発」で「若手農林水産研究者表彰」を受賞しました。写真は授賞式後に行われた講演の様子です。
「研究成果の発表は国内だけではありません。海外の国際学会に参加することもあります」(湯本さん)

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ハタラクヒト 設置されて15年。女性の研究員も多く、風通しのよいシゴトバ

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引き続き湯本さんに「農研機構 花き研究所」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてうかがいました。

 

湯本さんは京都大学 農学部を卒業後、2000年4月に農林水産省に入省しました。
「実は大学卒業後、2年間、研究生として研究室に残り、キクの組織培養に関する研究に携わってました。このまま大学で研究を続けるのではなく、農業に役立つ仕事をしたいと思い、公務員の試験を受けたんです。だから研究への強い希望はありませんでした。しかし当時の人事担当者が『君は研究職の方が向いている』とアドバイスしてくれたんです。それで研究職を志望し、三重県津市にある野菜・茶業研究所に配属されました。同研究所ではそこの花き部に所属。ここで現在の研究テーマである切り花の品質保持に関する研究に携わるようになりました」

 

01年に野菜・茶業研究所をはじめとする農林水産省の試験研究機関が統合、独立行政法人化されたことと同時に、同研究所の花き部は花き研究所として独立し、現在の場所に設置されました。

 

毎日、切り花の品質に関する研究に携わっている湯本さんに、その面白さややりがいについてうかがいました。
「果樹や野菜の流通時における品質管理に関する研究は進んでいますが、これまで花はあまり手をつけられていなかったんです。しかもどんどん品種が増えていますし、流行もある。例えばトルコギキョウであれば、以前は一重の種が主流でしたが、今は大輪で八重咲きのものが人気があります。しかし同じトルコギキョウでも一重の種と八重の種では、多少ですが性質が違うんです。そうするとそれぞれに最適な日持ちのための処理方法を開発していかなければなりません。この分野は常に新しいことにチャレンジしているという面白さがありますね。最もやりがいを感じるのはいろいろな試験を行って行く中で、植物の生理特性がわかったとき。農業上の問題を解決する手がかりが見つかり、農業に貢献ができるということが何よりもうれしいことです」

 

花き研究所をはじめ、農研機構の研究所は農業と食に関する研究開発を主に行っているため、研究員のほとんどが農学部、理学部(植物を対象とした生物化学)を専攻しているそう。研究所というと大学院修了というイメージがあるかもしれませんが、湯本さんのように学部卒で活躍している人もいます。ちなみに湯本さんは研究成果をまとめて規定本数の論文を出身大学に提出し、博士号を取得したそうです。
「花き研究所はできて15年という、比較的新しい研究所です。上下の差もそれほど感じることなく、風通しはよいですね。この研究所は女性が多いのが特徴です。研究対象が花きだからというわけではないのですが、31人中10人は女性の研究者。だから女性もキャリアを描きやすいと思います」

 

研究成果を一般に公開するイベントを毎年開催

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農研機構では毎年、各研究所で一般公開を行っています。花き研究所では毎年4月に実施しており、写真はそのときの展示コーナー。このときは春の花であるカーネーションを展示。さまざまな品種を紹介するだけではなく、香りの体験コーナーも設置。来場者の人気を集めました。湯本さんをはじめとする中堅・若手研究者も参加し、来場者からの質問に答えたりするそうです。

 

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農研機構では育成した品種の紹介や、育成品種を使用した創作料理を楽しんでもらうため、毎年「食のブランドニッポンフェア」イベントを開催しています。写真は、14年に東京トラストシティカンファレンス丸の内で開催された「食のセミナー」in東京での試食会の様子。

 

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同セミナーの試食コーナーでは、サツマイモ「べにはるか」とカボチャ「ほっとけ栗たん」のポタージュスープなどが並び、人気を集めました。写真はほっとけ栗たんで作ったポタージュスープ。ほっとけ栗たんは子つるの発生が少ないため、芽先を摘み取ったり、つるを誘導したりする必要がなく、栽培に手間がかからないという品種。甘みと、ほくほくとしたおいしさが特徴だそうです。

 

農研機構にまつわる3つの数字

国内最大級の「食料・農業・農村」に関する研究機関である農研機構。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 38

2. 60パーセント

3. 6つ

 

前回(Vol.142 セントラル硝子株式会社)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美 撮影/臼田尚史

大学1年生に聞きました。誰と話している時間が長い?

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普段、生活している中で、誰と話している時間が長いですか?(複数回答)

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大学1年生に、普段の生活で、誰と話している時間が長いかを尋ねたところ、一番多かった答えが「友人」で8割を超え、36.6%の「親」、2割弱の「兄弟姉妹」などを大きく引き離した。「その他」では、「ネット上の知り合い」「Twitterのフォロワー」など、対面ではなくネット上でのチャット相手などを答える人が複数いた。

 

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バイト仲間とコイバナ(恋愛話)してる時。(話す時間が長いのは友人/経済学部/女子学生)

 

母親とニュースで報じられた時事問題について意見を交わしている時。(話す時間が長いのは親/海洋工学部/女子学生)

 

友達や話の合う人とアニメ・マンガ・ゲームなどの話をしている時。(話す時間が長いのは友人/工学部/男子学生)

 

部活の同期や先輩と。いつも内輪ネタで盛り上がる。(話す時間が長いのは友人・大学の先輩・親/社会学部/女子学生)

 

遠距離恋愛中の彼女と長電話でくだらないことを話している時間が至福です。(話す時間が長いのは恋人/工学部/男子学生)

 

親に一日の報告をする時と、ボケとツッコミに分かれて友達と絡む時。(話す時間が長いのは友人・親/文学部/女子学生)

 

東京にはまだなじめないので、地元の友人とくだらないことを話す時が一番くつろげる。(話す時間が長いのは友人/経済学部/男子学生)

 

バイト仲間と仕事の愚痴を言い合う時。(話す時間が長いのは友人/社会学部/女子学生)

 

大学の先輩たちと、プログラミングの話をしている時。(話す時間が長いのは友人・大学の先輩・親・兄弟姉妹/システム工学部/男子学生)

 

妹と、それぞれの学校であったことを話すのが楽しい。(話す時間が長いのは兄弟姉妹/栄養学部/女子学生)

 

就職関連の話をアルバイト先の先輩と話している時。(話す時間が長いのはアルバイト先の上司や同僚/理学部/男子学生)

 

趣味の合う彼氏と好きな音楽の話をしていると、とても盛り上がるし楽しいです。(話す時間が長いのは恋人/法学部/女子学生)

 

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なるほど、話す時間が長いのは、圧倒的に友人なんだね。大学から一人暮らしになる人も少ない中、親と話す人が意外と多いという印象も受けたよ。「誰かと話す」ということを、skypeや無料通話アプリでの通話、インターネット上でのチャットを含めて答える人が少なくないことも興味深かったね。それにしても、今週の担当者がボクで良かったよ。もしGだったら、彼氏や彼女との会話を楽しむ人たちをねたんで憎まれ口たたきかねないからね!

 

文/日笠由紀 イラスト/中根ゆたか

銀行内定 東北福祉大学 山崎拓馬さん

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就活データ
志望業界:銀行、ガス、ハウスメーカー 説明会参加:20社(うち合同企業説明会7回) 先輩訪問:2人(銀行2人) エントリーシート提出:17社 面接:10社 内定:1社(銀行) 活動費用:約9万5000円(交通費1万円、スーツ・靴・カバン6万円、外食費2万円、書籍代5000円。交通費は主に電車だったので安く済ませられた)

2年生の時にインターンシップに参加して、銀行の魅力を再確認

もともと、経営の勉強がしたくて今の学科を選んだこともあり、大学入学当初から銀行に興味がありました。大学2年生の2月には、1〜2年生向けに行われていた地元仙台の銀行のインターンシップに参加。4日間かけて、講義を聞いたり、金庫や営業風景を見せてもらったりしました。お札を数えることを札勘(さつかん)と言い、正しい数え方があるのですが、その体験もしました。このインターンシップに参加したことで銀行は幅広い業務をしていることがわかり、行きたいという気持ちがより強固なものに。特に魅力を感じていたのは、融資業務です。立ち上げたばかりの企業に投資をして、数年後には何億もの利益を挙げている会社になる。農業などにも投資をする。こういった仕事はとても面白そうだと感じました。

 

3年生の11月になると、学内で先輩就活生の話を聞くことができるイベントが8回くらいあり、すべての回に参加しました。就活に向けて何をすればいいのかもわかっておらず、不安を感じていたので…。ここでは、実際に先輩がどのような就活対策本を使っていたのか、会社を訪問するときにはどのようなことに気をつけた方がいいのかなど、具体的な話を聞くことができました。今振り返ってみても、この学内イベントは、自分の就活の原点になっていると思います。

 

そこで教えてもらったもう一つの有益な情報が、ハローワークの活用についてです。早速、12月にハローワークのキャリア講座に通い始め、エントリーシート、面接、説明会、マナー、業界研究、企業研究、グループディスカッションなど、ほとんど一通りの就活対策をすることができました。毎回要点をまとめた冊子を配布してくれていましたので、実際に面接を受ける前などに読み返すこともできて本当に感謝しています。それに、他大学の学生とも交流することができ、「負けたくない!」という良い意味でのモチベーションアップにも効果がありましたね。

 

そして、2月には、2年生の時とは違う銀行のインターンシップに参加。そこでは事業内容についての説明があり、やはり前回同様に札勘がありました。この銀行は、この時点で自分の中では第1志望になっていましたので、プログラムが終わってからも残って積極的に質問していました。この銀行に魅力を感じたのは、先輩社員が自分の思っていることをありのままに話してくれたからです。人間性にひかれていったのだと思います。

 

金融業界のことをより深く知るためにも、できるだけ多くのインターンシップに参加しようと思っていたのですが、日程が重なっていたため、ほかの銀行のインターンシップには参加できず。ただし、いろいろな企業を調べていくうちに、銀行以外にも興味を持った業界がありました。その一つが広告業界です。ある広告会社のインターンシップに参加したところ、厳しいフィードバックを受ける内容でしたが、3日間、自分が大切にしている考え方についてディスカッションして発表したり、社会人と学生との違いを考えたりして、とてもためになりました。

 

早めに動き出し、頑張り続けたことで得られた、第1志望の銀行からの内々定

3月の合同企業説明会は、スケジュールが合うところはすべてに参加。それも、人事の方に顔を覚えてもらえるように、毎回朝一で行って先頭に並びました。さらに、同じ会社が何回出ていても、毎回足を運んでいましたね。

 

このころ、「家」という一世一代の買い物をお客さんに提供することで、その人のライフプランに携わることができるハウスメーカーにも興味を持つようになりました。そして、いろいろな物を扱っている商社にも。しかし、いざ面接を受けてみると、全然うまくいきませんでした。ずっと第1志望だった銀行の面接では、自己分析で見えてきた自分の強みや弱みを志望動機につなげて話すことができていたのですが、ほかの業界ではちょっとでも突っ込まれたらそれ以上答えられず…。

 

このままではダメだと思い、自己分析の結果を紙に書いて、毎晩それを読んでから寝るようにしました。これで自分の中に考え方のベースができ、面接本番ではリラックスして笑顔で話ができるように。自己分析がしっかりとできていないと、業界研究をしても自分がやりたい仕事がわかりませんし、面接も対策のやりようがありません。早めに自己分析をやっておくことで、就活がスムーズに進むのではないでしょうか。

 

その後は順調に選考が進んでいったのですが、第1志望の銀行から1カ月以上合否連絡が来なかったため、これは落ちたのかもしれないと思いました。さらに、「この銀行がダメだったらほかの銀行も全部落ちるかも」「そもそも金融業界に向いていないのかな」「業界絞りすぎちゃったからほかも受けた方がいいかな」と、どんどん悪い方へ考えてしまい、一時期、ほとんど興味のない会社の説明会に足を運んでいたこともあります。もちろん、そんないい加減な気持ちで説明会に参加しても、その後の選考を受けようという気にはなれませんでしたが…。

 

そんな迷走をしていたところ、その銀行から面接通過の連絡があり、その後さらに2回の面接を受けて、無事に内々定を頂くことができました。第1志望の企業でしたので、もちろん承諾してほかはすべて辞退。最終的には、早めにインターンシップに参加し、学内の先輩就活生の話が聞けるイベントやハローワークでのキャリア講座など、できることから何でも取り組んでいたことで、良い結果に結びついたのだと思います。

 

低学年のときに注力していたことは?

大学1年の時から、デパートのお惣菜売り場でアルバイトをしていました。接客業なので、マナーやクレーム対応についての基本はそこで身につけることができましたね。それに、そのお店は仙台では有名なので、面接の時に話を盛り上げるための良いネタにもなったと思います。

 

そして、もう一つ本気で取り組んでいたのが、オープンキャンパスの企画・運営をするサークルの活動です。メンバー同士の人間関係を築いていき、入試センターとも協力し合いながら、キャンパス内を案内するためのプランを考える。そして、当日はスタッフとして高校生を誘導。ほかの大学は年に2回くらいオープンキャンパスを行うことが多いようなのですが、東北福祉大学では年に7回実施します。大変ではありましたが、友達も入試センターで働く職員の方とのつながりもでき、就活で困った時には相談に乗ってもらうこともありました。

 

就活スケジュール

大学2年2月
インターンシップに参加
銀行が実施している1〜2年生向けのインターンシップに参加。金融業界に興味があるというそれまでの漠然とした想いが、銀行で働きたいという明確なものに。
大学3年11月
先輩就活生の話を聞くイベントに参加
大学の就職キャリア支援部が主催する、先輩就活生の体験談を聞くことができるイベントにすべて参加。合計8回程度。
大学3年12月
ハローワークのキャリア講座に参加
ハローワークが実施している、面接、エントリーシート、企業分析などの対策ができる講座へ参加。講座以外でも自己分析を始める。
大学3年2月
インターンシップに参加
2年生の時に参加した時とは違う銀行のインターンシップに参加。
大学3年3月
合同説明会、個別の会社説明会
参加できる合同説明会にはすべて参加。さらに朝一で並んで、企業の人事担当者へアピールするようにしていた。3月下旬からは個別の会社説明会も開始。
大学4年4月
選考開始
銀行やガス会社などで選考が開始。
大学4年5月
新しく銀行以外の会社説明会に参加
第1志望からの銀行から1カ月以上連絡がなかったため、焦ってほかの業界の企業を見始めるが、5月の下旬に面接通過連絡が来て次の選考へ。
大学4年7月
内々定
第1志望の銀行から内々定。ほかに選考が進んでいる銀行が複数あったが、すべて辞退して就活を終える。

 

就活ファッション

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黒色と紺色の一般的なリクルートスーツを2着購入(秋用と夏用)。ネクタイは3本用意して毎日違うものを着用。志望度が高い企業の面接では、いつも決まったネクタイをしていった。シャツは6枚用意することで常にシワのないキレイなものを着て行けるように。靴は2足準備し、説明会用と面接用と分けていて、毎日磨くようにしていた。

 

取材・文/芳野真弥 撮影/佐藤修

KDDI株式会社

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おおつか・なおみ●ソリューション営業本部 官公庁営業部 3グループ 課長補佐。明治大学商学部商学科卒業。2006年4月入社。大学院への進学を考えていたが、就職活動を行う周囲の友人に刺激され、“好きなこと”を軸に自動車メーカーやIT関連業界など、約30社にエントリー。就職活動を進める中で、通信のインフラ整備への関心が高まり、株式会社パワードコムへの入社を決意。内定中にKDDI株式会社と合併し、現社に入社。

落札した瞬間の喜びを社内に持ち帰り、伝えることも営業の大切な任務だと実感

KDDI株式会社は、固定電話からスマートフォンをはじめとするモバイル通信、auWALLETなどの電子決済まで、幅広いビジネスを世界で展開している総合通信事業者。大塚さんは、2006年の入社以来、法人営業部門の一つである官公庁営業部で防衛省 航空自衛隊や日本郵政グループ(日本郵政、日本郵便、かんぽ生命保険)、独立行政法人、一般財団法人などを担当している。

 

「営業は自ら希望しました。文系出身の私は、通信事業に関する知識も資格も持っていませんでしたが、内定者時代に経験した数々のアルバイトを通じて、お客さまの声をじかに聞ける仕事に面白さを感じたからです。ジョブローテーション制度があるので、通常は3~7年に1度くらいの頻度で異動になりますが、私の場合は、先方担当者の異動が少ないことや、異動時期が入札の大切な時期と重なったこともあって、官公庁営業部で10年目を迎えています」

 

営業のミッションは、お客さまの要望をヒアリングし、モバイルサービス(auスマートフォン、タブレット端末、衛星通信)や、ネットワークサービス(固定回線、クラウド)などのKDDIサービスを組み合わせて提案すること。先方の要望や計画を実現するために、技術部隊であるSE(システムエンジニア)と打ち合わせ、入札期日までに企画提案書を仕上げてもらうよう調整。プレゼンテーションはSEで担当するケースが多いが、金額の調整や申込書の授受、落札後の社内手配、お客さまとの定例会への参加やフォローなどは営業が担当する。

 

一般企業との取引と異なり、官公庁との取引は入札に参加し、落札することで案件受注となる。官公庁の計画は3年や5年単位で動いているので、今すぐには入り込めなくても、計画見直しのタイミングで必ず提案のチャンスが巡ってくるため、営業は良好な信頼関係を築き、維持することが重要となる。

 

入社5年目から2年越しで取り組んだ独立行政法人の案件では、全国約1000拠点をつなぐネットワーク案件の5年分の総額を入札書に記載することになった。大塚さんは、自分が動かす億単位の金額の大きさに手が震え、記載金額のゼロの数を何度も確認したという。

 

「これは、自社の既存のサービスだけでは対応できず、外部の特殊なサービスも含めて提案する社内でも初となる試みでした。やったことのないことには消極的になるもの。この案件を相談した際も、社内では『できないよ』とあっさり断られてしまいました」

 

しかし、ここであきらめては入札に参加すらできない。そう考えた大塚さんは、いろいろな人に頭を下げてお願いして回ると同時に、上司にも相談し、部門のトップ同士で話を通してもらうなどして説得。入札に参加した。

 

「そこまでして落札できなければ、動いてもらった多くの人の時間を無駄にすることになってしまう。いつも入札日はゲンをかついでトンカツを食べるのですが、その日は味がわからないほど緊張していました(笑)。私が提出した金額と会社名が読み上げられ、落札が決まった瞬間は忘れられません。『やった!』という喜びよりも、肩の荷が下りた安心感の方が大きかったですね」

 

喜びが湧いてきたのは、社内の関係者に報告した時。「やったね!」という言葉に、ようやく落札した感激が込み上げてきた。

「営業としての喜びを感じるのは、落札できた瞬間やお客さまから直接『ありがとう』の言葉を頂く瞬間。その喜びを社内に持ち帰って何倍にもして伝えたいですし、それが皆のモチベーションを高める、営業としての大切な任務なのだと実感しました」

 

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技術部隊のSEにお客さまの要望を伝え、どうしたら実現できるかを打ち合わせる。営業として、先方の要望をどれだけ具体的に聞き出せるかが、提案のカギとなる。

 

お客さまのところに通う楽しさや目の前で落札が決まる感動を後輩に伝えていきたい

入社9年目となる2014年には、防衛省 航空自衛隊の入札に3回参加し、2つの案件を落札した。

「先方担当者のKDDIに対する認知度が低かったため、まずはKDDIを知ってもらうことから始めました。それまで担当してきた取引先は、前任者が築いた良好な関係を引き継いできましたが、この案件では、半年がかりでお客さまとの関係をゼロから構築したという自負があります」

 

最初に落札した案件は、基地からの映像をインターネットを経由して配信する業務。KDDIの主力サービスではなかったため、社内では入札参加に消極的だったが、大塚さんが「やったことのないことだからこそ、チャレンジしましょう」と働きかけたことで、実現した。

 

もう1つの案件は、電車内で電子広告を放映する業務。1回目の入札を落札したことで、2回目の入札前にお客さまに対して案件概要の相談をしやすくなった。この経験から、大塚さんは「取引先との関係が良好だと、仕事が広がっていく」ことを実感した。

 

大塚さんが、良好な関係づくりのために日ごろから心がけているのは、取引先の情報を頭に入れておくこと。組織や事業内容はもちろん、最新のニュースもチェックし、商談時の話題にしている。

「そうすると、先方も『自分たちのことを、いつも気にかけてくれている』と思ってくださるようです。ただし、知ったかぶりはせず、教えていただく姿勢を大切にしています。そして、何より重視しているのは、対面でお話をすること。やはり、会ってお話しする方がたくさんの情報を得られます」

 

2014年6月、サントリーホールディングスとリクルートホールディングスが発起人となって、異業種7社の営業職女性(エイジョ)による合同プロジェクト「新世代エイジョカレッジ」が始動。大塚さんはそのメンバーに選ばれ、約6カ月間、営業現場で働く同世代の女性たちと交流を重ねてきた。

 

「私自身、仕事とプライベートのどちらを優先すべきか悩んだ時期もありましたが、同じような悩みを抱えている営業系の女性たちと話したことで、気持ちが吹っ切れました。現在は、営業本部に在籍している女性5名にそこでの話を伝えるなど、エイジョをサポートしています」

 

営業系女子はすぐ辞めてしまうなど、ネガティブな印象を持たれがちだが、入社以来営業の道を歩んできた大塚さんは、「そんなことない」ということを、身をもって示していきたいと考えている。

 

「10年目となる今も、営業が天職なのかどうかはわかりませんが、お客さまのところに通う楽しさや、目の前で落札が決まる瞬間の感動があることを、後輩たちに伝えていきたいと思っています。その結果、エイジョや女性リーダーが増えていったら素晴らしいですね。KDDIでは結婚し、産休や育休を取って復職している女性がいっぱいいます。先輩がつくってくれた道を活用して、私自身も仕事を続け、エイジョをもっと増やしていきたいと思っています」

 

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オフィスは大手町にあるので、官公庁が集まる霞が関までは近い。先方担当者は内勤が多いので、その場で連絡を入れて複数部門を訪問するようにしている。

 

大塚さんのキャリアステップ

STEP1 2006年 内定者時点のアルバイトで営業に目覚める(入社1年目)

内定先がKDDIと合併したため、「採用取り消しになるのでは…」と不安になったが、内定者間で情報交換を重ね、2006年1月にKDDIから内定をもらい、ひと安心。内定者時点にさまざまなアルバイトを経験したことで、「人と触れ合う仕事に向いているな」と感じ、営業職を希望。4月から1カ月間行われた新入社員研修では、ビジネスマナーや自社サービスなどを学んだほか、3泊4日の富士山合宿では、オリエンテーリングをしながらの登山やBBQなどを経験し、同期約160人との絆を深めた。

STEP2 2006年 官公庁を中心とした営業活動をスタートし、8月に初受注(入社1年目)

5月、希望通り営業業務に就いたが、自分に身近ではない官公庁を担当することを知り、「私でいいのだろうか」と気後れする。1年違いの先輩の下で、質問や相談をしながら仕事を学んだが、言われたことをやるのが精いっぱい。自分のやる気の持って行き場がなくて悩んだが、8月の初受注が転機に。日本郵便株式会社(当時の日本郵政公社)からフリーコール(通話料金着信者払いサービス)を落札し、先方担当者から自分宛てに電話が入るようになり、営業担当としての自信につながった。

STEP3 2008年 直属ではない部署の先輩からの言葉に、自分の成長を実感(入社3年目)

1人で営業先を訪問するようになったが、先方の質問にその場で回答できず、宿題として持ち帰ることもあった。しかし、残業日と早く帰る日のメリハリをつけるなど、徐々に自分の時間をコントロールできるように。直属ではない部署の先輩からも「頑張っているね」「成長したね」と声をかけられ、自分の成長を実感。5年目には、お客さまの課題のヒアリングから入札まで、1人で対応できるようになった。

STEP4 2013年 低迷期を経験するが、新人時代を思い出して脱する(入社8年目)

7年目には、約2年かけて取り組んだ億単位の案件を落札するなど、営業として順調に成績を上げてきたが、8年目に入札の連敗を経験し、「入札に参加~落札できない~仕事が面白くなくなる」という悪循環に陥る。先輩の目に今の自分がどう映っているのかを聞いても、『大丈夫』と励まされるだけだったので、営業の若手と話をすることに。後輩の話を聞いたことで、新人時代に味わっていた営業の楽しさや一生懸命さを思い出し、低迷期から脱することができた。2015年4月、課長補佐に昇進。「女性だから昇進した」ではなく「大塚だから昇進した」と思われるよう、日々奮闘している。

 

ある日のスケジュール

9:00 出社。メールをチェック。
10:00 防衛省を訪問。省内の複数部署を回り、新しいサービスの紹介や、メールで送ってある案件についての回答をもらう。
12:00 防衛省内の食堂にて1人でランチを済ませる。
14:00 帰社。見積書の作成などを行い、次の訪問先の資料を準備する。
16:00 かんぽ生命保険を訪問。複数の部署を回って書類を渡したり、案件の検討状況についてヒアリングを行う。
18:00 帰社。案件の検討事項について上司に相談したり、日報を作成するなどのデスクワーク。
21:00 退社。仕事帰りに同僚と食事に行くことも少なくない。

プライベート

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内定者時代から仲の良かった同期と、年に1度は集まって飲む(最前列の男性2人の間が大塚さん)。「最近は既婚者が増え、家庭の事前承認が必要に(笑)。だから、早めに声をかけるのがルールです」。

 

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2012年、同期の女子会で千葉県にバーベキューに出かけたとき(立っている2人の右が大塚さん)。「数カ月おきに女子会を開催し、誰かの自宅でカードゲームを楽しむこともあります」。

 

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2012年の冬、学生時代のアルバイト仲間と岩手県にてスノーボード(1番左が大塚さん)。「入社数年目までは、毎週末のようにスノボーに行って、仕事のストレスを発散していました(笑)」。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

IT(情報システム系)編

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景気回復によって市場は堅調。「IoT」「クラウド」「ビッグデータ」などのキーワードに注目

システム開発は、顧客企業の要望をくみ取って必要な機能などを明確化する「要件定義」などの上流工程、システム設計などを手がける中流工程、プログラミングやテストなどを行う下流工程に大別できる。一般に、上流工程は中・下流工程に比べて収益性が高い。そのため、顧客企業と直接契約を結ぶ「元請け」企業は上流工程を中心に担当し、中・下流工程を「2次請け」企業に委託することが目立つ。そして2次請けは、自社で請け負いきれない業務を3次請け以下の企業に再委託する。このように、元請けから下請けまでがピラミッド型構造になっているのが、この業界の特徴だ。そこで、収益率アップのため、下請けではなく元請けを目指す企業は少なくない。一方、システムの運用・保守といった業務は安定した収益を確保しやすいため、開発よりこちらの業務を重視する企業もある。

 

国内企業は、コンピュータメーカーなどが源流の「メーカー系」、大手企業の情報システム部門が子会社化してできた「ユーザー系」、特定の親会社を持たない「独立系」に大別できる。メーカー系としては日立システムズ、富士通エフサス、NECソリューションイノベータなど、ユーザー系ではNTTデータ、野村総合研究所、日本総合研究所など、独立系ではITホールディングス、大塚商会、日本ユニシスなどが代表格。また、世界規模で見れば、IBM、ヒューレット・パッカード、アクセンチュアなどが大手として知られる。

 

経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、2014年における「情報サービス業」の売上高は10兆6328億円で、前年より3.0パーセント増だった。市場規模は1990年代中ごろから大きく成長し、2000年前後には年20パーセント程度の急激な伸びを示した。その後、リーマン・ショック(08年)に端を発する景気後退や東日本大震災(11年)などの影響を受けてマイナス成長が続いたが、12年からは3年連続で市場は成長中(下記データ参照)。景気の回復によって企業のIT投資は活発になっており、今後しばらくは右肩上がりの傾向が続くと見られている。

 

しかし、明るい面ばかりではない。気をつけておきたいのが、社内で運用してきたコンピュータシステムを、インターネットの向こうにある社外システムに置き換える「クラウド化」の拡大だ。以前の日本企業では、巨額の開発費をかけ、自社に合ったシステムをゼロから作りたいと希望するところが多かった。しかし、開発費を抑制する動きが強まったことや技術が進化したことにより、近年では安価なクラウド型のシステムを採用する企業が増えているのだ。中小企業を中心にクラウド化への移行は今後も続くとみられており、システム会社各社は対応を迫られている。ただし、大手企業や、金融業界など高度なセキュリティを要求される業界では、今後もオーダーメード型の開発案件が発生するとみられており、過度に悲観的になる必要はない。

 

今、注目されているキーワードが「IoT」。これはInternet of Thingsの略で、「モノのインターネット」と訳される。さまざまなモノをインターネットに接続することで、より高度な制御や、データの蓄積・分析を通じた改善の実施などを可能にする取り組みだ。例えば、「自動車に取り付けたセンサーで各車の位置情報を把握し、渋滞回避に役立てる」「検針員がチェックしなくても、『スマートメーター』によって毎月の電力使用量を遠隔把握する」などの仕組みが模索されている。また、「インダストリー4.0」(「第4次産業革命」とも呼ばれる)という言葉も話題。工場などに数多くのセンサーを設置し、ネットワーク経由で異常を発見するといち早く自動修理するなど、「自ら考え、効率化を図る」工場づくりが進められている。こうした新たな仕組みにはシステム開発が不可欠で、各社にとって新たな収益の柱となりそうだ。また、「ビッグデータ」(大規模なデータという意味。SNS上の書き込みを分析してマーケティングに生かす、海流や気候などのデータを分析して航空機や船の安全運行に役立てるなど、幅広い分野で活用が進んでいる)にも、引き続き注目しておきたい。

 

市場規模は3年続けて拡大中

1990年……3兆1441億円

1995年……3兆7730億円

2000年……6兆409億円

2005年……9兆7268億円

2008年……11兆2038億円

2010年……10兆1504億円

2011年……9兆8807億円

2012年……10兆1202億円

2013年……10兆3265億円

2014年……10兆6328億円

※特定サービス産業動態統計調査より「情報サービス業」の売上高を抜粋。リーマン・ショックなどの影響で、08年以降市場は縮小傾向だったが、12年以降は再びプラスに転じている。

このニュースだけは要チェック <IoTに関する動きが活発化しそうだ>

・日本IBMが日本電産と共同で、さまざまな生産設備の稼働率向上を目指す取り組みをスタート。日本IBMのビッグデータ解析技術を生かし、生産設備の小さな異常をいち早くチェックして故障が発生する前に対処する仕組みを構築するのが狙いだ。(2015年6月22日)

 

・ITやエレクトロニクスをテーマにした総合展示会「CEATEC JAPAN 2015」が開催され、13万人以上の来場者を集めた。こうしたイベントでは、IT系企業が最新の技術・サービスに関する展示を行っており、業界志望者にとっても十分に参考になるはずだ。(2015年10月7~10日)

この業界とも深いつながりが<IoT拡大で、幅広い業界と協力する可能性が>

生活家電
家電製品の分野でもIoTが進んでおり、システム開発へのニーズが増えそう

メガバンク
銀行をはじめとする金融業界では、ITを活用した新サービスの開発が進行中

陸運
物流会社の中にはIT化を進め、輸送や在庫管理の効率化を図るところが多い

 

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー 粟田 輝氏

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慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は経営・事業戦略、各種戦略策定・実行支援や事業性評価。幅広い業界・規模の企業を対象としている。最近では、今後さらなる発展が期待されるブラジル市場に注目し活動中。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか


広告会社内定 北海学園大学 久保愛薫(あいか)さん

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就活データ
志望業界:出版、旅行、航空、人材サービス、菓子業界 説明会参加:63社 先輩訪問:3人(広告2人、航空1人) エントリーシート提出:18社 面接:10社 内定:4社 活動費用:約12万6000円(交通費5万円、スーツ・靴・カバンなど3万円、外食費2万円、証明写真1万円、クリーニング代4000円、書籍代1万2000円。北海道内の就職を希望していたので、東京での就活は1度だけだった)

「楽しもう!」を就活の第一目標にして、人との出会いを楽しんだ

大学3年の1~2月に約1カ月間の語学留学を予定していたので、年内に就活の準備を進めなくてはと、多少の焦りを感じていたんです。社会人になること、働くことへのイメージができなかったので、まずは「就活を楽しもう!」と思いました。そうすれば、きっとうまくいくだろうと。いろいろな企業に行って、いろいろな人に会える! 純粋な気持ちで楽しもうと思いました。

 

インターンシップに参加することが就活準備の第一歩でした。まずは身だしなみから見直し、茶髪から黒髪へ。広告業界のインターンシップに参加して、一番の収穫は、営業という仕事のイメージがプラスへと変わったこと。ノルマがあって、ガツガツと売り込むイメージでしたが、接客業に似ている。むしろ、お客さまの求めていることをじっくりヒアリングして唯一無二のものを提案できるのであれば、接客業よりもやりがいがありそうだと思いました。

 

実際に就活を開始したころは業界を絞らずに、自分にとって魅力ある会社に就職しようと考えていました。職種にもこだわらずに何でもやりたいと思っていましたね。だからこそ、自己分析がとても大切で、就活終了までずっと取り組んでいました。自己分析にはたくさんの方法があったので、いろいろと試してみることに。その中で自分の好きなことを、「なぜ?なぜ?なぜ?」と深く掘り下げていく方法が性に合っていました。その結果見えてきたのが、「人が好き。地元・北海道が好き」という2点だったのです。

 

10月から12月にかけては、数えきれないほどの就活イベントに参加。大学の先輩が開催してくれるイベントは身近な感じがして、些細なことも気兼ねなく質問できました。お勧めするのは、グループディスカッションのセミナーです。役割があったり、発言のタイミングがあったり、とにかくコツがわかるまで何度も参加しました。いろいろな考え方に触れ、コミュニケーション力も自然と身につくので、一度は参加してみると良いと思います。イベントに参加することで就活仲間も増えていき、情報交換もするようになりました。

 

私はとても緊張するタイプなので、面接の練習はしつこいほどにたくさんしました。何度も練習していくうちに自信が持てるようになり、緊張度合いも軽減へ。質問に対して、すぐに答えようと焦ってしまいがちですが、多少の「間」があっても大丈夫。きちんと考えて自分の意見を自分の言葉で発言した方がいい結果につながると思います。自然体で面接に臨めることが大事だと感じました。

 

4月から6月の2カ月間はSPI対策に没頭。ひたすら図書館に通い、開館から昼までの午前中に集中して勉強しました。席も決めて、「こんなに勉強したのは初めて」と思えたほど。その結果、苦手意識がなくなりましたね。

 

「憧れの業界」よりも、「女性が長く働ける環境」が、決め手

就活期間中はよく新聞を読むように努めました。志望先の企業情報はもちろんですが、業界のこと、世の中の情勢など、タイムリーなニュースを押さえておくと面接では何かと役立ちます。「最近感動したことは?」「気になるニュースはありますか?」といった質問もありますので、幅広いネタを仕込んでおくと困りません。その際に感じたことは、不幸なネタよりもハッピーなネタの方が喜ばれるし、面接の場が和むということ。私は気になる記事をスクラップにして、自分の感想をまとめておいたので、面接の際に役立ちました。

 

また、人と違った視点を探すことも大切。ひと味違う視点から物事をとらえ、表現することで個性のようなものを印象づけられるからです。例えば、サービス関係の職種の場合、「お客さまの満足のため」というワードはありきたりになってしまいます。あえて「安全や安心を」とすれば、キラリと個性が光るような気がします。

 

就活が進む中、結果が出ずに落ち込んだ時期もありました。ある面接で「志望動機が甘い」「まだまだ学生気分」「この会社で何をやってくれるのかがわからない」など、手厳しい指摘を受けたんです。この日をきっかけに目が覚めた感じがしました。すぐにエントリーシートの内容や面接対策も見直し、広く浅い内容から深く掘り下げたものに改善。その成果が出たのか、第1志望群の企業から内々定を頂き、航空業界からの内々定も続きました。憧れの強かったキャビンアテンダント(CA)の内々定を頂いたことで、内定先を決めるのに非常に迷いました。地元の広告会社で営業職に就くのか、それとも大手航空会社の憧れのCAになるのか、の2択の決断が就活で一番悩んだことであり、しんどい時期だったかもしれません。

 

私は結婚してからも長く働きたいと思っていました。そこで、「5年先の自分はどうなっていたいのか?」を自問。思い描いた未来に、CAで働いている自分の姿はありませんでした。一方、地元の広告会社はインターンシップに参加していました。女性がイキイキと活躍していて、育児休暇取得率も100パーセント。ベテランの女性社員がたくさん働いている仕事現場を見て「女性が働きやすい環境」を実感できたことが大きな判断材料になりました。人材サービスにも興味があったので、求人情報関連の広告を取り扱うこの会社でキャリアを積めば、将来、キャリアアドバイザーのような仕事に就けるかもしれないとも考えたんです。長い社会人生活を見据えた時、キャリアプランの選択肢が広がる仕事だと感じて、広告会社に決めました。

 

「やった方がいい!」と言われたことをとことんやり尽くした就活に、悔いはありません。そして最終決断にも納得しています。就活の前に掲げた「楽しもう!」という目標は達成できました。

 

低学年のときに注力していたことは?

大学1年から続けてきた焼き鳥店でのアルバイトで、接客について学び、楽しさも知りました。お客さまが喜んでくれるとうれしいので、頼まれてもいないのに小さなサプライズを用意するなど、相手の立場になって考えて行動できるように。 また、学びの集大成となるゼミも全力投球できました。ゼミ仲間と一丸となって 1冊の本の翻訳に取り組んだので、チームワークのパワーを感じることができて、貴重な経験となりましたね。

 

就活スケジュール

大学3年6月
学内の就職ガイダンスに参加
ここで初めて就活の大まかな流れを知った。「来年の今ごろはどうなっているのだろう」と、少し焦りのような気持ちになった。
大学3年8月
短期のインターンシップに参加
「働く」ということが具体的にイメージできず、3日間(広告業界)と1日だけ(コンビニ業界)の2社のインターンシップに参加。ここで、「営業」という仕事に対するイメージがプラスに変わり、企業選択の視野が広がった。
大学3年10~12月
学内外の就活イベントに積極参加
数えきれないほどの就活イベントに参加。特に力を入れたのがグループディスカッションのセミナー。コツがあるので慣れておくことが得策。この時期、学外にも就活仲間ができ、いい刺激をもらえた。
大学3年2月
再びインターンシップに参加。エントリーシートの最終調整
社会人とのコミュニケーションの機会を増やしたいと思い、再びインターンシップへ。また、自己PR文などを含め、エントリーシートの内容を先輩やキャリアカウンセラーにアドバイスを求めた。
大学3年3月
合同企業説明会、個社の会社説明会に参加
業界を絞らず、あえて興味のない業界も含め、少しでも気になる企業の説明会に参加。その後、志望先を絞り込み、個社の会社説明会へ。顔を覚えてもらいたかったので、一番前の席に座り、興味のある企業の説明会には2、3度、参加した。
大学4年7月
第1志望群からの内々定
5、6月は、菓子メーカー、人材サービスなど、合わせて5社の選考にすべて落ちる。そこから志望動機の書き直しを図った。広く浅い内容だったので、深く掘り下げた内容に。その結果、第1志望群の企業から内々定を頂く。
大学4年8月
就活終了
航空関係会社からの結果が出るまで就活を続けた。航空関係3社から内々定を頂き、最後の最後まで悩んだが、地元の広告会社を就職先に選び、就活を終了する。

 

就活ファッション

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シンプルでごく普通のスタイル。目立つ要素は何ひとつなく、ただ清潔に見えるように注意した。よく歩いたせいか、すぐに靴がダメになり、3、4足購入。靴だけはきれいにしておきたかったので、後半は移動用の靴を履きかえるようにしていた。唯一こだわったのが髪形。女子はまとめ髪がほとんどだったので、埋もれたくなくてショートカットに。

 

取材・文/西海磨寿美 撮影/亀谷光

【エジプト編】9割がイスラム教徒でもアルコールには寛容

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Reported by 牛くん
エジプトのカイロにある日系商社の現地事務所に勤務。現地では、赴任後に始めたゴルフや、駐在員仲間とのソフトボールがオフの楽しみ。ソフトボール仲間との飲み会も大事なリフレッシュの時間に。

エジプトで道を渡るのはナイル川を渡るぐらい難しい

こんにちは。牛くんです。今回は、エジプトの文化や社会についてお話しします。

 

こちらに来てまず驚いたのが、車の運転マナーがひどいことでした。なぜなら、3車線の道路は、車線と車線の間を自由にすり抜ける車が多いことから5車線と化し、車線を守るドライバーなど一人もいないからです。どの車も、常にクラクションを鳴らし続けながら「そこ除(の)け、そこ除け!」と突進してくるような運転の仕方をしています。

 

接触事故を起こしている現場も頻繁に目にしますが、そんなときは、道の真ん中で当事者同士が口論を繰り広げ、その周りを野次馬が取り囲んで、その後ろは大渋滞というのが日常の風景です。赴任するずっと前にエジプトに出張したことがあるのですが、当時の駐在員に「エジプトの道を渡るのはナイル川を渡るようなもので、水(車)の流れを予測して前進しないとダメ。後退したり、躊躇(ちゅうちょ)したりした瞬間に流される(当てられる)よ」と言われたのを今でも覚えています。

 

そして、どの車も非常に車間距離を詰めてきます。歩行者に対してもそれは同じで、私も一度、道を歩いているときに、デリバリーのバイクに追い越しざまにミラーを当てられたことがあります。腕に青あざが残るほどの衝撃でしたが、バイクの運転手は、ひと言の謝罪もなく、そのまま走り去ってしまいました。

 

そんなわけなので、私はここでは一切、車の運転をしないようにしています。この環境で運転するのは、私の運転技術では無理だと思うからです。こちらでの運転は、「あうんの呼吸」で、車の流れを体得している現地の運転手に任せています。

 

外国人が利用する施設では飲酒もOK

一方、こちらで恵まれていると思うのは、お酒を飲める場所が比較的多いことです。国民の9割がイスラム教徒という国なので、お酒はNGと思われる方もいるかもしれませんが、そこは観光立国。4つ星、5つ星ホテルのレストランやバーといった観光客用の施設や、ゴルフのクラブハウスなど基本的に外国人が利用する施設では、飲酒が可能なのです。カイロでの暮らしは、日本と違って楽しみが少ない分、日本人コミュニティー内で飲み会を実施する回数が多く、加えて社内外からの出張者がエジプトに来た時は会食でも飲むので、日本にいた時よりも飲む回数は多くなりました。次回の健康診断が心配です。

 

なお、エジプトはワインやビールの発祥の地とも言われており、いずれもピラミッド建設時代からあったとされています。特にエジプトのビールは、飲みやすくておいしいですよ。国産ワインは、1000円くらいのものから5000円くらいのものまでありますが、ヨーロッパのワインと比べると、クオリティーとしてはやや残念な気がします。ヨーロッパ産ワインの方が、その分高いのですが…。

 

カイロの外国人居住区には酒店があり、デリバリーもしてくれますが、酒店で手に入るお酒はすべてエジプト産です。輸入品を扱えるのは免税店のみで、あとは海外で調達するしかありません。

 

お酒を飲む人は限られているので、日本のように酔っ払いがあたりを歩いていることはありませんが、前述のように、日本人同士の飲み会が多いので、外国人居住区内の誰かの家で夜中の2~3時まで飲むことも少なくありません。同じ外国人居住区内であれば歩いて帰り、居住区外に住んでいる人はタクシーなどで帰ります。日本人同士での飲み会は、ホテルの中の和食レストランで開かれることも多く、送別会などもそうした店で催しています。

 

なお、タクシーは、強盗に遭うリスクがあり、使わない方がいいとも言われています。私自身は、ごく最近「Uber」というタクシー配車サービスを利用するようになりました。車種や運転手の名前などが事前に確認できるため、リスクが軽減できると考えたからです。今のところ、特にトラブルもなく使えています。駐在員同士、こうした情報を交換することもよくありますね。

 

次回は、カイロでの私の生活についてお話しします。

 

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酒店の冷蔵ケースに所狭しと並ぶアルコール飲料。とりわけ国産ビールの割合が多い。

 

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自宅の近所にあるスーパーマーケット。店内は、11月初旬からすっかりクリスマス仕様に。

 

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エジプト東部、紅海に面する街エルゴナは、エジプト有数のリゾート地として有名。多くのリゾートホテルやゴルフ場がある。

 

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エジプト料理のレストラン。降雨量の少ないエジプトでも、ナイル川の水を利用するなどして、意外と野菜や果物のバリエーションは豊富だ。

 

構成/日笠由紀

株式会社エー・ピーカンパニー 代表取締役社長 米山 久さん

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1970年生まれ。東京都八王子市出身。高校卒業後、電話回線の販売、不動産、ブライダルプロデュースなどを手がけ、2001年に有限会社エー・ピーカンパニー(現在は株式会社)を設立。生産者(一次産業)、加工・流通業者(二次産業)、飲食店(三次産業)を結ぶ「食の六次産業化」に成功し、現在は「塚田農場」「四十八漁場」など200店以上の直営店舗を持つ。著書に、『ありきたりじゃない 新・外食』(商業界/税抜1429円)。

「一生を捧げる仕事」を探して、いろいろな可能性を試した

父親も祖父も公務員で、「お前も公務員になれ」と言われたことがありましたが、私は他人に何かを決められることに対して、すごく違和感を覚えるタイプでした。将来は、きちんと自分でやりたいことを見つけて、それに打ち込んでいこうと思っていたのです。高校を卒業する時も決まった形での就職活動はせずに、卒業してから自分がやりたいことを見つけるためにいろいろな経験を積み、いろいろな場所に足を運ぼうと考えていました。

 

実際、高校卒業後はフリーターをしていた時期もありましたし、自分でビジネスを始めたこともあります。ただし、何かやりたいことを実現するためには元手となるお金が必要になりますので、どうやって短期間で効率良く稼ぐかは考えていましたね。例えば、小さなオフィスを用意して、契約を取ってくることで手数料を稼げる電話回線の販売会社を経営していたことがあります。ほかにも不動産やブライダルプロデュースなど、新しい会社を作っては数年でやめるということを繰り返していました。こうしたいくつものビジネスを経験することで、「どんなものを売ったらどう利益が生まれるんだろう?」ということを自然と考えるようになっていったのです。

 

どの事業もそれなりに利益を出すことはできていましたが、本気で一生取り組みたいと思えるものはありませんでした。今振り返ってみると、20代のころは、いろいろなビジネスをしながら自分のやりたいことを探していたのだと思います。

 

お客さまの喜んでくれる顔と、業界の常識を見て、「飲食業に懸けたい!」と思えた

そんな中、30歳くらいの時に立ち上げたのが有限会社エー・ピーカンパニーです。当時、ダーツバーがはやっていたので、ダーツバーにダイニングレストランを併設したお店を作ることにしました。飲食店は、新規のお客さまに来ていただくことも大事ですが、リピートしてもらえるかどうかもとても重要です。当時の私たちは料理についても接客についてもノウハウを持っていなかったため、お客さまと一緒にスタッフもダーツをするお店にすることで楽しい時間を過ごしていただき、仲良くなったお客さまにまたご来店していただけるお店作りを目指しました。

 

そのころはまだ不動産事業も続けていて、昼間は何億円という大きなお金を動かしていましたが、あまりやりがいは感じていませんでした。一方で、夜のダーツバーでは単価500円前後のビールや食事、そしてそれに付随する接客サービス。労多くして益少なしでしたが、お客さまが喜んでくださっている光景を目の当たりにして、自分はこういうことをしたかったんだなということに気がつきました。

 

それに、飲食業界の慣習といいますか、常識と言われているようなやり方を知るうちに、まだまだ工夫の余地はありそうだなと感じました。最初から飲食をやりたいと思い、飲食の経験だけを積んできていたら、常識を破るようなことはできなかったかもしれません。これまでにさまざまな経験をしてきたからこそ、それを生かした新しい飲食業界の常識を作り出せるのではないかと思ったのです。そして私は、「食」をメインにした事業に人生を懸けようと決意しました。

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おいしい地鶏を低価格で提供するために、業界の常識を変えていった

ダーツバーを経営していた当時、よく通っていた飲食店があるのですが、そこで初めて地鶏料理を食べた時「こんなにもおいしい鶏肉があるんだ!」と感激しました。一方で、地鶏料理は1人1万円くらいかかるものだったので、私はもっと手頃な価格で地鶏料理を食べることができるお店を作りたいと思い、「わが家」という居酒屋を始めました。設定した客単価は、ほとんどの社会人がお小遣いの範囲内で出せる3500円です。

 

しかし、地鶏の仕入れ価格は高く、料理は安く提供していましたので、利益は出ませんでした。ある時、飲食業專門のコンサルタントの方にも「これは客単価を7000円から8000円くらいにしないとやっていけないよ」と言われましたが、ここで「さすがコンサルタントの先生は違うな。言われた通りにしよう!」と考えていたら、今のエー・ピーカンパニーはなかったでしょう。利益は出なかったものの、予想通り、お客さまにはとても喜んでいただいていたのは事実。ですから私は「お客さまは、お手頃な価格でおいしい地鶏を食べられるから来てくださっている。この点を妥協することなく利益を出すためにはどうすればいいだろうか?」と考えたのです。

 

そこで思いついたのが「今までは肉の問屋から地鶏を買っていたけど、その問屋に卸している生産者から直接仕入れたらコストを抑えられるのではないか?」ということです。私はすぐに、宮崎県で養鶏場を営んでいる生産者に会いに行きました。そして、「この地鶏はお客さまにとても喜ばれている」「でも価格が高いので多くの人は手軽には食べられない」といった状況を話し、問屋さんに卸している価格を聞いてみたところ、私たちが仕入れている価格の3分の1くらいであることがわかりました。当時は生産者側もどこにどうやって地鶏を売るのかで困っていましたので、生産者は今までよりも高く売れて、私たちは今までよりも安く仕入れられる価格で取引をすることになったのです。

 

そして宮崎県のブランド地鶏「地頭鶏(じとっこ)」を主軸商品にしてオープンした居酒屋が「じとっこ」です。そして私たちは、もっと高品質で、もっと低価格な地鶏を提供したいと考え、自分たちで鶏を育てる農場を作ることにしました。その農場は宮崎県日南市にある塚田という地域に作ったので「塚田農場」と名付け、居酒屋でも同じ名前を使うことにしたのです。

 

社会に貢献したいという気持ちが、大きな武器になる

生産者から直接仕入れることで原価を抑えることに成功したわけですが、単に流通の中抜きをしたわけではありません。私たちは生産者の利益も上げたかったので、お互いが納得する形で取引するための話し合いをしました。すると、エー・ピーカンパニーと取引している生産者からその話を聞きつけたほかの地域の生産者からもお問い合わせを頂くようになり、取引農家が増えていきました。また、多くの生産者は、子どもたちが都会に就職して後継者がいないことに悩んでいましたが、私たちと一緒に取り組むことで収入が増えた親の姿を見た子どもたちが地元に戻り、親の養鶏場を継ぐようになっていったのです。さらに、養鶏場の近くに加工施設を作ることで、地域に新しい雇用も生まれました。

 

こうした取り組みを重ねていくうちに、私たちは飲食店としてお客さまに手頃な価格でおいしい料理を出して喜んでもらうことや、会社が利益を得ることだけでなく、社会的にとても価値があることをしているということに気がつきました。そして、一緒に働く社員やアルバイトもそれに共感し、自主的に「生産者の想いを伝えるお店」を作っていってくれたのです。例えば、私たちのお店のメニューは、1ページ目を開くと、まず生産者の紹介が載っています。社内全体に、自然と生産者にも喜んでいただくことを考える文化が生まれ、根づいていくのを感じました。

 

これまでにいくつものビジネスを経験してきましたが、エー・ピーカンパニーを始めるまでは、会社を大きな組織にして次のステージに進もうと思える理由を見つけられませんでした。しかし、飲食業を始めてみて、お客さまに喜んでいただくだけでなく、生産者側の想いにも共感することで、ようやくその理由を見つけることができたのです。現在のエー・ピーカンパニーは、単に飲食店を経営しているわけではありません。生産者から消費者までをつなぐ「食の六次産業」を担い、その一部としてお店の運営もしていると私たちは考えています。

 

会社には、経営者のように物語を作る立場の人もいれば、それに共感する側の人もいます。人によってそれぞれ価値観は違いますので、私の考えだけを押しつけることはしませんが、私たちが取り組んでいること、そしてそこに込められた想いのどこかに共感してくれる人と一緒に、これからも「常識に縛られない会社」を作っていきたいですね。

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これから社会に出る皆さんへ

自分が何をしたいのかわからずに困っている学生さんが多いのかもしれませんね。「とりあえず大きい会社に入っておけばいい」と思ってしまいがちなのも、その表れかなと思います。ただし、まだやりたいことが見つかっていない人に、「今すぐやりたいことを見つけよう」と言っても、簡単に見つけられるものではないですよね。ですから、すぐに決められないのであれば、転職する前提で、自分がやりたいことを見つけるための就職をすればいいのではないでしょうか。

 

ただし、大事なのは「必ず成果を残してから次に行く」ということです。働いた会社できちんと成果を残さないとキャリアアップにつながりませんし、いつまでたってもやりたいことは見つからないでしょう。そう考えると、成果を出すために5年や10年もかかるような仕事よりは、例えば営業職のように2年から3年で成果を出せる仕事を選び、フットワーク軽くまた次の新しいことを始めてみるのも良いのかもしれませんね。単に転職が多いのではなく、いろいろな経験をして、それぞれの会社できちんと成果を残してきた人はとても貴重です。経営者は、その人を採用することで、それまでの経験を買いたいと思うはずですよ。

 

そして成果を出すことは、仕事をする上で一番大きな財産である「自信」につながります。自信は会社や上司が与えてくれるものではありません。どんな仕事でも、自分で成果を出すことで勝ち得るものなのです。

 

米山さんHISTORY

1989年 高校を卒業して、電話回線の販売代理店、不動産、ブライダルプロデュースなど、さまざまなビジネスを行う。
2001年 有限会社エー・ピーカンパニー(現在は株式会社)を設立し、飲食店併設のダーツバーを開店。
2004年 地鶏モデル1号店となる居酒屋 「わが家 八王子店」オープン。
2006年 宮崎県日南市で自社養鶏場の設立。
2007年 居酒屋「塚田農場」の出店を開始。
2012年 東証マザーズ上場。シンガポールに「塚田農場」をオープン。
2013年 東証1部上場。

 

愛読書は?

私はさまざまな決断をしなければならない立場にいますので、遊びも含めて、生き方における感性を磨き続けていかないといけないと思っています。私の感覚が古臭くなって、会社が時代に取り残されるようではいけませんから。世の中には、40代でかっこ悪いオジサンになってしまっている人もいれば、60代になっても自分らしくかっこ良く生きている人もいます。何歳になっても、気持ちは老いることのないように生きていきたいですね。そんなことを考えていて、最近響いたのが生和寛さんの『50歳からの男の嗜み 趣味か教養か』(講談社/税抜1800円)という本です。男の理想的な生き方について書かれていて、自分のこれからの生き方を考えながら読んでいます。

 

米山さんの愛用品

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4年間くらい使っている革の手帳で、ちょうどiPad mini(R)が入ったので、いつもiPad mini(R)と一緒に持ち歩いてます。そういう仕様ではないのですが、たまたま良いサイズでしたので(笑)。あとは手帳を開いたらすぐにメモをする紙が出てくるようにしてあります。デジタルとアナログを兼ね備えた手帳ですね。

 

取材・文/芳野真弥 撮影/鈴木慶子

大学1年生に聞きました。来年の目標は?

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来年の目標はありますか?

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年の瀬を迎えた大学1年生に、来年の目標があるかどうかを尋ねたところ、6割を超える学生が「はい」と回答し、多くの学生が来年の目標を決めていることがわかった。属性別に見ると、男子学生よりも女子学生、文系学生よりも理系学生の方が、目標を決めている学生の割合が高い傾向が見られた。

 

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テニス部に入っているので、上手になって部内で4番手までに入りたい。(保健医療学部・女子学生)

 

ドイツ語検定3級合格!(商学部・男子学生)

 

2年生にあがる時、特待生になれるように後期試験でいい点を取りたいです。(理工学部・女子学生)

 

ネットビジネスで月10万円稼ぐ。(文学部・男子学生)

 

危険物取扱者試験乙種4類の資格を取る。(システム工学部・女子学生)

 

介護福祉士を目指しているので、全科目に合格したい。(総合福祉学部・男子学生)

 

フィンランドに留学したい。(経済学部・女子学生)

 

自作ゲームを売って利益を得る!(経済学部・女子学生)

 

法曹を目指しているので、「大学2年生のうちに予備試験合格」が目標です。(法学部・男子学生)

 

所属しているよさこいチームで、「にっぽんど真ん中祭り」ファイナル進出!(応用生物科学部・女子学生)

 

体重を5キロ減らします。(文学部・女子学生)

 

マラソンで「サブスリー」(フルマラソンで、3時間を切るタイムで走ること)を目指しつつ、彼女も作りたい。(人間看護学部・男子学生)

 

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昨年同時期の調査でも、大学1年生の65.6%が目標を立てていたから、約3人に2人が来年の目標を立てているというこの結果は、例年通りと言えるのかもしれないわね。単位や資格の取得、留学やサークル活動、趣味やスモールビジネスと、バラエティ豊かなみんなの目標は、どれもまぶしいばかり! 私はと言えば、昨年の「そろそろ縁結びの神様に自分の“明確な目標”をお伝えしに行こうかなと思っていると・こ・ろ!」という自分のひとりごとを1年ぶりに目にしてガックリきていると・こ・ろ。来年こそは!

 

文/日笠由紀 イラスト/中根ゆたか

厚生労働省

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のなか・さちこ●雇用均等・児童家庭局 総務課 少子化総合対策室(併)内閣府 子ども・子育て本部 室長補佐。東京都出身。38歳。一橋大学社会学部卒業。2000年入省。現在、夫と3歳の息子と3人暮らし。第2子出産のため、2015年12月より産休取得中。

労働、保険、介護、少子化問題まで、当事者意識を持ちながら政策作りに携わっていく

「人の人生を支える政策作りに携わりたい」
それが、仕事を選ぶ上での軸だった。国家公務員だった祖父、父を持ち、政策立案に携わる大人を身近に見て育った野中さんは、子どものころから「私も国家公務員になって、人の役に立ちたい」と思い続けていたという。
「大学を選ぶ際も、国家公務員になるために幅広い知見を得たいという思いで、社会学部に進みしました。就職活動が始まった大学3年生の時には、民間企業をあまりに知らないことで逆に視野が狭くなっているのではと思い、今一度自分の考えを見直す観点からも会社訪問もしました。そこであらためて、私は国家公務員として『人が生きるための根幹となる制度設計に携わり、人生を支える仕事がしたい』と実感。中でも厚生労働省は、労働環境の整備や少子高齢化対策、女性の働き方についてなど、自分の問題としても思いを持って取り組める分野が多く、強く興味を抱きました」

 

入省すると、半年間は厚生労働省内で局の窓口を担当。他省や他局からの問い合わせを政策担当者につなぐなど、業務を通じて省内全体の仕事を覚えていった。9月からは現場研修として、兵庫県にある兵庫労働局、公共職業安定所(※1)、労働基準監督署(※2)を回り、労働者からの相談に直接耳を傾ける窓口業務も担当した。
(※1)国民に安定した雇用機会を提供するため、厚生労働省が設置する行政機関。ハローワークとも呼ばれる。
(※2)厚生労働省の出先機関。労働基準法や労働者保護法規に基づき、企業に対する監督や労災保険の給付などを行っている。

 

「ここでの半年間の経験は、『法律や制度が労働者の権利を守っている』という実感を持てた本当に貴重なものでした。驚いたのは、(労働基準)監督署に『突然、解雇されました』と相談に来る方の多さ。毎日十数人もの方がいらっしゃるんです。労働基準法には30日ルールがあり、雇用する側には、従業員に対して30日前までに解雇予告をする義務があり、もし予告がなければ、30日以上分の賃金を支払う義務があります。相談者の多くはその法律を知らないので、どういった手続きで申し立てをすべきか、やるべきことを順序立てて説明し、手当をきちんともらえるように状況を整理していきます。後日『(雇用主に)支払っていただきました。ありがとうございました』と、お電話を頂くこともあり、行政官という道の本質は、人の生活を守る法を整備し、それをきちんと伝え、制度が守られているかをチェックすることにあるのだと感じました」

 

その後、2年目には大臣官房総務課、4年目には保険局国民健康保険課、6年目には労働基準局労災補償部労災管理課と、それぞれまったく違う分野の法令を扱う部署に2年ごとに異動し、法改正から新法制定まで幅広く経験していった。保険局国民健康保険課では、三位一体改革(※3)の流れの中で法改正を担当し、それまで国民健康保険の財政負担をしていなかった都道府県にも関与してもらうよう、3カ月程度という短い期間で法改正案を準備。実際に都道府県の知事会など関係者と折衝するのは上司だったが、野中さんは理屈の整理や資料作りのため、国民健康保険の制度や財源に関するあらゆる資料を読み込んだという。
(※3)小泉純一郎内閣が掲げた、国と地方公共団体の行財政システムに関する改革。「国庫補助負担金の廃止・縮減」「税財源の移譲」「地方交付税の一体的な見直し」の3つの柱を掲げた。

 

厚生労働省では、2~3年スパンで部署異動があり、そのたびに新たな知識を一から勉強しなければならない。毎回異動後1カ月間は、担当する制度・法令に関する知識、関連する制度・法令のリサーチなど、勉強しながら仕事をしていく日々が続くという。
「6年目には、救済制度の早急な整備が求められていたアスベスト問題(※4)の『アスベスト健康被害救済新法』の制定を経験。こちらも、8月に異動が決まり12月には新法を書き上げなくてはいけないという非常に短期間での案件でした。通常、労働者が業務災害や通勤災害にあった場合は、労働者災害補償保険(労災保険)から給付が行われます。しかしこれには、病気やけがの健康被害に遭ってから2年以内に、亡くなられてから5年以内に請求しなくてはいけない時効があるんです。アスベストによる健康被害は、中皮腫(ちゅうひしゅ)など重篤(じゅうとく)なもので、潜伏期間が30年から40年と言われています。アスベストが原因で病気にかかっていることに気づかず労災請求しないまま時効が過ぎてしまった方も多く、既存の労災制度では救済できないケースがありました。さらに、中皮腫が発症すると2年で死亡に至るケースも多く、一刻も早い救済措置の制定が求められました。この問題に関しては、国の責任を問う裁判が起こるなど非常に深刻なものでしたが、新法が制定され、関係者の方に『早急にいい制度を作ってくれた』と言っていただいた際には、少しだけれども、被害に遭われた方の役に立てたのかなと少しほっとしました」
(※4)2005年にアスベスト含有製品を生産していた工場近辺で、住民の健康被害が明らかになり、社会問題に発展した。

 

入省8年目にはアメリカ・ワシントンD.C.にある企業福祉研究所に在籍し、各国の企業年金や医療保障制度について研究。帰国後には、年金局にて確定拠出年金制度(※5)の法改正を、財務省と協議しながら立案した。さらに14年目には老健局にて認知症施策推進のための新プラン策定に携わるなど、労働問題から医療保険、年金、介護問題まで、まさに人の人生にかかわるあらゆる制度を手がけてきた。

(※5)拠出された各掛金が個人ごとに区分され、掛金とその運用収益との合計額をもとに年金給付額が決まる制度

 

現在は、雇用均等・児童家庭局にて、少子化対策、安倍政権が重要施策に掲げる「夢を紡ぐ子育て支援」の省内取りまとめを担当している野中さん。自身も、3歳の息子を持つ母親として、少子化対策には当事者目線でかかわることができるという。
「少子化対策には、認可保育園(※6)の増設など子育て支援環境の充実と、長時間労働の解消など働き方改革という2つの柱があります。これは本当に早急に取り組まなければいけない課題だと、自分が母親になって痛切に思いますね。今、保育園は待機児童が多く、早いうちから預けなければ、入ることがどんどん難しくなっていく現状があります。私は2012年10月から1年半の産休・育休を取得し、子どもが1歳半になるまで自宅で育てていたので、職場復帰時期が迫ってきても、保育園に入れるめどがいっこうに立ちませんでした。『復帰できないなら、もう辞めざるを得ないのではないか』と覚悟したこともありました。無事、保育園に預けられて復帰したあとも、子どもが熱を出すと『私が働いていて気もそぞろだったから、息子にしわ寄せがいったのかな』などと、よくわからない論理で自分を責めてどんどん孤独になっていきます。そんな時、夫に愚痴でも言ったり、夫が平日の育児を代わってくれたりしたら、まだ心に余裕が出てくるのかもしれません。我が家もそうですが、配偶者が長時間労働で家族での時間が取れないと、子育てをしている者の負担感や不安感はどんどん大きくなるのだと思います。認可保育園など保育サービスを充実することと、長時間労働をやめて夜は家族との時間を取れるような社会にする制度改革については、心から必要性を感じています」
(※6)児童福祉法で定められた「保育所最低基準」を満たしている保育園

 

2015年12月から第2子出産で産休に入っている野中さんだが、少子化対策には育休復帰後もかかわりたいと意欲を燃やす。
「少子化対策は本当に奥が深い。やっていきたい政策がたくさんあるので、できることならもう一度戻ってきたいですね。さらに、挑戦したいのは地方自治体への出向。制度が実際にどのように運用され、現場にはどんな相談や悩みが寄せられているのかを自分の目で見たい。霞が関にいてはわからない現場の肌感覚を磨き続けなければ、人の役に立つ制度は作れないと思うからです」

 

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「夢を紡ぐ子育て支援」に係る厚生労働省の施策の方向性について課内メンバーと議論する。

 

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国民の皆さま、国会議員や記者に対して、政策を明瞭に説明できるよう、プレゼンテーション資料について社内で意見を交わす。

 

野中さんのキャリアステップ

STEP1  入省1年目、兵庫労働局、ハローワーク、労働基準監督署で現場研修を積む
9月から半年間、兵庫県にある兵庫労働局、ハローワーク、労働基準監督署を回り、さまざまな相談の窓口を担当。突然の解雇のほかで多かった相談は、長時間労働。過労の状況を見かねたご家族から夜中に留守電が入ることもあった。過労の指摘が多い企業に立ち入り、業務改善を促す現場も経験するなど、「法律が労働者の権利を守っている」ことを実感する毎日だった。2年目には、大臣官房総務課に配属され、国会に提出される法令の審査業務を担当。ほかの法令に抵触していないか、正しい文言で書かれているかを、既存の法令と比較しながら校正していく仕事だった。
STEP2  入省8年目、アメリカの企業福祉研究所にリサーチャーとして在籍
4年目で保険局国民健康保険課企画法令係長、6年目で労働基準局労災補償部労災管理課法規係長を経て、8年目に、「国外で視野を広げたい」と、アメリカの企業福祉研究所(EBRI)に1年間、在籍。訪問研究員(visiting researcher)として、アメリカの企業年金や世界各国の医療保険について勉強した。「国際会議に出席し、日本の国民健康保険制度について各国の研究員と話す機会もありましたが、説明するたびに『全国民が強制加入の健康保険があるなんて、素晴らしい社会保障制度だ』『そのようなセーフティーネットを見習いたい』と言われることも多くありました。それまで、日本で法改正や新法制定に携わる際は必ず先進国の事例を調べてきましたが、日本が劣っている点ばかりに目が行っていました。でも、国外に出たことで、日本の制度は世界に誇れるものであり、発信していくべき知見をたくさん持っているのではないかと思うようになりましたね」。
STEP3  入省13年目、1年半の産休・育休を取得。老健局に復帰する
老健局総務課の課長補佐として復帰。保育園のお迎えがあるため、18時には退庁できる働き方を希望し、個別業務を担当するのではなく、局全体のサポートをするポジションに就いていた。しかし、認知症対策に関する新プラン策定のニーズが高まったため、認知症対策をまとめる仕事に深くかかわることとなり、他省庁との折衝や省内の施策とりまとめを担当。新プラン策定作業と並行して、世界各国の行政官への高齢者施策説明を行うこともたびたびあった。「日本の高齢化対策は、世界的にも注目されており、『日本の介護保険制度について学びたい』とさまざまな国から行政担当が訪日します。1カ月に1回の頻度で、各国の担当者と情報共有や意見交換をしました。日本において、高齢化社会に向けた認知症施策について国際会議を開催するなど、日本の存在感を示すことができた仕事でした」。
STEP4  入省16年目、雇用均等・児童家庭局総務課にて、少子化対策を担当
安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の実現に向けて、第三の矢に位置づけられた「夢を紡ぐ子育て支援」対策の省内とりまとめを担当。少子化総合対策室の室長補佐として、厚生労働省全体の少子化対策方針について、常に説明を求められるポジションにいる。「具体的な施策を考える部署から意見を出してもらい、それを厚生労働省全体の方針として資料にまとめていきます。国会議員の先生方や記者への説明を担当するのも、少子化総合対策室の仕事。各部署と頻繁にコミュニケーションを取りながら、部署間の施策に矛盾はないか、ほかにやるべき施策はないか、進行に滞りがないかなど交通整理をしています。これから2人目を出産するワーキングマザーとして当事者意識を高く持てる分野ですので、できれば産休復帰後も携わっていきたいですね」。

 

ある一日のスケジュール

6:30 起床。家族で朝食。
8:00 夫と子どもを残して、先に家を出発。電車の中では新聞をチェック。
8:30 出勤。本日のスケジュールを確認し、前夜のメールに目を通し、こなせる案件はこなす。
9:00 資料作成。課内・局内打ち合わせ。
12:00 ランチ(省内に売りにくるお弁当屋さんで買うことが多い)。食後、すぐに仕事開始。
13:00 調べ物や資料作成。課内打ち合わせ。
15:00 所管施策に関する議員説明、省外会議への出席。
18:30 子どもを迎えに職場を出る。
19:30 食事や入浴。
20:30 子どもと遊びながら、翌日の朝食、夕食の支度。
21:30 子どの寝かしつけ。
22:00 翌日の準備。
23:00 就寝。

 

野中さんのプライベート

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2014年9月に家族3人で黒姫高原(長野県上水内郡)へ。友人家族と山小屋に宿泊し、魚釣りをしたり、とんぼを追いかけたり自然と触れ合った。

 

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子どもが生まれてから、ハロウィーンが定番行事に。この日は、仮装して保育園に登園。「子どものパンプキン姿がかわいくて、思わず食べたくなるほど!」。

 

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2015年10月に、義理の両親、義理の弟家族と伊豆高原へ旅行。大室山に登り、景色を堪能。息子は遊び相手がいっぱいいる状態にテンションが上がりっぱなしだった。

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子

証券業界内定 お茶の水女子大学大学院 原 瑠理子さん

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就活データ
志望業界:テレビ局、広告会社、IT、金融、商社、証券業界 説明会参加:18社(うち合同企業説明会2回) 先輩訪問:10人(テレビ局2人、広告2人、商社3人、シンクタンク2人、デベロッパー1人) エントリーシート提出:25社 面接:12社 内定:2社(証券業界1社、IT1社) 活動費用:約23万5000円(交通費6万円、スーツ・靴・カバンなど8万円、外食費5万円、書籍代1万5000円、証明写真2万円、郵送代など雑費1万円。就活に関する書籍やテストセンターの参考書は、なるべく先輩からもらってまかなった)

理系出身ながらマスコミ志望でスタートした就活

就活を始めたのは大学院1年の6月ごろからです。人と話すこと、人を楽しませることが好きだったので、就活当初の志望はマスコミや広告業界に向いていました。ただ、周りにいるのは研究職志望の学生ばかりだったので、「どう就活をすればいいのか」がわからなくて…。なので、まずは大学外の友人や先輩にアドバイスを聞きに行きました。そこで「インターンシップに行くといい」と言われて、積極的にインターンシップに参加するようになりました。

 

インターンシップに参加して良かった点は、就活仲間ができたことです。研究室からの推薦がある理系の就活とは違って、文系の就活は自分で必要な情報を追いかけなければなりません。学内に同じような志望の同級生がまったくいなかった私にとって、就活の情報を共有できて励まし合える仲間ができたことは、とても心強かったですね。

 

また、インターンシップの選考は面接の練習としても非常に効果的でした。学生時代の話でも受けのいいエピソードとそうではないエピソードがありましたし、言葉遣いや話し方を少し変えるだけで相手の反応が変わることもたくさんありました。面接は数を受ければ受けるほど、こうした試行錯誤を積み重ねられるので、質はどんどん上がってくるはずです。また、数を受けると質問のパターンも見えてくるので、より具体的に対策が立てられるようになります。

 

10月ごろからは先輩訪問に注力。すでに社会人になっている高校の友人のつてを頼って、業界は絞らずにいろいろな仕事をしている方にお話をうかがいました。ここで働いている友人たちの本音を聞けたことが、のちの仕事選びの大きな参考に。例えば、全国転勤のある会社に入った同級生が「入る前は地方でも大丈夫だと思っていたけど、実際に行ってみると旧知の友達がまったくいない環境はつらかった」と言っていて、とても共感しました。また、テレビや広告業界で働く友人からは「入る前の憧れやイメージが強い分、現実のギャップが激しくて悩む人が多い」という話を聞いて、自分もよく考えて進路を選ぼうという意識をあらためて持ちましたね。

 

もともと金融業界に行くつもりはなかったのですが、この先輩訪問の中で今の内定先に勤めている方にお会いする機会があって、興味を持つように。話をうかがっていると福利厚生がとても充実していて、英会話教室に通わせてくれたり、留学にも行かせてもらえたりすることに魅力を感じました。また、その先輩は「入る前と入った後でギャップがない」と言っていて。それまで先輩訪問をしてきた中では、どんな会社でも少なからず「ギャップがある」という話が出てきたので、「ギャップがない」というのはすごいなと感じ、さらに興味を持つようになったんです。

 

長く働き続けたいから、労働環境の良い会社選びを

先輩訪問で視野が広がった結果、業界はあまり絞らずに、素直に興味を持った企業を受けていこうと思うようになりました。志望を広げるとそれだけ業界研究に時間がかかるので大変ですが、幅広く見るからこそ気づけることはたくさんあります。例えば、テレビ局とシンクタンクのつながりがわかって、それぞれの志望動機を話す時に役に立ったり、広告とコンサルティング会社の関係性が理解できたから話せることがあったりと、面接で話せるネタはとても増えたなと感じています。

 

エントリーシートで困ることはあまりなかったのですが、受け始めの面接はなかなか通らなくて苦労しましたね…。当初、面接ではとにかく「相手を笑わせること、楽しく会話すること」を意識していて、それはうまくいっていたのですが、話の受けは良かったのに落とされることも結構あって。何度か受けているうちに、当たり前なのですが「学生がいいと思ってやることと、面接担当者が求めていることは、必ずしも一致しない」と気づいたんです。笑わせたり面白がらせたりすることでこちらの人柄は伝わりますが、そこに終始しちゃいけないなと。ここに気づいてからは、相手が求めていることをしっかりと想像するようになり、より企業研究に力を入れて志望動機を練るようになりました。

 

人の思考は、人との出会いによって変わるものだと思います。現在の内定先は、面接を受けていく中で、どんどん志望が上がっていった会社なんです。世界を相手に大きな物事を動かす立場にあり、競合も少なく伸び伸びと仕事ができる環境で、社員の方との相性も良くて。総合的に判断して「ここで働くのが最も自分に合っている」と感じました。また、現実的に長く働き続けることを考慮すると、住宅補助や教育制度などの福利厚生が充実していることも大きな判断基準になりましたね。テレビ局と最後まで迷っていたのですが、マスコミは中途でも採用の門戸が広がっているので、新卒でないと入りにくい方がいいかな…という思いもありました。

 

入社後は、社内システムを管理・運用する部署を志望しています。学生時代から専門的な技術をほかの人にかみ砕いて説明する作業は繰り返ししてきたので、その経験を生かして、よりよいシステムを構築していけたらと考えています。将来的には語学研修も受けて、海外での勤務も経験してみたいですね。

 

私は理系出身ながら、一般的な理系の学生が受けないような企業を数多く受けてきました。その中で感じたのは、「一見理系っぽさのない会社でも、理系学生のニーズはびっくりするほど高い」ということです。なので、理系学生の皆さんは、自分の専門性に当てはめて視野を絞ってしまう前に、ぜひ広い視野で会社選びをしてほしいなと思います。

 

低学年のときに注力していたことは?

特許庁のアルバイトや自転車サークル、中高生へのプログラミング教育など、いろいろな活動に参加しました。常に新しいことにチャレンジする気持ちは大事にしていましたね。中でも、中高生へのプログラミング教育は有意義な経験でした。小学生から高校生までの子どもたちを対象に、3日間のキャンプの中でプログラミングの基礎を教えて、最後に自分たちで作ったプログラムの発表をしてもらうんです。発表がちゃんとできるように、プログラムを修正する作業が本当に大変で…(笑)。ここで出会った子どもたちや、大学生のスタッフは面白い人が多くて、普段の生活では味わえないようなたくさんの刺激をもらいました。

 

就活スケジュール

大学院1年6~7月
インターンシップにエントリー
就活本番の面接を突破するには「場数を踏むこと」だと思い、業界にとらわれず興味のある企業のインターンシップにエントリー。選考を通して、面接における自分の強みや弱みを実感し、本選考の面接に生かした。
大学院1年8~9月
インターンシップに参加
広告、生保、機械メーカーのインターンシップに参加。実際に働いている人たちの雰囲気を知れたことで、会社選びの参考になった。
大学院10~12月
会社説明会に参加、先輩訪問
マスコミの会社説明会に参加。知り合いに紹介してもらってさまざまな企業の先輩社員に話を聞く。エントリーシートの提出に備えて、12月末に証明写真を撮った。
大学院1年1月
エントリーシート提出
一部マスコミのエントリーシート提出の締め切りが早くもやってくる。
大学院1年2月
面接スタート&インターンシップに参加
一部のテレビ局で面接がスタート。また、テレビ局の技術職インターンシップに3日間参加して、テレビの裏側の仕事を体験する。
大学院1年3月~大学院2年4月
研究と就活の両立
学会への参加で忙しくなる。研究の合間を見つけてエントリーシートを作成し、空いている日には会社説明会に参加。体力的にも精神的にも疲れがたまった時期。
大学院2年4~5月
会社説明会に参加、先輩訪問
IT企業とマスコミ数社の面接が始まる。この期間に会社説明会の参加と先輩訪問を積極的に行う。IT企業から内々定をもらい、とりあえず安心する。
大学院2年5月
テストセンター受検
必要な企業に備えてテストセンターを受検する。その都度受け直さずに済むように、ベストだという手応えを感じられるまで複数回受けた。
大学院2年6月
第1次エントリーシート締め切りラッシュ
テレビ局、メーカー、政府系金融機関、証券業界、シンクタンクのエントリーシート提出。エントリーシートはすべて通過し、政府系金融機関と証券業界は6月末から、テレビ局とシンクタンクは7月頭から、メーカーは8月から選考が始まることに。
大学院2年7月上旬
第2次エントリーシート締め切りラッシュ、面接
広告会社、商社のエントリーシートの締め切りに追われつつ、テレビ局・政府系金融・証券業界の面接が着々と進む。広告会社、商社の面接は8月頭から始まることに。
大学院2年7月下旬
内々定をもらい就活終了
第1志望の企業から内々定をもらい、ほかの選考を辞退して就活を終える。

就活ファッション

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黒無地のリクルートスーツで、家で洗えるものを選んだ。ボトムスはスカートのみ。シャツは堅苦しくないスキッパーシャツを3枚用意して着回した。靴はヒール低めで走りやすいものをチョイス。かばんは黒のトートバッグ。髪形は常にポニーテールにまとめ、明るい印象を与えるために明るい色のリップをつけた。

 

取材・文/西山武志 撮影/鈴木慶子

神戸学院大学 大谷侑路(ゆうろ)さん

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おおたに・ゆうろ●1996年兵庫県生まれ。幼稚園の時に空手、小学5年から並行してテコンドーを始める。小学6年のテコンドー全日本ジュニア選手権で2位。中学1年で3位に入賞し、ジュニア強化指定選手に。中学2年、3年では全日本ジュニア選手権連覇。高校1年から全日本選手権に挑戦し、女子49kg級で準優勝。以後、4年連続、準優勝。さらに、高校2年で女子49kg級のジュニア日本代表に選出され、アジアジュニア選手権で銅メダルを獲得。空手初段。

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全日本選手権で4年連続、準優勝。身長159㎝、体重49kgと決して恵まれた体格ではないが、10cm以上身長の高い選手にもひけをとらない技でカバー。「天才肌ではないので、練習するしかない」と努力を続け、トップ選手の仲間入りを果たした。

始めて半年ですぐに結果が出たことで、さらに上を目指したいと練習に励む

父はスポーツが好きでテレビはいつもスポーツ番組が流れていました。母はプロレスが大好き。一緒に試合を見に行ったこともあります。小さいころからスポーツが身近にある環境で育ち、体を動かすのが大好きでした。今でも覚えているのですが、幼稚園の時に友達の男の子が空手の道着を着ているのがかっこよくて、道着を着てみたいと思ったのが格闘技の世界へと足を踏み入れるきっかけでした。最初は空手から。実際にやり始めて痛さもつらさもわかり、道場に入るのが怖いと思ったこともあります。それでも一度やり始めたことを途中で投げ出すのは嫌で、道場に通い続けました。小学5年の時、自分の通っている小学校の体育館で、たまたま現在の師範に出会ったのがきっかけで、テコンドーの道へ。同じ格闘技でも、空手とはまったく違う競技で、何も考えず「やってみたい!」と空手とテコンドーの両輪で進みました。

 

テコンドーという競技は、簡単に言えばアットラチャギ(回し蹴り)やネリョチャギ(かかと落とし)、ティットラチャギ(後ろ回し蹴り)など蹴りを中心とした武道。空手とはまったく違うものです。テコンドーの世界に入って半年後、道場主催のオープン試合に出場し優勝したのですが、その時は空手の技が混じった状態。それでも、勝ったことで楽しくなり、夢中になりました。

 

小学6年の夏に、テコンドー全日本ジュニア選手権に出場。小学生は学年ごとに男女に分かれて戦うのですが、黒帯ばかりの中で白帯は私だけ。勝てる訳がないと開き直って挑戦したら準優勝。ラッキーな結果だと思いますが、これを機にもっと上を目指したいと熱が入りました。中学生以上になると、ジュニア強化指定選手や世界大会に出場する選手もいて、格段に高い技術が必要になります。それでも素早い蹴りを武器に接戦を制し、中学1年で全日本ジュニア3位。その後、2年連続で優勝しました。

 

中学生にもなるとファッションや恋愛を楽しむ人もいましたが、私にとってテコンドーを超えるほど夢中になれるものはありませんでした。はじめは「テコンドーってなに?」と言われることもありましたが、次第に周りの友人たちも理解し、応援してくれるように。空手も並行して続けていたのですが、練習時間の確保が難しくなり、どちらかに絞らなければならなくなってしまったのです。当時、空手は流派によってルールが違いオリンピック競技になっていなかったのに比べ、テコンドーは世界中でルールが統一されオリンピック種目にもなっていました。オリンピックを目指せるのであれば目指したい、世界にチャレンジしたいと高校1年で空手をやめ、そこからテコンドー1本に集中しました。

 

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テコンドーに魅せられて、世界を見据えて突き進む

高校からはジュニア代表だけでなく、シニア対象の全日本選手権にも出場。世界レベルの選手を相手に戦うことになり、勝つことが難しくなってきました。私は決して技術面ですぐれているわけではなく、女子49kg級という階級の中でも一番小さく体格面で不利ですが、それを言い訳にはできません。とにかく素早く動くことでカバーするしかないので、練習をするしかないのです。道場の練習は週3日、週末は自主練習。スピードやパワーでは勝てない男性相手にその蹴りをよける練習が中心。気づかないうちに体のあちこちにあざができていることもあり、それを心配した母から「痛くないの?」と聞かれることもありました。もちろん、痛いのですが、自分の蹴りが当たった時は何より面白いし、目指す目標があるからこそ続けられるんだと思います。

 

そして、高校1年で西日本地区大会に優勝し、全日本テコンドー選手権大会に出場。順当に勝ち上がり、決勝での対戦相手はロンドンオリンピックで7位に入賞した笠原江梨香さん。当時、笠原さんは4学年上の大学生でした。身長164㎝の長い脚からくりだされる蹴りに圧倒されながらもあと一歩及ばず、準優勝でした。翌年も、その翌年も準優勝と、優勝まであと一歩及びませんでした。

 

現在の大学に進学しようと思ったのも、テコンドーがきっかけでした。学校の先生に勧められ現在の大学のオープンキャンパスに行き、リハビリテーションの専門職を育てる現在の学部を知りました。中学の強化合宿でリハビリトレーナーを見てかっこいいと思ったこと、身体のメンテナンスのために通院していた時に理学療法士の方にお世話になったこと。それを思い出し、理学療法士について調べ、スポーツ選手だけでなく病気による機能低下、子どもから高齢者まで幅広い分野で必要だと知り、この仕事を目指そうと決めました。

 

ただ、大学に進学すると練習時間の確保が厳しくなりました。自宅から大学まで通学に1時間半かかり、必修科目も多く授業が優先に。さらに、大学にテコンドー部はありません。練習時間の少なさを補うには、練習の質で補うしかないんです。私は負けず嫌いですから、技術や体格で劣っても気持ちでは負けません。ライバルに劣っている部分があればほかでカバーし、勝てるようになりたいと思うのです。

 

これまでスランプというものはなく、練習したくない、やめたいと思ったことは一度もありません。私にとってつらいことは、勝負に負けること。負けてもつらい、悔しいと思わなくなった時は、テコンドーをやめる時なんだと思っています。そして、好きなことを続けさせてくれる両親への感謝も忘れることはありません。道着はビシッとした方がいいとアイロンをかけてくれる母、仕事が早く終わったら道場まで送り迎えしてくれる父。稽古にかかる費用、大会出場や遠征費、道着など金銭面でも負担をかけています。どんなスポーツでもそうですが、周りの理解やサポートがなければ続けられません。支えてくれる方たちに感謝の気持ちを忘れず、私にできることで恩返ししたいです。それは、全日本選手権で優勝し、世界大会でも結果を残し、夢のオリンピックに出場することだと思っています。

 

大谷さんに10の質問

Q1..好きな食べ物は?

カレーライスのカレールー。スパイシーなものから家で作るカレーまで、辛さに関係なく大好きです。

Q2.好きな異性のタイプは?

私の意見を尊重してくれる人。そして、自分というものをしっかり持っている人。

Q3.好きな音楽は?

嵐、Kinki Kidsが大好き。出演するテレビ番組はすべて録画し、時間がある時にまとめて見ます。ライブツアーも行ける限り行きます。

Q4.長所は?

負けず嫌いなところ。

Q5.好きな言葉は?

勝っておごらず、負けて腐らず。

Q6.大切にしている宝物は?

高校2年生の時、ベトナムで開催されたアジアジュニア選手権に出場し、もらった銅メダル。初めての公式国際大会で、応援に来てくれた父にメダルをかけてあげました。

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Q7.テコンドー以外の趣味は?

スポーツ観戦。野球やサッカーはもちろん、時間があれば何でも見ます。嵐、Kinki Kidsのコンサートや舞台なども見に行きます。

Q8.一番会いたい人は?

プロサッカー選手の三浦知良さん。練習を見たことがあるのですが、サッカーに対してストイックで、スポーツ選手としてだけでなく人としても本当にかっこいいと思います。

Q9.尊敬する人は?

フィギュアスケートの羽生結弦選手、阪神タイガースの藤波晋太郎選手。私よりも年齢が1歳上なだけなのに、お二人とも自分というものをしっかり持ち、ぶれることなく前に進んでいるのがメディアを通して伝わるからです。

Q10.行ってみたい場所は?

インド。中学生のころからずっと行ってみたくて、インドの文化に興味があります。

一日のスケジュール

on
6:30 起床。顔を洗って目を覚まし、ささっと身支度。
7:00 お母さんの手作りしてくれた朝食を食べる。その日によって洋食もあれば、ご飯とみそ汁という和食の日も。
7:35 自宅から電車とバスを乗り継ぎ、片道1時間半かけて通学。
9:00 大学に到着。9時30分から授業開始。
12:45 この日は午前中で講義終了。急いで自宅へ。昼食はお母さんの作ってくれたお弁当を食べるか、外食で済ませることも。
14:30 練習に出かける用意を済ませ、さらに講義の課題にとりかかる。
18:30 晩ご飯は基本、和食が多い。試合5日前から減量のため食べない日もある。
19:30 道着に着替え、練習開始。男性に囲まれながら1時間半から2時間トレーニング。
21:30 練習が終わり、片づけと着替えを済ませ電車で自宅に戻る。
22:30 家に着いたら、道着などを片づけて入浴。
23:30 お風呂から上がったら15分かけてストレッチ。特に股関節まわりの柔軟を意識。そのあと翌日の学校の準備と課題をこなす。
26:00 就寝。

off

10:00 起床。休みの日は目覚ましをかけず、自然に目が覚めるまでゆっくり寝て、日ごろの疲れをとる。
10:30 軽く食事をすませ、道着など練習に出かける用意。
11:30 自転車で、自宅からすぐの小学校へ。体育館を借りて自主トレ。
11:45 練習。毎回、10人ぐらいが参加。それぞれ自分のすべきことを中心にトレーニング。
14:00 練習を終え、帰宅。
14:30 シャワーを浴びて、遅めの昼食を済ませる。
16:00 大学の課題をしたり、何もなければテレビを見てのんびり過ごす。
18:00 入浴。ゆっくり体を温め、入浴後はいつものストレッチ。
20:00 お母さんが作ってくれた晩ご飯を家族と一緒に食べる。減量のときは、ささみなど低カロリーのものばかり。
22:00 食事を終えたあと、家族でのんびり。何もなければ早めに就寝。

 

取材・文/森下裕美子 撮影/笹木 淳


人材サービス編

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景気回復により人材需要が増加。グローバル化を目指し、海外企業の買収などが活発に

人材サービス業界は、企業に人材を派遣する「人材派遣サービス」、人材を求める企業と転職・再就職を希望する人を引き合わせる「人材紹介サービス」、企業からまとまった仕事を請け負う「業務請負・アウトソーシング」の3つに大別できる。また、求人サイトの運営を手がける企業も、この業界の一角と言えるだろう。

 

人材サービスを総合的に手がける企業としては、リクルートホールディングス、テンプホールディングス、パソナグループが3強。また、IT・電子機器・化学業界などでの「技術者派遣」を中心に手がけるメイテック、工場の生産ラインなどの「製造派遣」に強いワールドホールディングスなど、専門分野で強みを発揮する企業もある。一方、アデコ(スイス)、マンパワー(米国)、ランスタッド(オランダ)などの外資系企業も日本に進出しており、シェア拡大を目指している。

 

厚生労働省の「平成25年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」によると、2013年度の派遣労働者数は251.5万人。前年度(245.1万人)より2.6パーセント増え、リーマン・ショックが起きた08年以降続いていた減少傾向にようやく歯止めがかかった。いわゆる「アベノミクス」によって景気が回復傾向となり、企業の人材需要が伸びていることが背景にある。また、15年9月に「改正労働者派遣法」(下記キーワード参照)が施行されたことも大きい。この法律によって企業側が派遣社員を活用しやすくなり、人材サービス会社にとって追い風となっている。なお、この業界は景気や法規制の動きに大きな影響を受けやすい。そのため、関連ニュースにはぜひ注意を払っておこう。

 

海外でビジネスを展開する日本企業が増えているため、人材サービス企業でもグローバル化の動きを強めている。リクルートホールディングスは15年1月、オーストラリアの人材派遣会社チャンドラー・マクロード社とピープルバンク社の買収を発表、続く4月には、米国の人材派遣会社アテロ社の買収を発表するなど、世界市場における存在感を高めているところ。また、テンプホールディングス、パソナグループなども海外展開を加速しており(下記ニュース参照)、海外への取り組みには引き続き注目が必要だ。

 

「平成25年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」によれば、人材派遣サービスを手がけている国内企業は7万5000社程度。この業界は、中小企業が多いのが特徴だ。しかし、テンプホールディングスが13年4月にインテリジェンスホールディングスを買収したように、他社との統合・再編を進めることで経営力強化を目指すケースも増えるだろう。

 

特定の業界に絞ったサービスを提供する取り組みも活発だ。このところ目立つのが、「農業」を手がける動き。例えばパソナグループは、農業を担う人材の確保・育成を目指した人材サービス「パソナ農援隊」を提供。また、リクルートホールディングス傘下のリクルートジョブズも、新規就農希望者向けイベント「新・農業人フェア」を開催している。そして、50代後半から60代くらいまでの「シニア人材」を中小企業などに紹介するサービスも、今後の拡大が見込めそうな分野と見られている。

 

人材サービス業界志望者が知っておきたいキーワード

改正労働者派遣法
正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」。2015年9月30日に施行された。従来は、企業が一つの仕事を派遣社員に任せる場合、最長で3年という期限が設けられていた。ところが改正後は、人が入れ替われば同じ仕事をずっと派遣社員に任せられることが可能になり、企業としては派遣社員を活用しやすくなった。
専門26業務
労働者派遣法で定められた、専門性の高い業務を指す。ソフトウェア開発、秘書、アナウンサーなどが該当し、以前はこれら26業務だけは、3年を超えても派遣社員に任せ続けることができた。しかし、労働者派遣法の改正後は26業務以外の仕事でも、「任せる人が入れ替わる」「労働組合の意見を聞く」などの条件を満たせば、3年の期限が撤廃された。一方、26業種については、同一人物を一つの職場に長期間派遣することが不可能となり、これを懸念する声もある。
キャリア形成支援制度
改正労働者派遣法により、派遣会社には、派遣社員がキャリア形成を目指す際の支援が義務づけられるようになった。派遣社員にとってはスキルアップをしやすい環境が整うと期待できる半面、派遣会社にとってはコスト増につながる恐れもある。
有効求人倍率
「有効求人倍率」とは、公共職業安定所(ハローワーク)で扱った求人数を求職者数で割ったもの。例えば、求人数が120件で求職者数が100人の場合、有効求人倍率は1.2倍となる。景気が良くなるほど求人数が増え、求人倍率は高くなるのが普通。リーマン・ショック後から低迷を続けていたが、14年11月、6年ぶりに有効求人倍率は1倍の大台を回復した。

このニュースだけは要チェック <大手各社は海外展開を加速>

・パソナグループのパソナテックベトナムが、ベトナムで労働者派遣ライセンスを取得し、人材派遣サービスを開始すると発表。ベトナムに進出している日系企業に対し、営業職やエンジニアなどを派遣する。これまで手がけてきた人材紹介や採用コンサルティングと組み合わせ、より総合的な人材サービスを展開していく予定。(2015年9月11日)

 

・テンプホールディングスが、シンガポールの人材サービス会社であるキャピタ社の株式を取得し、子会社化すると発表。テンプホールディングスは15年7月にもベトナム大手人材サービス会社の株式取得を発表しており、東南アジアでのビジネスを強化している。(2015年8月25日)

この業界とも深いつながりが<さまざまな業界に人材を送り込んでいる>

自動車
景気回復により国内の自動車生産台数は堅調。人材需要も引き続き旺盛だ

IT(情報システム系)
ソフトウェア開発エンジニアなどの「技術者派遣」はニーズが順調に拡大中

ポータルサイト・SNS
求人サイト市場が急拡大。求職者を取り込むため、SNSなどと協力する機会も増えそう

 

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー 吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

旅行会社内定 東北学院大学 佐川 栞さん

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就活データ
志望業界:旅行会社、百貨店、化粧品メーカーなど 説明会参加:32社(うち合同企業説明会9回) 先輩訪問:3人(旅行会社1人、百貨店1人、化粧品メーカー1人) エントリーシート提出:20社 面接:7社 内定:3社(旅行会社2社、百貨店1社) 活動費用:約14万円(交通費10万円、外食費3万円、証明写真7000円、郵送費などの雑費3000円。できるだけ同じ日に面接や説明会の予定を入れることで、交通費を節約するようにした)

就活が解禁になる3月までに、しっかりと準備をした

大学3年生の夏。周りの就活生はインターンシップに参加し始めていましたが、私はまだやりたいことが明確になっていなかったため、企業と会うよりも自分で就活準備を進めていくことを選択しました。まず最初に手を付けたのは、SPIの勉強。サークルの先輩から、「SPIはしっかりと対策しておいた方がいいよ」とアドバイスを受けていたからです。問題で聞かれている内容は中学や高校で習ったこともあるのですが、忘れていることが多くて意外と苦戦しました。そのため、最初は解説が詳しくて、速く解くための方法も書かれている問題集を何度もこなし、ある程度できるようになってから、さらにもう一冊、別の問題集を購入。就活が始まる3月には、ある程度の問題を把握していました。

 

企業については、まだよくわからなかったので、一つ上の先輩が使っているリクナビなどの就職情報サイトを見て、どのような企業があり、具体的にどんな仕事をしているのかを調べるようにしていました。当時、なんとなく思っていたのは、「裏方の仕事ではなく、人と直接接する仕事がしたいな」ということ。アルバイトで飲食店の接客をしていたので、誰かと直接かかわることで感謝される喜びを知っていたというのが大きかったのだと思います。特に営業は、直接人とかかわれそうでいいなと感じていましたが、これだけでは絞り切れないので、まずは広く企業を見ようと思いました。

 

そして欠かせないのが自己分析です。インターネットで自己分析のやり方を調べて、例えば、自分の幼少期から今までの出来事と性格を書き出しました。また、リクナビの「SPI性格診断」など、アンケートのように選択肢を選ぶことで性格や適職の診断結果が出てくるWebサイトのサービスもいくつか試してみました。そして、特に今でもやって良かったと思うのは、他己分析です。ゼミの先輩や、いつも一緒にいる友達、合計10人くらいに、私の良いところと悪いところを教えてもらうことに。これをやったおかげで、「負けず嫌いで、きちんと自分の主張をする」「突っ走って、周りが見えなくなる」といった、自分ではまったく気づいていなかった自分の特徴を認識することができたのです。この他己分析は就活に役立ったのはもちろんですが、今後の人生のことを考えてみても、この時知ることができて良かったなと思います。協力してくれた人たちには、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

後悔はしたくない!リスクを取って追い求めた第一志望の企業からの内々定

そして準備万端の状態で、3月の就活解禁日を迎えることに。仙台では、3月1日から5日まで連続で合同企業説明会が開催されていましたので、すべてに足を運びました。東京の合同企業説明会にも1回だけ参加。東京での就職も視野に入れていたので、念のため見ておきたかったのと、自分が気になっている企業が出ていたからです。その企業は仙台での合同企業説明会にも出展していて、そこでも話を聞いていたのですが、何度も説明会に参加することで顔を覚えてもらおうと思って。個別の企業説明会も、何度も参加することで自分の存在をアピールしていました。

 

当時気になっていたのは、旅行会社、化粧品メーカー、そして百貨店です。旅行会社が第1志望になったのは、もともと旅行が好きだったからというのもありますが、旅行の提案、添乗員、イベント企画など幅広い仕事をしていて、入社後にいろいろな可能性があると感じたから。率直に、すごく楽しそうだなと思いました。化粧品メーカーを志望したのは、女性を美しくして生活まで変えることができる素敵な仕事だと思ったから。そして百貨店にひかれたのは、格安のショッピングモールが増えている状況の中で、幅広い客層に良質な商品を提供できるという魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいと思ったからです。

 

どの企業でも、職種は法人営業を志望していました。就活が始まる前は、「法人営業は大変そう」という漠然としたイメージしか持っていなかったのですが、4月くらいに父親と就活について話をした時に、法人営業は多くの人を巻き込んで仕事ができること、影響力が大きいこと、新しいつながりができやすいことなどを教えてもらい、自分は個人向けの営業よりも法人営業の方がやりがいを感じられそうかなと思って。それまでは法人営業の魅力に気づいていなかったんですね。

 

選考で最も苦労したのはエントリーシートです。きれいな字で書くこと、簡潔にわかりやすくまとめること、そしてほかのエントリーシートに埋もれてしまわないよう目立たせることを意識。エントリーシートさえ通ってしまえば、その後の面接はスムーズに進んでいきました。

 

そして6月に第2志望の旅行会社から内々定が出ました。この企業よりももっと行きたい別の旅行会社がある。でもそこからはまだ内々定をもらっていない。そんな状況でしたが、返事はすぐにしなければならず、「今すぐ第2志望の企業の内々定を承諾する」もしくは、「まだ内々定を取れるかどうかわからない第1志望の企業の選考に懸ける」という選択を迫られました。

 

ここで「第1志望の企業から内々定をもらえるかどうかはわからないから、第2志望の内々定を承諾する」という選択をしたら、絶対に後悔するだろう。そう考えた私は、その第2志望の旅行会社の内々定を辞退し、第1志望の会社から内々定をもらえるよう、頑張れるだけ頑張ろうと決心しました。

 

結果、8月に無事、第1志望の旅行会社から内々定を頂くことができ、納得の結果で就活を終えることができました。この会社では海外に行けるチャンスがあるものの、今の英語力ではかないそうもないため、今度は海外で働くという自分の希望を実現するために、引き続き努力していきたいと思っています。

 

低学年のときに注力していたことは?

とくにかく全力で大学生活を楽しもう。そう考えていた私は、大学1年の時に100人くらいのメンバーがいる球技サークルに所属し、毎週バスケットボールとバレーボールをして、学内の球技大会にも出場していました。また、学祭ではお店を出して、仲間と一緒に盛り上げていました。ただし、遊びを全力でやる一方で、授業はまじめに参加。テスト前もしっかりと勉強して、メリハリのある生活を送れるよう心がけていました。家でゴロゴロしたり暇な時間ができてしまったりするのは好きではないので、とにかくいろんな活動をして思い出を作っていましたね。おかげで就活で「大学生活で頑張ったこと」「今までやってきたこと」などを聞かれた時に、話す内容がなくて困るということはありませんでした。

 

就活スケジュール

大学3年8月
SPIの勉強開始。また、字をきれいに書く練習をする

SPIの問題集を2冊購入し、できるようになるまで何度も解いた。また、手書きのエントリーシートや履歴書の印象を良くするために、字をきれいに書くことを意識するようになった。
大学3年1月
自己分析

幼少期からこれまでの出来事を書き出し、自分の性格を分析する。さらに、友人や先輩に「私の良いところ」と「悪いところ」を聞くことで、自分では気がつかなかった特徴を知ることができた。
大学3年3月
合同企業説明会に参加

事前に当日見たい企業をチェックしておき、時間が余ったら興味のない業界の企業も見るようにしていた。東京で開催された合同企業説明会も、一度だけ参加。
大学4年4月
個別の会社説明会、エントリーシートの提出

会社説明会に参加することで、人事以外の社員とも会うことができ、具体的な会社の特徴がわかるように。エントリーシートはわかりやすく、かつ目立つように工夫。この時期、父親と就活の話をしたことで、法人営業に興味を持つようになる。
大学4年5月
第1志望の旅行会社の社員面談

社員と1対1で面談をする機会が3回あった。これによって「この会社はしっかりと自分のことを見てくれている」と感じるように。
大学4年6月
第2志望の旅行会社と百貨店から内々定

百貨店は返事を待ってくれるとのことだったが、第2志望の旅行会社はすぐに返事をする必要があったため辞退。まだ選考が終わっていない、第1志望の旅行会社にかけることに。
大学4年8月
第1志望の旅行会社から内々定

無事、第1志望の旅行会社から内々定をもらうことができ、納得の就活終了。

 

就活ファッション

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ベーシックな黒のスーツを選び、夏の暑い日もジャケットを着用。白シャツは4枚用意し、特に面接の時は一番上までボタンを留めることができるシャツを選択。また、ストッキングは伝線したときのために予備を用意し、靴は必ず手入れをするなど、身だしなみには気をつけた。

取材・文/芳野真弥 撮影/佐藤 修

セキュリティ(警備業)編

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「2強」がITを駆使した新警備手法を開発。「見守り」など新事業に乗り出す動きも活発だ

下で紹介しているように、警備業務は「1号業務」から「4号業務」までの4つに大別できる。このうち、需要が最も大きいのが、オフィスや商業施設、住宅などの警備を行う1号業務だ。これらはさらに、「常駐警備」と「機械警備」とに分けられる。

 

警察庁生活安全局生活安全企画課の「平成26年における警備業の概況」によると、2014年末の警備業者数は9240。前年(9133)より1.2パーセント増、10年(9010)より2.6パーセント増で、警備業界における企業数は増加傾向だ。うち、警備員数100人未満の警備業者は8351で、全体の90.4パーセントを占めている。これらの小規模な事業者は常駐警備を手がけているケースが多く、労働集約型産業(資本や機械ではなく、人間の労働力に対する依存度が高い産業のこと)の側面が大きい。そのため、利益率は低く、他社との価格競争に陥りがちだ。

 

警備業者のうち、機械警備業者数は662で、前年(689)より3.9パーセント減、10年(750)より11.7パーセントも減った。機械警備の分野では、機器やインフラの整備に多額の資金が必要。そのため、経営基盤の強化を目指した合従連衡が進んでいるのだ。その中心となっているのが、セコム(15年3月期売上高8407億円)と綜合警備保障(ALSOK。同売上高3657億円)。この「2強」は、業界3位のセントラル警備保障(15年2月期売上高428億円)以下を大きく引き離しており、豊富な資金力を生かして新たな試みに取り組んでいる。今後、大企業が中小企業を買収してさらなる経営拡大を目指したり、逆に小規模な企業が大企業に対抗するために連携したりするケースは大いにあり得るだろう。

 

現在、焦点になっているのが、20年に開催される東京オリンピック・パラリンピックへの対応だ。世界中から多くの観光客が訪れ、会場や周辺の観光地などで多くの警備需要が発生すると予測されている。そこで大手各社は、少ない人手で高度な警備を実現するため、ITを積極的に導入。例えば、綜合警備保障は15年、警備の効率アップを目指して、警備員向けのモバイル端末を携帯電話型からスマートフォン型に切り替えた。また、新たな警備手法を研究する取り組みも盛ん。例えば、カメラを搭載したドローン(小型の無人飛行機)を使って施設の様子を遠い場所からモニタリングする、たくさんの人々を画像認証技術によって自動的に見分けるなどが、近い将来実用化されそうだ。また、SNSの書き込みや、各地の防犯カメラ・センサーから集められた情報などのビッグデータ(「膨大なデータ」という意味)を分析し、早い段階で警備体制を整えるなどの活用法も模索されている。

 

人の安全を守ったり、施設を管理するノウハウを強みとして、新規事業への進出を目指す動きもある。習い事などのため一人で移動している子どもや、体調に不安のある高齢者などを対象とした「見守りサービス」は、今後の成長が期待できる分野。また、火災検知や自動消火システムなどの防災ビジネス、電気自動車用の急速充電器や燃料電池車用の水素ステーションなどを展開する次世代自動車ビジネスも有望だ。日本で培ったノウハウを生かし、海外展開を目指すケースも増えるだろう。

 

警備業務は4つのカテゴリーに分かれている

1号業務
オフィスや商業施設、住宅などの警備を行う業務。警備員を配置して出入管理や巡回などを行う「常駐警備」と、テレビモニターや各種のセンサーを使って遠隔監視し、必要に応じて警備員を派遣する「機械警備」とに細分される。
2号業務
多くの人が集まる場所で、車や人の誘導や交通整理を行う業務。イベント会場などで行われる「雑踏警備」と、道路工事現場や駐車場などで車両や人の安全を確保する「交通誘導警備」に細分される。
3号業務
現金、貴金属、有価証券、美術品などを輸送する際に、車両などを警備して盗難などを防ぐ業務。「輸送警備業務」とも呼ばれる。警備だけを手がける場合と、輸送業務まで担当する場合とがある。
4号業務
著名人や企業経営者などを守る業務。いわゆる「ボディーガード」だ。また、センサーなどを使って子どもや高齢者を見守るサービスも、このカテゴリーに含まれる。

このニュースだけは要チェック <大手企業がITを活用した新警備手法を開発中>

・セコムが、防犯用の自律型飛行監視ロボット「セコムドローン」のサービス提供を開始した。ドローンには監視カメラとLEDライトが搭載されており、不審車のナンバーや車種、不審車の顔や身なりなどを上空から撮影することで、追跡・確保に役立てる。(2015年12月11日)

 

・綜合警備保障が日本電気と共同で、東京湾岸エリアで開催されたスポーツ大会「ザ・コーポレートゲームズ」においてITを活用した警備の実証実験を行った。顔認証による入場管理や、カメラ映像のリアルタイム解析による車いすの参加者・混雑状況の早期検知などに取り組んでいる。(2015年11月14日、15日)

この業界とも深いつながりが<IT業界とのつながりが密接になりそうだ>

工作機械・産業用ロボット
ドローンを使って不審者・車の警備に役立てる動きはさらに加速しそうだ

携帯電話キャリア
子どもや高齢者向けの「見守りサービス」は、携帯電話を利用するケースが多い

電子部品メーカー
センサーやカメラといった機器を活用して警備の効率化を図る企業が増加

 

この業界の指南役

日本総合研究所 シニアマネジャー 吉田賢哉氏

yoshida_sama

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

【エジプト編】人情が通じる国エジプト

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Reported by 牛くん
エジプトのカイロにある日系商社の現地事務所に勤務。現地では、赴任後に始めたゴルフや、駐在員仲間とのソフトボールがオフの楽しみ。ソフトボール仲間との飲み会も大事なリフレッシュの時間に。

金曜日の朝だけ道路が空いている

こんにちは。牛くんです。今回は、カイロでの私の生活についてお話しします。

 

エジプトでの住まいは、赴任前の出張時に、複数の物件を不動産会社を介して見学し、赴任直後に決めました。家賃は全額会社負担で、その金額の範囲内で物件を探しました。こちらで言う「フラット」、日本で言えばマンションのような集合住宅ですが、サービスアパートメントのようなサービスはついていません。掃除などは外国人のメイドを雇ってやってもらっています。

 

会社には、運転手付きの会社の車で通勤しています。車なら20分ほどの距離ですが、朝のラッシュ時は45分、ひどいときは1時間ほどかかってしまうことも。ただし、イスラム教徒が礼拝に出かける金曜日の朝は、道路はとても空いています。彼らは、近所のモスクに歩いて礼拝に行くので、車を使わないからです。

 

普段の夕食は、自炊しています。ご飯を炊いて、あとはカレーや親子丼などのレトルト食品を温め、付け合わせに生野菜とワカメのサラダを作ったりしています。ただ、平日は会食、週末はだいたい飲み会が入るので、外食も多いですね。

 

実は、カイロには和食材を扱う店がありません。海外から取り寄せない限り、和食材は手に入らないのです。唯一、外国人が行く食材店に、醤油や海苔、うどん、そばなどが置いてありますが、それだけではあまり役に立ちません。当社には、年4回、商品代は自己負担、輸送費は会社負担で和食材が取り寄せられる「送付制度」があるので、カップラーメンやレトルト食品、ワカメなどの乾物、栄養補助食品などを取り寄せています。日本からの取り寄せなので、価格は日本で買うのと同じ。ずいぶん助かっています。

 

日本人に対するリスペクトがある

エジプトは旅行天国です。国内には、古代エジプト文明を含む著名な遺跡が多く存在し、歴史や古代遺跡好きにはたまりません。古代遺跡を回るナイルクルーズなども楽しいです。紅海沿いのリゾート地も魅力的で、ヨーロッパのリゾート地のような洗練されたリゾート施設が完備されています。特に有名なのはシャルム・エル・シェイクで、ここはダイビングのメッカとされています。ダイビング免許を持っていないので、私自身は潜ったことはありませんが、家族と一緒に幾度か旅行へ行きました。ヨーロッパから多くの直行便が行き来するほど人気のリゾート地です。

 

海外に目を転じると、イタリアが地中海を挟んで目と鼻の先にあり、イタリアやスペインには2~3時間のフライトで行けます。ローマなら2時間ちょっとです。日本の国内旅行に近い感覚で、エジプトとは別世界を訪れることができるので、「普段は、物価の安いエジプトで旅費をためて、連休を利用したヨーロッパ旅行でリフレッシュする」というのが、駐在員家族の一番の楽しみになっているようです。私も、イタリア、スペイン、フランス、イギリス、トルコ、ギリシャ、ベルギー、ドイツ等々、多くの国々を訪れました。

 

エジプトには、駐在になる前からも出張などで訪れてなじみがありましたが、私はそのころから一貫して“エジプト好き”だと自信を持って断言できます。その理由として、エジプトの人々には、日本人の謙虚な人柄に対するリスペクトがあり、エジプトという国にもともと日本人を尊敬してくれる土壌があることが挙げられます。こちらが心を尽くせば、それにしっかりと応えてくれるなど、人情が通じる国なのです。ナイル川という大自然に恵まれていて、自然との調和が国の成り立ちのベースにあり、恵まれた環境に対する感謝が社会全体に根づいているせいかもしれません。加えて、前回にも触れたように、お酒が飲めること、スポーツが楽しめること、ヨーロッパに行きやすいことなども、エジプトが暮らしやすい国である理由の一つですね。

 

次回は、エジプト駐在で得たものについてお話しします。

 

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自宅室内の様子。2DKで100平方メートルと、かなりゆとりのある間取りだ。

 

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毎朝の渋滞。2車線のはずなのに、なぜか横に車が3台並んでいる。

 

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木曜日の夜は至福の時。エジプトは金曜日と土曜日が休みになるので、翌日を気にせずにゆっくり晩酌ができるため、日本から持参したソーセージと生ハムを肴にしたささやかな一人飲み会を楽しんでいる。

 

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エジプトのダイビングスポット「シャルム・エル・シェイク」。中東の紛争解決のための国際会議なども開かれている。

 

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家族旅行で訪れたヴェネツィア。ローマと違って直行便はないが、エジプトとはまったく異なる色彩の風景に癒やされた。

 

構成/日笠由紀

テレビ局内定 近畿大学 石川捺希(なつき)さん

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就活データ
志望業界:マスコミ、金融、メーカー 説明会参加:66社(うち合同企業説明会3回) 先輩訪問:なし エントリーシート提出:30社 面接:18社 内定:6社(セキュリティ会社1社、銀行2社、旅行代理店1社、電機メーカー1社、テレビ局1社) 活動費用:約35万円(交通費15万円、スーツなど洋服代10万円、書籍代2万円、外食費5万円、雑費3万円。東京への移動は、夜行バスだと疲れるので新幹線を利用。そのため、交通費がかかった。雑費は、写真スタジオでの撮影代金2万円や文房具など。就活までにアルバイトで貯めた貯金を切りくずして、やりくりした)

大手企業だけでなく中小企業も見た上で絞ろうと考えた

ゼミの先生から、大手企業だけでなく中小企業も見ておいた方がいいと言われ、大学3年の夏のインターンシップは2週間、従業員25名の中小企業へ。チューブ部品を製造している会社で、製造の現場を見学。また、受発注や顧客データの管理、営業同行なども体験しました。

 

秋は、大手企業を見ようとテレビ局のインターンシップに参加。5日間の内容で、番組制作体験、最終日にはスタジオを使い、テレビ局の魅力についての簡単な番組を作るグループワークを行いました。

 

業種は違いますが中小と大手の両方を見たことで、大手企業で働きたいと思ったんです。中小企業はアットホームで社長との距離も近く、社員同士がすぐ仲良くなれます。一方、大手は部署が多く、より多くの方とかかわることができます。その点から考え、大手企業の方が刺激も多く、自分自身の成長につながると思ったんです。

 

業界はまだ絞れていませんでしたが、大手企業を希望し、合同企業説明会に参加。銀行や証券会社、生保・損保など金融、マスコミ、メーカーなど幅広く回ることに。メーカーは商品力によって売り上げや仕事の幅が左右されますが、銀行や証券などは自分の知識を広げれば商品の価値を問わず大きな仕事ができると感じましたね。さらに、金融は企業の社長を相手に仕事ができることも面白そうでした。

 

大学4年になり、大手銀行で先輩社員との面談がスタート。先輩社員と1対1で話すのですが、1週間に1回のペースで、計13人の先輩にお会いしました。仕事内容ややりがい、社風などをお聞きしたり、疑問があれば質問したり。キャリアアドバイザーのように、自己PRなどをアドバイスしてもらったりしました。

 

4月には、別の大手銀行で個別の会社説明会に参加。さらに、中小のセキュリティ会社では面接も。自己PRや学生時代に努力したことなどを質問されました。大学時代については、ボクシング部のこと、学業もいっさい手を抜かず成績にこだわったことなどをアピール。たまたま、セキュリティ会社の面接担当者がボクシング部だったこともあり、和やかな雰囲気で進みました。その後の面接も順調で、5月中旬に内々定をもらったのですが、大手企業の選考がこれから始まるので、就活は続けることにしました。

 

6月は個別の説明会がピークに。まだ、志望が絞れていないので、金融や不動産、メーカー、ITなどさまざまな業界に参加。さらに、エントリーシート提出もピークでした。読み手の気持ちを考えだらだら書かず、最初に結論を伝え完結にまとめること、強調したい部分をかぎかっこをつけて目立たせることなどを工夫。自分で読んでみて、読むのが面倒だと思ったら修正し、また書くということを繰り返し、ブラッシュアップ。また、未経験からボクシングに挑戦したこと、成績評定を優で単位取得したことなど、高い目標に向かってチャレンジしたことを必ずアピールしました。

 

7月からはデベロッパー、生命保険、商社、証券会社、電機メーカーなどの説明会や面接で予定がぎっしり。現在の内定先は7月初旬にエントリーシートを提出。志望動機、大学時代に頑張ったこと、自己PR、さらに最近のニュースで関心を持ったことなど、裏表びっしり書くスペースがありました。僕は、芸能人のSNSでの行き過ぎた発言についてのニュースを取り上げたんです。大多数の人に情報を伝えることよりも、身近な人に認めてもらい、幸せにすることが大事だと思う、というようなことを伝えたと思います。そのあと、筆記試験2回を経て、面接へ。周りはレベルの高い学生ばかりでしたが、決して臆することなくチャレンジしようと思っていました。

 

大手企業5社から内々定をもらい、自分に合う会社を選んだ

8月になり、面接が本格化。この時点では、金融、その中でも特に銀行へと気持ちが傾いていました。そして4日、5日と続けて大手銀行から内々定。この時点で就活を終了しようとも考えたのですが、応募している企業すべての選考を最後まで受けてみようと思いました。

 

8月中旬には旅行代理店、電機メーカーで最終面接。旅行代理店に関しては、実は海外旅行に行ったことがなかったのですが、会社パンフレットに企業のグローバル展開の支援を行っていると明記されていたので志望しました。近隣国へのインフラ支援への興味なら、旅行の好き嫌いに関係ないと思い、その部分をアピール。電機メーカーは、グローバル展開しているので、挑戦意欲がわいてくるということを伝えました。

 

現在の内定先は、3回の面接とグループディスカッションに参加。事前に提出したエントリーシートに沿っての質問が中心でした。高校までは野球をしていたのに、なぜ、ボクシングを始めようと思ったのかと、部活動についての質問が多かったと思います。3次面接では、「若者のテレビ離れが進んでいるが、なぜテレビを見ないと思うか?」という質問が。考えもしなかった質問だったので、言葉につまり、ありきたりな答えしか言えませんでした。また、面接担当者の反応もにぶく、しまいには「たくさんの会社から内定をもらっていたら、うちの会社でなくてもいいでしょう」というような意味のことを言われたのです。

 

テレビ局は落ちてもともとだと思っていたけれど、この3次面接は確実に落ちたと落ち込みました。それが驚くことに合格し、最終面接へ。予想外にもらったチャンス、最後は絶対に決めたいと思ううちに、いつの間にか現在の内定先が本命企業になっていました。もともと、テレビ局に興味を持ったのは、ボクシング部の取材にテレビ局のスタッフが頻繁に来ていたから。そのほとんどが総監督をされている俳優の赤井英和さんにクローズアップされるのですが、現在の内定先は僕たち部員と監督の関係に焦点を当ててくださったんです。他社とは違うテーマや見せ方にこだわることに魅力を感じました。そのような経験もプラスし、現在の内定先に入りたいと思ったんです。

 

最終面接は20分の予定のところ、6分で終わりました。やはり、ボクシングと学業とのバランスについての質問が多かったですね。評定を優で単位取得していること、授業は一番前で受けていたこと、大変なことがあってもボクシング部は最後まで続けていることをアピール。志望動機の確認などもありました。面接担当者の方も終始、笑顔で和やかな雰囲気だったので、これはいけたと思いましたね。

 

翌日、内々定の連絡。とはいえ、即決せず、もう一度内々定5社の中からどこを選ぶかきちんと考えてみようと思いました。仕事の中身を考えて、幅広い仕事ができる銀行が有力。2社の銀行を比較し、雰囲気や企業規模など考慮して1社に決定。さらに、銀行とテレビ局を比較。テレビ局の方が自由な雰囲気だったし、仕事内容にもより興味がありました。もちろん、無理だとあきらめかけていたのに合格したことで、大きく気持ちが傾いたということもあります。現在の内定先のテレビ局に決め、就活を終了しました。

 

振り返ってみて、自分の思うように就活を進められたと思います。就活に時間を割きたいと大学3年でなるべく多く必須単位を取得し、大学4年からの約半年、就活に十分、時間を割くことができました。ただ、エントリーシートの作成は、もっとキャリアセンターなどを活用すべきだったと反省。そうすれば、もっと時間を有効活用できたと思うし、客観的なアドバイスをもらえたのかなとも思います。

 

入社後は、ディレクター職に就くことになります。まだ、どんな仕事をしていくか未知数の部分も多いですが、視聴者の視点に立った旬の情報を伝えられたらと思います。

 

低学年のときに注力していたことは?

高校まで野球をやっていましたが、大学から体育会ボクシング部に入部。強豪校として名高い部なので、近大に入学したら入りたいと思っていました。国体の優勝選手などもいるような強豪校なので、ボクシング未経験は僕ぐらい。それでもくらいついて練習し、日曜は大学外のボクシングジムにも通いました。早寝早起きと自炊を行って身体づくりも。さらに、部活動が大変でも、勉強も手をぬかずにやろうと思い、高い評定で単位を取得しました。大学1年の夏休みに、友人と沖縄本島を東から西へ横断し、100キロメートルを1日で走る、というような挑戦もしましたね。

 

就活スケジュール

大学3年8月
中小企業の
インターンシップに参加
従業員25名のチューブ部品を製造している会社で、2週間のインターンシップ。製造現場の見学、受発注や顧客データの管理、営業同行などを体験。
大学3年11月
テレビ局のインターンシップに参加
秋は大手企業のインターンシップに行こうと、テレビ局のインターンシップへ。番組制作体験とスタジオセットを使い、テレビ局の魅力についての簡単な番組を作るグループワークを経験。
大学3年3月
合同企業説明会に出席
大手企業を視野に入れ、銀行や証券会社、生保・損保などの金融、マスコミ、メーカーなど幅広く企業を回る。自分の知識によってダイナミックな仕事ができると金融への興味を深める。
大学4年4月
先輩社員との面談や会社説明会に出席
大手銀行では先輩社員との面談がスタート。質問について答えてもらったり、自己PRについてのアドバイスをもらう。別の大手銀行では個別の会社説明会。さらに、中小のセキュリティ会社では面接。
大学4年5月
1社目の内々定
中小のセキュリティ会社から内々定をもらうが、大手企業の選考がこれから始まるので、就活を続行。菓子メーカーでの面接もあった。
大学4年6月
個別の会社説明会とエントリーシートがピークに
大手企業という軸だけを決め、業界は絞らず動く。金融や不動産、メーカー、ITなどさまざまな業界の会社説明会に参加。さらに、エントリーシート提出もピークに。伝えたいことが瞬時に伝わるような工夫を心がける。加えて、未経験で始めたボクシング部での経験、学業との両立などをアピールする。
大学4年7月
会社説明会と面接
デベロッパー、生命保険、商社、証券会社、電機メーカーなど、会社説明会や面接。現在の内定先は7月初旬にエントリーシート提出があった。4月に先輩社員と面談が始まった大手銀行では、面接に近い面談があった。
大学4年8月
現在の内定先を含め5社から内々定
金融へと気持ちが傾く中、面接に参加。大手銀行2社、旅行代理店、電機メーカーで内々定。中旬に現在の内定先から内定。事業や仕事内容を検討し、現在の内定先に決め、就活を終了する。

 

就活ファッション

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服装で人事の印象が決まるわけではないと思い、黒のベーシックなスーツを選んだ。シャツも、白のシンプルなビジネスシャツを洗い替えを考えて、4枚用意した。靴は歩きやすさにこだわった黒のレザーシューズを購入。

 

取材・文/森下裕美子 撮影/島並ヒロミ

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